その9:最後の決戦


Not Use Red  3頭ボックスで馬券を買ったら先行した2頭で決まりそうになった。そこは私の押さえ馬券。「そのまま〜」とクランジ競馬場に響く日本語。声の主はもちろん私。安めとはいえとりあえず1つでも的中させておくことは重要だ。しかしその時、大外から伸びて来る1頭の馬。あ、あれは・・・おお、高目の方の馬だ! 「そのま・・・おっと、差せ!差せ!差せ!」巨大な府中のスタンドで日頃鍛えた声で気合いを入れてやる。すると、気合が通じたようでしっかりと差してくれた。言葉は通じなくても魂は通じるのだ。これが日本の勝負師の実力よ、と勝つとすぐに調子に乗る私。高めで決まってくれたおかげでベトナムでの負けは一発で取り返した。

 その後的中なくちょい浮きくらいで迎えた最終レース。このまま無難に終われば一応勝者としてシンガポールを出国することが出来る。しかしシンガポールまで来てそんな無難にまとめたって仕方ないじゃないか。それに、ちょうどこの頃は中央競馬以外の賭博は絶好調だったのだ。立川競輪では3連単的中、香港ではエイシンプレストンで稼ぎ、年末の平塚では競輪グランプリで今回の旅行代金を稼ぎ出した。その近況の良さを信じてここは一発勝負してやろうじゃないか。本線来れば東南アジアなら当分遊んで暮らせるだけの金は手に出来る。日本に帰るの止めちゃおうかな。

 ゲート入りしてさて発走かと思ったら、ゲートの中で1頭暴れている馬がいる。相当な暴れ方で、ついにゲートの中でひっくり返ってしまった。「こりゃ除外かな?」と思ったらやっぱり除外になった。ところが、その隣の馬もゲートから出されている。あれ?あの勝負服は・・・我が本命馬ではないか。もしかして暴れたときに蹴られたりしたのか?と思っていたら、やっぱりそうだったようでこちらも除外された。多分友引ではないと思う(枠がないよ)。レース前にして既に私のシンガポール競馬は終了してしまった。相手本線だった馬はしっかりと快勝してくれたのに。除外なので日本と同様に金は返ってくるのだが、何ともすっきりしない気分でクランジ競馬場を後にする。

 行きは空港から直接タクシーで競馬場入りしてしまったので、帰りは電車に乗って市街まで出てみよう。クランジ駅で電車を待っていると、何やら制服を着たおばちゃん、お姉ちゃんがたくさんいる。はて?この制服はなんか見覚えがあるぞ・・・ってついさっきまで競馬場でそこら中にいた穴場のおばちゃんの制服じゃないか。どうやらシンガポールでは制服を着たまま家まで帰ってしまうらしい。なんかわからんが凄い。

 結局ちょっと浮きでシンガポール競馬の戦いが終わった。ちょっとした浮きなので思い切って使ってしまおう、ということでシンガポールを代表する高級ホテル・ラッフルズに移動。ここで優雅にディナーなどいただいてみる。やっぱり賭博で勝って食う飯は美味い。ただ、このホテル自体シンガポールの観光名所でもあるので、中庭に面した窓際の席でカレーを食っていると観光客に小野ジロー・・・じゃなかったジロジロと見られるのは困ったものだが。

 ラッフルズからタクシーでチャンギ空港に向かい一路帰国する。ベトナム、シンガポールの2連戦は1勝1敗という形に終わった。さて、シンガポールは最後すっきりしなかったので、もう一度リベンジに行って今度こそしこたま稼いでやろうか。ベトナムは・・・ちゃんと当たり馬券売ってくれるなら行ってみよう。

 今回の旅行でお世話になったサイゴン・ファングーラオ通りのカフェ経営兼ガイドのミンさんとシンガポール航空の武島さんに感謝の気持ちを表しつつ、これにておしまい。

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