【眼鏡】
美由希「あれ、おかしいなぁ」
がさがさ、ごそごそ・・・
恭也「美由希、何をしている」
美由希「あ、恭ちゃん!いいところに」
恭也「なんだ?」
美由希「わたしの眼鏡、しらない?」
恭也「・・・めがね、か?」
美由希「そう、さっきシャワーにいくとき、そのテーブルの上に置いたとおもったんだけど・・・
うう、学校おくれちゃうよ〜」
ひょい(頭の上の眼鏡を戻してやる)
美由希「あっ・・・」
恭也「・・・・・・」
美由希「あ、あはははは」
恭也「美由希、なってない」
美由希「はうっ」
【那美さん?】
恭也がいつもどおり神社の石段を駆け上がると、巫女さん姿の那美が境内を掃除しているのが見えた。
「那美さん、おはよう」
「あっ、お兄ちゃん!おはよう!」
「・・・・・・・えっ」
「・・・・・・・・・」
「え、え〜〜〜〜と、恭也さん、おはようございます・・・」
「那美さん、今・・・」
【晶?】
「晶、どうしたんだろう?」
フィアッセがテーブルに夕食の皿を並べながら言った。
「なんや、部屋でぶつぶつ言っとりましたけど?」
とキッチンのレンが大鍋の中の八宝菜を空中でターンさせながら言った。
「恭也、もうご飯だから、呼んできてくれる?」
「お師匠、すみません。なんなら一発くれてやってもいいですよ」
「・・・わかった」
恭也が2階の部屋の前にくると、ドアがわずかに開かれ、中の光が廊下に漏れていた。
「・・・晶、もう飯・・・」
「誰にも渡したくない・・・この世のあらゆる全てに・・・死の顎にさえ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「あっ、恭也、晶は?」
「お師匠、あのおサルは?」
「・・・・・・・・・・練習中だ」
怪訝な顔の二人
「練習中?空手の?」
「それにしちゃ、静かですね〜」
「・・・たぶん、セリフだ」
「はぁ???」
【光の歌姫の恋人】
光の歌姫、フィアッセ・クリステラ嬢に恋人現る!!!
そんな見出しの週刊誌を抱えた那美が翠屋のドアを開けたのは、
美由希と恭也が休憩中のフィアッセと談笑してるときだった。
「あ、那美さん」
「那美!いらっしゃいませ」
「那美ちゃん、いらっしゃい」
美由希、フィアッセ、桃子が言うと、那美は乱れた息で、恭也たちのいるテーブルに走ってきた。
「ど、どうしたんですか?那美さん」
「那美、はい、お水」
フィアッセが差し出す水を受け取ると、那美は一息でそれを飲み、
「きょ、恭也さん、これ」
と週刊誌をテーブルの上に差し出した。
「あっ」
「えっ」
「・・・・・・・・」
週刊誌のタイトルを見て、美由希の顔はにやけ、フィアッセの白い頬は薄紅色に染まり、
恭也は一瞥したあと、何事もないかのようにコーヒーを一口含んだ。
「な、那美・・・」
「恭ちゃ〜ん、どうするぅ?」
「・・・どうもこうもない」
隣の美由希の軽いひじ打ちを払いのけて、恭也は言った。
しかし、那美は頭を振り、
「ち、ちがうんです!」
と言った。
「ちがう?何が、那美さん?」
と美由希が言うと、
「こ、これ!この写真!」
と那美は、週刊誌のページをめくった。
センターカラーの大見出し「光の歌姫の恋人!」
その写真の中に写っていたのは、
「あっ!!!」
三人は息をのんだ。
「だ〜か〜ら!!!俺は関係ないっていってるだろ〜!」
放課後の校門前・・・
報道陣にカメラを向けられ、絶叫しているのは、
「おい、おサル!これはど〜ゆ〜ことや!!!」
「俺がしるか!カメ!」
二人の言い争いに割って入るように、
「晶さん、一言お願いしますよ〜」
「晶さん、どうして女子中学生の制服を?」
「もしや、その手の趣味が!」
「フィアッセさんについて・・・」
「おサル!覚えとけよ〜」
その様子を50M先の角から見ている、4人。
「な、なんか、すごい事に・・・ι」
「晶、レン、大丈夫かな?」
「晶ちゃんとレンちゃんが出てきたら、待ち構えていたTV屋さんにつかまっちゃって・・・」
「・・・・・・・・・・」
恭也が無言で出て行こうとするのを、美由希が腕を掴んだ。
「恭ちゃん、どうする気」
「助けてくる」
「だめだよ〜、なんて言って助ける気?」
「それは・・・」
「俺がフィアッセの恋人で、その人は間違いです。な〜んていえるわけないでしょ!」
「・・・・・・・」
恭也が黙っていると、
「大丈夫だよ、レンと晶なら。晶は女の子なんだから、すぐに誤解は解けるって」
と美由希は言った。
「あ、あはは、大丈夫、なのかなぁ・・・」
と那美が言った。
那美の持っていた写真週刊誌には、仲良く並んで歩く、フィアッセと晶の姿が写っていた。
晶はいつもどおり格好、キャップにショートパンツと、ちょっとかわいらしい男の子のように見える。
「でも、たまたま一緒に晩御飯の買い物してる姿から、こんなことになるなんて・・・」
「レン、晶、ごめんね、恭ちゃんたちのためにがんばって。今日の晩御飯は私たちでやるからね」
「い、いいのかなぁ」
といって、美由希と那美が並んで歩き出す。
恭也は校門を見つめているフィアッセの肩に手を置き、
「フィアッセ・・・」
と言った。
「晶に悪いことしてるけど・・・」
「けど?・・・」
恭也が聞きなおすと、
「・・・でも、まだ他の人たちには秘密にしておきたいな。あんな風に恭也の周りをしたくないし・・・」
「・・・そうだな、二人に少し悪いが・・・」
「・・・恭也♪」
んっ、と校門の方を見ていた恭也がフィアッセに向き直る前に、フィアッセの唇が恭也の頬に触れた。
「大好きだよ〜」
「ああ、おれもだ」
そっと手と手が重ねられ、二人は那美と美由希の後を追って歩き始めた。
「だ〜〜〜か〜〜〜ら〜〜〜!!!」
「おサル!!!死ね!!!」
背後で二人の絶叫が響いていた。