その4:アウェーの闘い


 VIPルームはスタンド最上段、一般席の上にテラスのような形で設けられている。1万ドンだから日本円にして100円でVIPになれる。ちなみにエレベーターはないので階段を歩いて登らなくてはならない。日本のように座席指定があるわけではなく、コンクリートの段に座布団のようなものが置かれていて好きなところに座ることが出来る。テーブル&椅子もいくつか用意されている。あと、ここでは座ったまま飲み物や食事のオーダーも出来る。私も早速すっかりお気に入りになったカフェスアダーを注文した。

 さて、3Rの買い目も決まったし馬券を買いに行こう。観戦用のテラスは外だが、馬券はエアコンが効いた室内で買う。客が立ち入ることが出来るエリアで冷房が効いているのはおそらくここだけだろう。やっぱり涼しい。特観席には5000ドンと2万ドンの窓口しかない。やっぱりお金持ちエリアなのかね。ところが、またしても私の買いたかった目は売り切れている。どういうこっちゃ。参考までに、サイゴンの競馬で「勝負だ!万張り!!」といって1点1万円張ろうなんて思ってはいけない。そんなに馬券はないから。1万円といえば100万ドンだからね。

 4Rこそは馬券を買おう。それも、ちゃんと自分が買いたい買い目を買おう。そう決意した私は3Rの発走前に予想を済ませて、4Rの発売開始と同時に買ってしまうことにした。これならいくらなんでも買えないことはあるまい。そう考えて、3Rがゴールすると同時に穴場へ向かった。すると、そこには人だかりが。「3Rの払戻を待つ人たちかな」とこの時は思った。しかし払戻を待つにしては人々の目が穏やかではない。いくら馬券が売り切れる競馬とはいえ的中して払戻をしないということはないはずだからもっと落ち着いて待っていればいいのに、なんて思っていた。ところがどうも様子が違う。穴場の係員に向かって何やら叫んでいる。手に金を持っている奴もいるぞ。払い戻しを受けるのに金は必要ないだろう、と思った時に4Rの馬券発売が開始された。その瞬間、火が出るような叩き合いが始まった。「5×7を5枚くれ!」「こっちも5×7を3枚だ!」というように、一斉に馬券が売れて行く。そして、30秒もしないうちに5×7の馬券は売り切れてしまった。なるほど、こういうことだったのか。地元の人も馬の力が違うということはわかっているようだ。だからこそみんな一斉に同じ目を買って行く。そりゃ売り切れるはずだわ。

 納得している場合じゃない。何とかして自分の買いたい目を買わなければ。次のレースでは紙に買い目を書いて金と一緒に渡そうとした。しかしベトナム人の気合の前に完敗。私も金は好きなので気合十分なはずなのだが所詮はアウェー。やっぱり地元民には負ける。ちなみに、列に並んで順番に馬券を買うなんて悠長なことはここにはない。ただひたすら叫んで、手を伸ばして、他人を押しのけてでも馬券を買うという気合が求められる。

 ちなみにレースはというと、力のある馬はどんどん前へ行き、力のない馬は後方に置かれる。だから馬群は縦長、というよりどんどん千切られて行く馬が出てくる。先頭の馬がゴールした時最後方の馬はようやく直線に入ったところということもある。後ろの方の馬は文字通り歩いている馬もいる。予想では見えているのだが、いかんせん馬券が買えない・・・。

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