「O-157と無菌社会の恐怖
HACCPシステムの問題点」
久慈力著・緑風出版刊
1998年9月・1700円
1996年7月の堺市における病原性大腸菌O−157による多数の食中毒患者発生を契機に、厚生省はHACCP(ハセップとかハサップという妙な略称)システムの強力な導入・普及を進めている。「総合衛生管理製造過程」と訳されるこのシステムは、病原菌による食品の汚染を防ぐために、原料・製造・市場流通・消費の全過程で衛生管理を一貫して行う方式であると言われている。掲げている大義名分は一見まことに結構である。
だが、本書の著者はこのシステムが抱えている問題点やこれを推進する厚生省官僚の意識およびそれに従う科学者たちの学問思想や人脈を検討し、HACCPシステムは結局のところ、汚職の厚生省官僚と731部隊の衣鉢を継ぐ無反省な一部の予研(感染研)研究者の共同で成り立たせられていると批判する。また、それは本質的に、多国籍企業をふくむ超大規模な食品企業にとり有益であろうが、中小企業にとっては桎梏となるであろうことを著者は示唆している。さらに、いわゆる「無菌社会」が意味するところに731部隊の亡霊を想い描いて、警告を発している。
評者は著者の意見に必ずしも全面的に賛成する訳ではない。しかし、HACCPを真正面から取上げ、要領よく解説し、周辺の事情も適切に紹介・批判した好著であると感じた。教えられることも多いと思い、多くの方々に一読をお薦めしたい。
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