雪がまるで真っ白な桜のように風にのって舞った
街の景色が白一色に染まる
幾度目かの白い季節
季節は再び巡りまわる
「祐一、ちょっと寒いね♪」
名雪が俺の隣で言った。
名雪はマフラーに顔をうずめながら、微かに眉毛を揺らしている。
「だから・・・腕、組んでもいい?」
名雪が言った。
俺は黙って名雪の肩に腕を回して、名雪の体を引き寄せた。
名雪の両手が、俺の体にしがみついてくる。
寄り添った部分から、体が温かくなった。
歩きにくいことこの上ない。
けれど俺には心地よかった。
きっとこの街には、こんな寄り添い方が似合っている。
「ごめん、祐一。ちょっと待ってて」
名雪が女性向けのバーゲンセール品を見てくると言って離れた後、
俺は粉雪の舞い散る空を見た。
冬のどんより曇った空を見上げるたび、俺はあの冬を思い出す。
7年ぶりの冬。
名雪と再開し・・・
真琴に出会い・・・
栞や美坂、さゆりさんや舞と知り合えたあの冬を・・・
雪が嫌いで、白い街と見知らぬ商店街に戸惑った日々を・・・
そして俺達を助けてくれた天使のことを・・・
「祐一君♪」
振り向くと、あゆが背中の羽を揺らしながら立っていた。
『よう、あゆ。相変わらず小さいな』
「うぐぅ〜、祐一君も相変わらずだね」
あゆはちょっとすねて見せた後、笑顔で言った。
あの日と同じようにヘヤバンドが、風にゆれる髪を押さえている。
「祐一君、今、しあわせ?」
『ああ、しあわせだ』
「ふふ、即答だね♪」
あゆは笑った。俺もつられてほほ笑む。
『俺はあの時、名雪のそばにずっといられることを願った。
そして今まで名雪のそばにいてやれている。
あいつの支えになってやれている。
こんなにうれしいことはないよ』
「そう・・・良かった」
『これもみんなおまえのおかげだ、あゆ。
あの時、秋子さんを助けてくれたおまえの』
あゆは首を振った。
「ちがうよ、祐一君。祐一君と名雪さんの想いが秋子さんを救ったんだよ。
ボクはそのお手伝いをちょっとしただけ。
それに本当の幸せはそんなことじゃないよ。
ただ好きな人がそばにいてくれる、そばにいてあげられる。
そんな普通の日常が続いていくことこそ、本当の幸せなんだ。
奇跡は今、続いているんだよ。祐一君と名雪さんの二人の想いで」
『ああ、そうだな。俺はこれからもずっと名雪のそばにいるよ。
奇跡が終わらないことを願って』
「大丈夫だよ、祐一君と名雪さんなら」
あゆが言った。
「あ、ボクそろそろいかないと」
『そうなのか?』
「うん!こう見えても忙しいんだよ」
『食い逃げでか?』
「うぐぅ、やっぱり祐一君、変わってないよ〜」
あゆは舌を出して、ベー、と俺に向けてやると、笑って手を振った。
「じゃあね、祐一君」
『ちがうだろ、あゆ』
「えっ?」
俺の言葉に、あゆは不思議そうな顔をする。
『またね、の間違いだろ?』
あゆははっとしてうつむいた。そして手で顔をこすると、満面の笑顔で顔を上げた。
「うん!またね!祐一君」
『ああ、またな、あゆ』
あゆは手を大きく振りながら商店街の路地をかけていった。
背中の羽を揺らしながら・・・
「どうしたの?祐一」
俺があゆの消えた路地を見ていると、いつのまにか名雪が両手いっぱいの袋を
持って立っていた。
「いや、別に・・・ずいぶん買ったな」
「えへへ、ちょっと買い過ぎだね」
名雪が笑って言った。
「貸せよ、一つもってやる」
「あ、ありがと、祐一。そうだ、帰りに百花屋寄っていかない?」
名雪が荷物を渡しながら言った。
「百花屋か?またイチゴサンデーか?」
「うん!」
俺は微かに笑うと、名雪が怒ったように言った。
「なんでそこで笑うの〜!」
「いや、高校生のころから変わらないなぁと思ってな」
「いいでしょ、イチゴサンデー好きなんだから」
名雪が口を尖らせて言う。
「この空でよくそんな発想が出てくるなぁ」
「好きなんだもん、じゃあ、祐一は何だったらいいの?」
「そうだな・・・」
俺は気の早い太陽が紅く染める路地を見つめた。
「・・・こんな日は、あつあつのタイヤキだろ」
と俺は言った。二人の奇跡がいつまでも続くことを願いながら・・・
・・・そうだよな、あゆ
あとがきです♪
なんとなく私が話を考えるときは、場面だけが「ば〜ん!」と頭に浮かびます♪