「志貴・・・さん、頭を低くしてください!」
「え、えっと、これくらい?」
「そうです、ではいきます!」
現在、6階の特別室前。エレベータホールまでは直線にして20Mほどです。
左右に敵影なし。
しかし、あの4人のことです。
どんな手を尽くして待ち伏せているかわかりません。
ロビーから部屋に入った志貴さまに隠れていてもらって、
部屋に志貴さまを誘いにきたアルクェイド様、シエル様、
秋葉様には志貴様は先に海へ行ったと偽情報を伝えましたが、
あの3人がどこまで信じたかは疑問です。
姉さんの動きも気になります。
「では、いきます」
「あ、ああ」
私たちは、壁を背にエレベータホールを目指し、
早足で絨毯が敷き詰められた特別フロアの廊下を音もなく走ります。
エレベータホールはちょっとした広間になっていて、
くつろげるようにか下のロビー同様、大き目のソファが並んでいます。
そのうちの、私たちに背になっているソファの影で何かが動きました。
「・・・!」
「翡翠ちゃん・・・、嘘はよくないよ」
カチャリ、と口元の紅茶のカップをしずかに受け皿におき、
その人は立ち上がりました。
白い服に、金髪・・・。
「アルクェイド様・・・」
「さ!志貴をこちらに渡して」
アルクェイド様はにっこりとした顔で、
でも瞳でこちらの動きを止めながらこちらに近づいてきます。
私が一歩下がると、志貴様が私の肩を両手で掴みました。
「志貴様・・・」
「アルクェイド、悪いけど・・・」
「志貴は黙っててね♪」
声は楽しげですが、眼がぜんぜん笑ってません。
志貴様が答えに詰まると、アルクェイド様がさらに近づいてきます。
私は志貴様から離れて、アルクェイド様に近づきました。
「翡翠?」
「翡翠ちゃん、志貴を渡してくれるの♪」
私は答えず、あるものを懐から取り出しました。
・・・ねこじゃらしです。
「にゃん♪」
・・・ふりふりふり
「にゃん♪にゃん♪にゃん♪」
・・・ふりりりりり(右)
「にゃ〜〜〜〜〜ん(右)」
・・・ふりりりりり(左)」
「にゃ〜〜〜〜〜ん(左)
・・・ふりりりりり、ぽい!(窓へ投げる)
「にゃ〜〜〜〜〜ん、にゃん♪(窓へ突っ込む)」
・・・がっしゃん!!!
ひゅ〜〜〜〜〜〜〜ん、どっかん!!!
がらん、がらん・・・・
「わ、ひ、人がおちてきたぞぉぉぉぉぉ!」
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜」
「ち、血がぁぁぁぁぁぁぁ」
「きゅ、救急車をよべぇぇぇぇ」
・・・作戦、成功です・・・
「ひ、翡翠・・・・」
「障害は取り除きました、行きます」
「いや、でも、しかし・・・」
私は呆然とする志貴様をエレベータに乗せました。
残る敵は、後3人です・・・。