夕暮れ
赤い赤い、夕暮れ
ボクはいつもの場所で待っている
ずっと、ずっと、待っている
「んにゅ〜、ピコ〜!」
少女が赤いひかりを浴びながら、走ってきた
いつも元気な少女の笑顔
「ピコ、げんきぃ」
少女はそう言ってかがみこんで頭をなでてくれた
「よしよし」
ごしごし
「よ〜しよし」
ごしごしごし・・・・ごき!
「あれ?今、変なおとがしたような・・・」
なでてくれるのはうれしいけど、ちょっと力が・・・
「ぴ、ぴこ〜」
「うんうん、いつもげんきだねぇ、ピコは」
ボクの願いは少女には伝わらなかったようだ
彼女はボクを抱え込むに抱くと、さらに強く頭をなでた
「ぴ、ぴこ」
ああ、もうだめかも〜
「・・・でも・・・」
手が止まった、助かった
「・・・でも、美凪は、今も・・・」
頭に添えられた暖かさとは反する、悲しい匂い
「ぴこぴこ?」
「でも、もうすぐ終わるよ、きっと。そんな予感がする」
少女はボクを体をつかんで、顔の前まで持ってきた
夕日の光を浴びた少女のひとみは、きらきらと輝いている
「だから、ピコもおうえんしてね。美凪のこと、そして、みちるのこと・・・」
ボクには意味がわからなかったけど・・・、でも・・・
「あっ」
少女が声をあげた。遠くからくる髪の長い少女が、こちらに向かって歩いてくるのが見える
「美凪〜〜〜〜!」
少女は大きな声で名を呼ぶと、僕をそっと地面の上に降ろした
「ピコ、今の美凪には言っちゃだめだよ」
「ぴっこり」
ボクの返事を聞くと、笑顔の似合う少女は「ばいばい!」といい、歩いてくる女の子のほうに走っていった
一人の少女の長い影が二つになり、やがて重なりあるように歩いていく
その姿は、周りからはどう見えるのだろう・・・
二人が笑いあう姿を見て人はなんと思うのだろう・・・
ボクには少し悲しく見えた
「あ〜、ポテト!こんなところにいるぅ!」
大きな声にボクが振り返ると、大きな影がボクを覆った
「も〜、心配したんだよぉ。どこいってたんだよぉ〜」
かのの短い髪と、大きな左手のバンダナがボクのほほをくすぐった
「もう、ほんとに心配したんだから〜」
ボクのほほに暖かい雫が落ちた
「ぴこぴこ〜」
ボクはかののほほをなめてあげる
かのの顔に笑顔が戻った
「さっ、かえろ!お姉ちゃんも心配してるしね」
かのはボクを抱えたまま、立ち上がり、ゆっくりと診療所に向かって歩き始めた
そのとき、ボクは思った
さっきの少女のことを・・・
悲しいこと、うれしいこと・・・
いろいろあって・・・
それでも、少女は悲しみを抑えることをえらび、喜びを与えることをえらんだ
きっと、それはつらいことだと思う
それでも、彼女は待ちつづけているに違いない
自分の大好きな人を救ってくれる誰かを・・・
自分ではできない、救いの手を・・・
「ん〜、どうしたの、ポテト?」
かのがボクに話し掛ける
そう、きっとボクと同じように・・・
「ぴこぴこ〜!」
そしてそれはもうすぐ訪れるだろう・・・
果てしなく続く大気の下で