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Music Note* note.011-015 |
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note.015 / 2005-10-29
Haendel : Water Music & Music for The Royal Fireworks Jordi Savall (cond) (ASTREE AUVIDIS / E 8512) ________________________________________________________ 前回、サヴァールの「エロイカ」を気に入り、今度はサヴァールによるヘンデルの「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」を買ってみました。昔からヘンデルの「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」にはあまり興味が持てず、ほとんど聴いてこなかったという経緯があります(有名曲だし良い曲だと思うが内容に乏しいと思うため)。今までに図書館所蔵のCDも含めてせいぜい3、4枚程度しか聴いてこなかったんじゃないかと思います。 ところでサヴァールの指揮した「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」は、曲に対する僕の認識を根本的に変えるまでには至らないものだったとはいえ、音楽的にはとても魅力に富む愉しい作品であるという前向きな認識に変りました。少なくとも昔聴いたマリナーとかピノックよりも個人的には好むし、自分に合っている演奏だと思います。また今回で改めて好きになったところもあり、演奏レベル、表現レベルでは高みにあるものだと感じています。 今回のサヴァールのCDでは、金管を伴った派手なところよりも、木管と弦主体の曲にその魅力がよく現れていると思いました。古楽器を使った素朴な雰囲気をベースに、微妙なニュアンスが美しい演奏ではないでしょうか。 「水上の音楽」の第1組曲では、メヌエットのIとIIの旋律の出し方が上手く、なかなか魅力的な音楽に仕上がっているし、特に木管の扱いが上手いと思いますね。木管と弦の微妙な掛け合いもすばらしく、これは全体に頻出する魅力です。また同じ第1組曲におけるブーレーの速いテンポによる絶妙なリズム感もすばらしいです。これは第2組曲のブーレーにも当てはまるところで、速いテンポで駆け抜けながら、そこに絶妙なリズム感と微妙なニュアンスをこめた表現で、どこかシューリヒトの芸風を連想させるところがあったり。もちろん、第2組曲でのエアーもなかなか良いニュアンスを出しています。 「王宮の花火の音楽」も「水上の音楽」と同じ路線の演奏で、センスは良さを感じますね。しかしどちらかというと、サヴァールの表現は前述のように、木管と弦を中心とした、しっとりとした部分にその真価を発揮していると思えるので、「王宮の花火の音楽」では個人的にいささかつまらない、という印象があります。もっとも古楽の音色の魅力は伝わってくる演奏なので、こうした古楽器によるバロック音楽の好きな人には充分に納得できるかも知れませんが。個人的には序曲のアレグロのリズム感が小気味良いので気に入っています。 下記のベートーヴェンの「エロイカ」といい、このヘンデルといい、やはりサヴァールは指揮者としてもかなりの力量の持ち主だと思いました。機会があれば「指揮者サヴァール」にもっと接していきたいと思いますね。 |
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note.014 / 2005-8-7
Beethoven : Symphony No.3 "Eroica" & Corioran Overture Jordi Savall (cond) (AUVIDIS FONTALIS / ES8557) ________________________________________________________ このサヴァール盤はブックオフで見つけて買いました。最近ではHMVでもこのサヴァールの「エロイカ」を見かけなくなったし、中古屋でも意外と見ないので、ブックオフで発見した時はすぐさま買ってしまったという感じです。 サヴァールの「エロイカ」の感想を一言で言えば、シューリヒトやムラヴィンスキーの表現を古楽でやり、そこにラテン的な愉しさと明るさを付け加えたもの、というものです。つまり指揮芸術としてかなりの高水準にあるということになるのではないかと思います。普通に聴いていると、テンポが速いし愉しいし、また洗練された表現なので、そのまま聴き流してしまいがちなのですが、良く聴くとたいへん練れた演奏ではないかと思いますね。 第1楽章ののっけから大変速いテンポで、これはおそらく速いテンポのムラヴィンスキーやシューリヒトよりも若干速いんじゃないかと思います。これだけ速いテンポなのに、全体のアンサンブルに乱れはないし、どの音もすっきりと決まっており、人工的な印象を与えるところも皆無で、極めて自然に音楽が流れていきます。フレージングもきっぱりとしているしリズム感もすばらしいです。古楽なので管楽器も古楽を使っているようだし、弦も当然ガット弦なので、音の響きがどこか雅びやかで、なかなか雰囲気がよいですね。それでいて小規模な編成にも関わらず「物足りなさ」も感じないし、聴いていて充分に満足できるものがあります。小規模でも不足を感じないのは速いテンポと情熱的なところがあるからでしょうか。いや、それだけでなく表現が鍛えられているせいかも知れません。それにしても細部の表現はシューリヒトやムラヴィンスキーの演奏を彷佛としてしまう箇所がいくつかあり、これはたいへん興味深いです。サヴァールは確かに指揮をかなり手掛けていますが、それはだいたいバロックだし、彼の本職はガンバ奏者です。古楽一筋の人なのに、ベートーヴェンの「エロイカ」でこの表現が出てくるとは、かなり意外です。ホント聴いていて嬉しくなるくらい高度な演奏です。その上、高度なんだけど愉しさまであるという凄い演奏です。なお、冒頭テーマの反復記号はきちんと演奏しています。 葬送行進曲はひと昔前のドイツ流の演奏からすると、ずいぶん軽くて明るめな表現という感じです。ひと皮むけたというべきか。もちろん基本のテンポも相変わらず速いのですが、ここでも僕は物足りなさを特に感じませんでした。葬送行進曲は下手をすると重苦しくなってしまう音楽だし、昔からその点に疑問を感じる演奏が多かったので、僕はこのサヴァールのスタイルを好みます。もっとも人によってはもう少し重厚な方がいいとか、悲劇的な雰囲気が欲しいとか、そういった批判はあるかも知れません。でも全体的に聴きやすいと思うし、後半部分での金管の強奏は充分に効いていると思います。 次のスケルツォもたいへん速いテンポで運んでいくスタイルです。ここでもリズム感がすばらしく、たたみかけるような演奏が最高です。トリオでのホルンも古楽器の音色が良く、音量は大きくないと思いますが、僕は充分に満足しました。スケルツォの後半部分や終結など情熱的で圧倒されるところもあります。 フィナーレ楽章は前の3つの楽章よりもテンポを落として演奏しています。それでも遅いテンポの指揮者よりは当然に速く、ムラヴィンスキーあたりとそれほどテンポ設定は変らないような気がします。個人的にはもっと速くして欲しかったので、それだけがいささか残念という感じです。フィナーレでテンポはやや落としたとはいえ、リズム感は良いし各楽器のバランスや表情もなかなかではないでしょうか。ただし中間部にあるフルートのソロはやや雰囲気を欠いているというか、味が薄いような気もしましたが、気になるほどではありません。古楽器なので響きの違いもあるだろうし素朴な感じがするのは事実ですね。コーダ部分の追い込みもなかなか情熱的でよろしいと思うし、終結ではティンパニがなかなか頑張っていて、これは実に好みです。わりと強打している感じです。情熱的な演奏でも意外とコーダは大人しい演奏が多いと思うのですが、サヴァールはかなり情熱的に演奏してくれるので、全体を聴き終わった時の満足感もひとしお、というべきでしょうか。それにしても、このル・コンセール・デ・ナシオンという団体の実力もなかなかのものです。こんな速いテンポの演奏なのに乱れはないし、ちゃんと楽器が鳴りきってますからね。たいしたものだと思います。 全体を聴き通してみて、シューリヒトなどの演奏を聴き込んでいるような高度なファンでも納得してもらえる演奏だと思うし、またその一方で「エロイカ」をあまり聴いていないような入門的なファンの人でも楽しんで聴けるという面白い演奏だと思います。最近の話題の「エロイカ」のCD全てを聴いているわけではありませんが(例えばノリントンの新盤などは聴いていない)、個人的にはジンマンなどよりは表現が上だと思ったし、新しい録音の中ではこれが最も好きなCDとなりました。 |
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note.013 / 2005-7-31
Francesco Cavalli Bruce Dickey , Charles Toet (cond) Claudio Monteverdi Philippe Herreweghe (cond) 4CD set (harmonia mundi / HMX2908131.34) ________________________________________________________ ゲゲッ、またしても更新までひどく時間を空けてしまいました。前の更新が5月7日。それが今ではすっかり夏に・・・・その間いくつかのCDを手に入れたのですが、ちゃんと聴いてないものもあり、くり返し聴いていないCDもあって、感想を書ける状態ではなく、ついつい更新が後送りに。クラシックのCD評なんて、やはりそんなにたくさんは書けるもんじゃないです。ホントに。 実はこのCD、去年の暮れ辺りにオークションで落札したもので、もう随分長い間放っておいたのですが、連休の時に聴き返してみました。何せ分量のあるCDなんで全部聴くのにも時間がかかり、はじめて聴く作品も含まれていることからコメントしにくいのですが、なかなか美しい音楽なので取り上げることにしました。 このCDはモンテヴェルディとカヴァッリ各々の「聖母マリアの夕べの祈り」を収録したものです。同じ「聖母マリアの夕べの祈り」という主題が作曲家によってどういった差異が出るのかを見せてくれるCDです。モンテヴェルディの方はよく知られているし、またよく聴かれていると思います。僕もモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」は何組か持っています。それに対してカヴァッリの「聖母マリアの夕べの祈り」はモンテヴェルディほど広く聴かれているわけではないし、僕も今回がはじめてです(カヴァッリの方はディッキーが宗教曲集から取りまとめたものだそうです。その点ではカヴァッリのオリジナル作品とは言えないかも知れません)。各々がCD2枚づつで、計4枚セットです。全部聴くと時間がかかります。 ヘレヴェッヘ指揮のモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」の方は録音も良いしまあまあのCDだと思っています。個人的にはこの曲でよく聴いているサヴァール盤と比較すると、生命力やソリストなど若干劣るような気がしたのですが、それでも全体的に悪くない演奏だと思います。 全体的な印象としては、ひどく聴きやすい演奏だなあ、ということです。このヘレヴェッヘ盤は気軽に聴けるような感じがあり、わりと好感の持てる演奏だと思います。聴いていて心地良い雰囲気があります。もっともその反面、威厳というか、芸術の持つある種の厳しさのようなものを欠いているような気もしますが、それはあまりマイナスではないでしょう。 後半部分は全体的にバランスが良いし、合唱の扱いもなかなか上手く、違和感を感じるところは特にありませんでした。音色や雰囲気もなかなか美しいと思うし、個人的には気に入っています。「エルサレムよ讃え給え」における合唱の法悦感はなかなかすばらしいと思うし「聖マリアよ、我らのために祈り給え、によるソナタ」もバランスが良いと思います。もっともこの曲の技法上のユニークさ、新しさを上手く生かすことには失敗しているんじゃないかと思いましたが。わりと中庸なところを狙った解釈というべきでしょうか。一方、「めでたし海の星」におけるソロ部分は歌手がちょっと人間的な感じが強いと思うので、個人的にはもう少し人間的な臭いを消して欲しいところです。「マニフィカート」もまあまあですが、いささか純粋さに欠けるきらいがあり、その点ではやや不満はあったのですが、全体的に分かりやすい表現だと思い、この曲をいろいろと聴き比べるのには興味深かったです。ヘレヴェッヘの表現は線香臭さがなく、洗練されたものだと思います。 ちなみに個人的には「聖母マリアの夕べの祈り」の録音の中で一般的に名盤とされるコルボ指揮の録音があまり好きではなく、管楽器や歌手のソロなどで洗練さに欠ける演奏だと思っていて、そのコルボよりもヘレヴェッヘの方がはるかに気に入るCDだったというのは確かです。 ◇ カヴァッリの方はモンテヴェルディよりも曲の規模や内容面では小振りだし、技法的にもモンテヴェルディのように凝ったものとは言えないのですが、短い宗教曲を繋げて演奏している、言わば短編の連続のような曲なので、聴きやすさが魅力です。 個人的に気に入っているのは、CD1の4曲目に入っている「Psalmus. Dixit Dominus」です。12分くらいの曲で、重苦しさのない美しい音楽であり、羽のような繊細な響きの弦や、遠近感を伴った声楽など本当にすばらしいと思いますね。宗教曲でも堅苦しいところは皆無で、聴いていて実に愉しいものがあります。まさにイタリア・バロックの良さここに極まったような曲だと思います。歌手の歌声も美しいし木管のニュアンスもまずは言うことなし。また8曲目に入っている「Canzon a 4」という曲の、声楽のない木管と弦中心の音楽も、シンプルな響きとしっとりとした雰囲気が最高だと思う。これは4分半ほとの短い音楽です。10曲目にある「Psalmus. Laetatus sum」も木管と声楽の掛け合いのバランスが最高だし、声楽も美しく、全体のしっとりとした響きとニュアンスは本当に疲れを癒してくれること充分なものがあります。 CD2の方では2曲目にある「Psalmus. Nisi Dominus」という曲も、声楽独奏部分が美しい曲で、2人の歌手の掛け合いも魅力的です。4声の曲なので4人の歌手の交互に交わる旋律はなかなか上手くできており、個人的にはこうゆうの大好きという感じ。最後から2曲目に一応「マニフィカート」が置かれています。17分半ほどの長さの曲で8声ですね。モンテヴェルディの方が同じ「マニフィカート」なら芸術性が高いのでしょうが、カヴァッリの方もなかなかの作品です。おそらくカヴァッリの方が一般ウケはしやすいのかな、そんな印象があります。ちょっと音楽を聴きたい時などで「マニフィカート」をかけるとすれば、僕ならモンテヴェルディよりもカヴァッリの方をかけるでしょう。このマニフィカートはモンテヴェルディと比較して聴くというよりも、カヴァッリの宗教曲の一つという印象が強かったです。例えば中間部のはずむような旋律など愉しい箇所もあり(ただしここは短い)、しっとり一辺倒という感じでもなく、また例によって声楽の美しさや全体の響きの美しさなど、前の曲からの流れと基本が同じ聴こえ、特にマニフィカートという形式なり意味なりをあまり感じなかったのは事実です。でも響きは多彩なので聴いていて満足感は充分でした。とにかくカヴァッリの「ヴェスプロ」全体、たいへん美しく聴きやすい音楽でした。 個人的にこのCD、モンテヴェルディよりもカヴァッリの方を気に入ってよく聴いています。この曲を聴くだけでも自分にとって価値のあるCDという感じです。 |
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note.012 / 2005-5-7
Schubert : Complete Symphonies. Nos.1-8 Hans Zender (cond) (hanssler Classic / 93.120) ________________________________________________________ 今回は久々の更新になります。前の記事が1月16日づけになっているので、随分長く放っておいたことになります。次回の更新は早めにしたいと思います。(と言うか、そう努力します) 今回は作曲家のハンス・ツェンダー指揮によるシューベルト交響曲全集です。これは全般的にどの曲も録音がよく演奏も良いことから充実した全集と言えるのではないでしょうか。(ただし「第1」と「第4」は以前ヘンスラーからリリースされた演奏と同一。個人的にはダブリ買いになりました) どの曲もオーソドックス路線で特殊な解釈が施されているわけではないのですが、響き自体が充実しているし、音自体も美しく、無理のない展開や音作りに共感できる演奏です。確かツェンダーにはシューベルトとウェーベルンとの音楽的な関係がうんぬん、というような独自の解釈があったと思うのですが、そのわりには変に現代的な解釈はしていないし、それほど個性的でもないという感じの演奏です。全ての曲に耳を通してみてちょっと言及したくなったのは「3番」「5番」「未完成」「グレート」辺り。 まず「3番」についてなんですが、この曲、個人的にはC・クライバー/ウィーン・フィルの演奏(DG)が好きで、シューベルトの「第3」といえばこのクライバーのCDを専門に聴いています。クライバーの良さは速いテンポに基づいたキビキビとした演奏スタイルにあります。そしてその中に様々なニュアンスが移ろいゆくところでしょう。スタイルとしてはシューリヒトに若干近い感じ。それに対してツェンダーの場合はよりオーソドックスでクライバーのようにカッコイイ演奏ではないのですが、聴いていて充分に満足できる演奏でした。以前に評判の良いインマゼール/アニマ・エテルナの全集盤を買って古楽スタイルによる「第3」の演奏に期待して耳を傾けてみたのですが、どうも個人的に共感ができなったことがありました。それでクライバー以外の演奏スタイルで良い演奏を求めていた僕としてはがっかり、という感じでした。そんな中でこのツェンダーの「第3」はクライバーの演奏に匹敵できる数少ない演奏で充分に納得できる演奏ということになります。それでもやはりスケルツォやフィナーレなどは、さすがにクライバーのキビキビとした演奏スタイルに引かれてしまうし、リズムのしなりや弾力はすばらしいと思ってしまいます。しかしよりシューベルトらしいと思うのはツェンダーで、第2楽章などの典雅さはクライバーよりもツェンダーを採りたいし、全体にウィーンの雰囲気やシューベルトらしいおっとりとした格調高さが良く出ていて、曲自体の持つ良さが現れていると思いますねえ。テンポ設定や表情づけも標準な感じですが、つまらないということはなく、曲の良さを生かした演奏だと思います。 「第5」については、先日シューリヒト/ウィーン・フィルのライブCDが出たばかりで、芸術性の面からいえばシューリヒトに軍配が上がると思いつつも、ツェンダーもなかなか良い演奏をしています。シューリヒトの場合は曲本来の内容からするとやや重い内容になっていて、愉しさが欠落するきらいがあったと思うのですが、ツェンダーの場合は愉しさもあり内容もまとまっているので、聴きやすい演奏です。オケ、解釈、音の強弱などのバランスは取れており、「第5」のイメージから逸脱する部分は皆無でしょう。テンポも遅くないし、僕の耳にはちょうど良い感じです。この曲のスケルツォなどが少々もたれる演奏する指揮者もいますが、ツェンダーの場合は淀みがなく、暗くもならないので、大いに歓迎できる演奏です。前に聴いたビーチャムの演奏が少々重く、インマゼールがあまり納得できず、シューリヒトが芸術性が高すぎる、ということから、個人的には思わず手に取って聴いてしまうCDという感じです。 なんといっても今回の全集で期待したのが「未完成」と「グレート」の録音でしょう。まず「未完成」なんですが、第1楽章の序奏部分など音量を押さえた感じの指揮でテンポも速めであり、たいへん洗練された印象があります。もちろん、主部に入れば音量も大きくなるのですが、洗練された雰囲気は相変わらずです。要所要所でオケをきっちり鳴らしているし、ポイントはちゃんと押さえられています。オケの響きがしっかりとしていて、強音部もやり過ぎず、かといって物足りなさも感じないという、たいへん練れた表現だと思います。第2楽章もなかなか洗練された演奏です。金管が変に出しゃばることはないし、かといってどこかに引っ込んでしまうわけでもなく、バランスは最高ではないでしょうか。木管のソロも雰囲気がありデリカシーも充分あります。その次ぎに出る強音もうるさくないし、音の流れが良いです。また強音部分では、金管や弦とテンパニの重ね方がうまく、うるさくならないのに厚みと自然な迫力が出るように工夫されているという印象を持ちました。そうやって工夫することで全体の洗練された雰囲気を壊さないようにしていのでしょうか。全体的に格調の高い、すばらしい演奏だと思いました。僕の勘違いでなければ旧版のスコアを使っているのだと思います(あまり自信ありませんが)。 「グレート」も全体的にはやりオーソドックスな表現です。迫力はあまりないし、スケールも大きくないし、フレージングもやや短かめかと思わせる演奏です。テンポもやや速めかと思えます。第1楽章の序奏部分からやや速めのテンポとフレージングの短かめの表現が出てきます。弦の弱音は強めであり、リズムの刻みがよく聴き取れる感じです。展開部に入ってもこれ見よがしなところは皆無という感じで、気張らない音づくりが主体の演奏という印象。強音は叫ばないし、弱音は強めでも、オーケストラ自体はなかなか洗練された響きです。解釈的には現代的というよりも、どこか素朴な印象すら受けました。第2楽章ではもたれることのないスムーズな流れが曲の良さ生かしている感じだと思います。弱音もスマートだし、木管のメロディーもうまく生かしているし、響きも洗練されていると思います。スケルツォはリズミックなところを強調しようとしている感じですが、シューリヒトのような切れの良さはないので、わりと平凡か。それでもリズミックな部分とメロディアスな部分のバランスは上手く、聴いていて過不足は感じない演奏。フィナーレ楽章もオーソドックス路線なんですが、金管の強奏部分はわりとしっかり吹かせているものの、うるさくはならず、オケのコントロールはしっかりしているようです。木管のテーマでの雰囲気はまあまあだし、背後にある弦の響きも美しいでしょう。特に弦のディミヌエンドの仕方は個人的に好みです。美しいと思う。この「グレート」も納得できる演奏ですが、他の指揮者にも良いCDがたくさんあり、それらを差し置いて素直にツェンダーを評価する気にはなれないのが正直なところです。個人的には「未完成」の方を評価したいと思います。 * * * * * * * ところでリリー・クラウスの若い時の写真をたまたまウェブ上で見つけました。リリー・クラウスの若い時の顔ってはじめて見たのですが、服装からすると随分古い感じがします。なかなか興味深いと思いました。写真はここをクリック。 |
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note.011 / 2005-1-16
Concert of Beethoven:Symphony No.9 Krzysztof Penderecki (cond) ________________________________________________________ 年末に「第9」のコンサートに行ってきました。去年と同じでN響のコンサートです。指揮は作曲家のペンデレツキです。ペンデレツキの指揮ということで、一体どのような解釈がなされるのか興味津々だったのですが、いざ演奏がはじまってみると、わりとオーソドックスな解釈だったりして個人的には意外な印象も受けたりしましたが。 今回の席はS席で1階の中央という、なかなか良い場所で聴いたので音のバランスがたいへん良かったです。僕の顔の位置と演奏家の顔の位置がちょうど同じ高さという感じで、奏者の表情までよく見えたという座席でした。演奏で印象に残ったのは真摯な音楽への取り組みですね。第一楽章もそこそこの緊張感があったと思うし、特に曲の後半部分でチェロの上下する動きが強調されていた箇所があったと思うのですが、その辺りは印象的。第2楽章は特に印象に残った箇所はなかったのですが、それでもきっちりとした演奏という印象はありました。アダージョも平均的な印象が強かったですが、雰囲気は良かったんじゃないかな。曲の持つ「歌」がすっと聴き手に入ってくる感じで。フィナーレはそこそこパワーを感じたので、これは納得できるもだったです。コーダでのオーケストラの熱演も印象的でした。客の反応もだいぶ良かったです。やはり「第9」は生のコンサートで聴くと、その醍醐味を充分に堪能できて嬉しいものがあります。帰りに吉野野で豚丼をたべて帰ったのですが、家に帰るまでコンサートの余韻があり、楽しいコンサートだったと思います。 |