*ギャング映画の系譜 〜アル・カポネとボニー&クライド〜 
1920年代後半に発明されたトーキー映画によって、映画はサイレント映画から劇的な変化を遂げる。これによって映画が手に
入れたものは、“台詞(せりふ)”と“音楽”と“銃声”である、と言われている。1920年に施行された禁酒法と、1929
に勃発した世界恐慌による閉塞感から、人々はギャング映画から放たれる銃声にカタルシスを求めた。この時代、空想の世界で
はなく現実社会において全米中を震撼させ、かつ密かに大衆の支持を受けていたギャングの代表格が、アル・カポネボニー
&クライド
である。


*アル・カポネ

 本名アルフォンス・カポネ(Alphonse Gabriel Capone)。禁酒法時代に密造酒ビジネスで巨万の富を得た他、売春・賭博など
の犯罪組織を束ね、「暗黒街の帝王」と呼ばれた。1899年イタリア移民の子としてニューヨークに生まれたアル・カポネは、
ニューヨークのストリート・ギャングの頭であったジョニー・トーリオの子分となり、彼の右腕としてシカゴを拠点に密造酒
ビジネスで手腕を発揮した。1925年トーリオが刺客に襲われ重傷を負って引退した後は、カポネが組織のトップとして君臨し、
組織を何倍にも拡大させた。1929年2月14日には有名な「聖バレンタインデーの虐殺」を起こし、カポネ一家と敵対するモラン
一家のメンバー7名がガレージの壁に立たされ機関銃によって射殺されるが、カポネ自身は当日フロリダにいたことになっており
逮捕を免れた。これを受け本腰を上げたFBIは「アンタッチャブル」と呼ばれる特捜班を設置し、ついに1931年カポネを脱税容疑
で摘発するが、懲役11年の刑を受けたカポネは模範囚で7年で仮釈放された。1939年フロリダの別荘に戻り、以後シカゴには足を
踏み入れることはなく、1947年1月に他界した。

犯罪王リコ30★★★★

原題:Little Caesar
監督:マービン・ルロイ 
キャスト:エドワード・G・ロビンソン、ダグラス・フェアバンクス・Jr.、グレンダ・ファレル 
脚本:フランシス・エドワード・ファラゴーコメント 

コメント 
 ストーリーは、暗黒街の世界でひたすらのし上がる事にのみ興味を示すリコことカエサル・エンリコ(エドワード・G・ロビンソン)と、この世界から足を洗って恋人と共にダンサーとして身を立てることを望む旧友のジョー(ダグラス・フェアバンクス・Jr.)を中心に展開する。今から見れば派手な銃撃戦があるという訳ではないが、重厚な演技陣によって映画は殺気立った緊張感に覆われている。
 エドワード・G・ロビンソンのふてぶてしい存在感は言うまでもなく、彼に取って変わられるギャングのサム(スタンリー・フィールズ)や、執拗にリコを追い詰める警察官フラハティなどのキャラクターが秀逸である。後半、リコは友への情けから没落の道を歩み命を落とす事となるが、落ちぶれてもなお気品を感じさせるのは、エドワード・G・ロビンソンの知性のさせる業か。この映画がギャング映画の火付け役となると共に、主人公に抜擢されたエドワード・G・ロビンソンはギャング・スターとしての地位を確立する。


暗黒街の顔役(32)★★★★★

原題:Scarface 
監督:ハワード・ホークス 
キャスト:ポール・ムニ、ジョージ・ラフト、ボリス・カーロフ
脚本:ハワード・ホークス、ベン・ヘクト、W・R・バーネット 

コメント 
 マシンガンの銃声が炸裂するバイオレンス映画の先駆けにして、その決定版とも言える作品。
『犯罪王リコ』が中年男なのに対して、主人公トニーは30歳前後の若いギャングであり、ポール・ムニは野性味と凶暴性を存分に発揮し、異様な魅力を放っている。その片腕リナルド(ジョージ・ラフト)は対照的にクールな存在で、コインを指ではじく姿が印象に残る。個室のガラスが割られることでボスが交代し“×”のマークが現れた直後に殺人が起こる等、ホークスは徹底的に映画的表現にこだわってストーリーを展開させてゆく。銃撃戦やカーチェイスなどスピード感溢れるシークエンスとともに、魅力的なキャラクターによる静的かつ緊張感に満ちたシーンとのバランスが絶妙である。
 後半ボスが自らを暗殺しようと企てていたことを悟る場面でのくだりでのトニーの表情や、暗闇に浮かぶ情婦や妹の表情など、緊張感も相まって異様な美しさを感じさせる。リコが旧友との友情なら、トニーは妹に対する偏執的な愛情によって身を滅ぼす。当時は暴力的な表現以上に、この近親相姦的な愛情描写が検閲すれすれだったらしい。後年、ブライアン・デ・パルマがリメイク作品『スカーフェイス』(83)や捜査官の立場で描いた『アンタッチャブル』(87)を製作したのみならず、『ゴッド・ファーザー』(72)や深作欣二司や北野武のやくざ映画に至るまで、ギャング映画・バイオレンス映画に与えた影響は非常に大きい。


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