その3:初体験


 先にも書いた通り、馬券は既に印刷された馬券の束がぶら下げられていて、「3×7くれ」と言うとその束からもぎって渡してくれる。で、私も「3×7くれ」と言ったのだが窓口のおばちゃんの答えは「NO!」だった。いや、NOじゃなくてさ、金なら持っているから3×7売ってくれよ、と思っていると、おばちゃんはぶら下げられた馬券の束を指差した。馬券の束は目ごとに分けられているのだが、その指差した先には既にもぎ取られてしまった跡だけが残っていた。左隣には3×6の馬券が、右隣には3×8の馬券がある。つまりそこは3×7の馬券があるべき場所である。それなのに1枚の馬券もない。

 もしかして・・・売り切れ???
 どうやらそういうことらしい。

 昭和の時代から馬券を買っている私だが、「馬券が売り切れる」という事態を考えたことなどただの一度もなかった。混雑で馬券が買えないということはあっても、馬券そのものが売り切れてしまうなんてことは経験もなければ想像したことすらない。それが今、目の前で起こったのだ。それもよりによって自分の買いたい目が売り切れているとは。ちなみに裏目の7×3も売り切れていた。仕方がないので、売り切れていなかった3×2だけ買ってレースを見た。
 もしかしたらオチがどうなるのか勘のいい方なら気がついているかもしれないが、予想通りのオチが待っていた。来ましたがな3×7がズバリと。ただでさえ暑いサイゴンの空の下でさらに熱くなった私。痛恨の一撃。

 とりあえず一息つこう。場内には食堂や出店形式の店がたくさんある。スタンドのあちこちでパンやら麺やら飲み物などが売られている。その中の一つ、コムビンザンという食堂に入ってみた。コムビンザンというのはベトナムのあちこちにあるらしい食堂の形式で、おかずがあれこれ並べられていてその中から食べたいものを指定するとご飯に乗せて出してくれる。どんな料理かが事前にわかるので安心だし、指差しで注文できるので言葉が通じなくても何とかなる。ちなみにコムビンザンの「コム」ってのはベトナム語でご飯のことだ。欲張ってあれこれ乗せたら18,000ドンと結構な額になってしまったのは誤算だったが。

 さて、飯も食ったし戦線復帰。と思ったら、「VIPルーム」なるものを発見した。特観席みたいなものか。入場料が1万ドンだというので入ってみた。特観席なら客の数も限られているだろうから馬券が売り切れることもないだろうという考えもあった(笑)。

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