STARBOOKS CAFE


最高の睡眠薬は、活字でしょ!

好きなレストラン、そして映画に音楽。と、きたらやっぱり今度は活字と言う事で。バードさんが今まで読んだ本の中で感銘を受けた本を紹介する「STARBOOKS CAFE」って、このコーナーが一番時間かかるんじゃないだろうか?だって読まなきゃ紹介できないし。あぁ、ひょっとして自分で自分の首を絞める結果になるのか?

風味絶佳/山田詠美

 デビューして気付けば20年を迎えた「山田詠美」、デビュー作のベッドタイムアイズからどっぷりハマって今に至る。
 どうもデビュー作のイメージが今も付いて回っているのか、「黒人男性と日本人女性との恋愛関係」のお話と思われがちであるが。おっとどっこい!彼女が描く高校生男の子は「自分が学生の時に、こんな親友が欲しかった!(僕は勉強が出来ない)」と思わせ。小学生女の子は「後に男を狂わす娘の成長とは、こうなのか!(蝶々の纏足)」と焦燥。美しい顔とスタイルに生まれた黒人の娘は「恋愛に掟なし、しかも本物の美しさは武器。(アニマルロジック)」と感嘆。兎に角エイミーはどんな人物を書いても、その人物の生き生きとしている事ったら。どうか山田詠美を訝しがっているあなた、騙されたと思ってどれか一冊を手にとって開いてみてください。「えっ?こんな話だったんだ!」と思って頂ける事請け合い。
 実際に彼女の作品を読むと、圧倒的な実力を感じる、それは「形のない感情を、シンプルな言葉で表す」能力に長けている所だ。数あまたデビューする作家がはたまた数あまた消え去って行きますが、彼女が20年「新作が出たら読みたい!」思わせるのは、デビュー当時のゴシップ記者なんか、軽ーくあしらって揺るぎのない作品を書き続けたらからこそだ。で、今作は6つの作品が入った短編集で、カバーを見てふふっ。と思うかもしれないが「森永ミルクキャラメル」みたいに、小粒で美味しい作品がぎゅっと詰まっている。しかしその6粒は、決して甘いばかりではなくて、懐かしくて胸がぎゅっとしたり、切なくて苦しくなったり、思わず頬が緩んだりする個性的な粒たちだ。早速読んでおくと良い事ありますよ、6作中の1編タイトルにもなっている「風味絶佳」は、あの柳楽優弥君主演で映画化決定との事。因みにこのタイトルの「風味絶佳」は森永ミルクキャラメルのパッケージに書いてある言葉なんですよ。そこでまたこのカバーのデザインに戻って、お話を全編読み、そしてあとがきを最後まで読むと(実はここが肝です)。改めて、不意にぽつりと呟いてしまう事でしょう。「あぁ、風味絶佳。」

ハルチン/魚喃キリコ

 「ナナナン」と読む「ナナナン」読むのだよ、ナナナンキリコである。そしてこの本の主人公はハルコと言って23歳の女の子だ。その風貌と言えば、アンガールズ的に背が高くて細くてショートカットでどっちかっつうと「男前」な女の子だ。しかもこの娘は「あなたの近くを見回すと」もしくは「昔のクラスに一人はいたような」前向きで、突発的で、後先考えていなくて、ずぼらである。
 この漫画は元々雑誌Hanakoに連載されていたもので、1ページ6コマの見開き12コマで一話完結・・・。の、お話がぎゅっと詰まっていて、毎回毎回「ハルチン」のだらしない毎日やチーちゃんとの絶妙な掛け合いにクスクス笑いがとまらないほのぼの作品なのだ。このだらしな娘とタッグマッチを組む「チーちゃん」は、可憐な顔立ちとロングヘアーで時々猛毒を吐く。もちろんチーちゃんは彼氏持ちで、ハルチンは案の定一人上手だ。ハルチンも新潟出身の設定で、多分魚喃先生の分身なのだろう。さてこの作品の凄いところは、魚喃先生のほかの作品がシュールでシンプルで美しい線で描かれるめまいがするほど悲しい恋愛漫画だと言うことだ。つまりハルチンと言う作品は「中島みゆき的」に言うなら「彼女の歌」に対して言う「オールナイトニッポンでの中島みゆき的」なポジションだと言うことだ。

シュナの旅/宮崎駿

 今や日本アニメ界の巨匠として、コンスタントに良作を輩出する宮崎駿。彼が世に広く知られるようになったのは、アニメ映画「風の谷のナウシカ」であり、それより年代が上の人にとっては「未来少年コナン」だったりするのでしょう。さて、そんなアニメが多くの人の目に触れる以前に、宮崎監督は何をしていたでしょうか?もちろん後のアニメに繋がる良作を作っていたんですよ。で、これが1983年に作られた絵本「シュナの旅」。
 バードさんも宮崎駿の名を認識したのは、映画版のナウシカだった。まさに圧巻、あれほど鮮烈なアニメーションに出会ったことは無く、未だにバードさんの中で上位にランキングされる映画である。しかし、その映画以上に衝撃を受けた作品があった、それはナウシカの原作の漫画だ。映画版で見るナウシカは、自然を度返しする傲慢な人間たちを、強い勇気の少女が正す話だが。原作本はあの映画のぶ厚さなんか序の口で、もっともっと深く重圧な内容である。その漫画版のナウシカの原点がこの「シュナの旅」にぎっしり詰まっている。手放しで言えよう渾身の「佳作」だ。
 お話はチベットの民話を元に、貧しい国の国王を継ぐこととなる少年シュナが、国に豊穣をもたらすために旅立つ所から始まる・・・。この話の絵は、クラリスやハイジ、パズやコナン、そしてナウシカたちの優しさや勇気、信ずるものを貫こうとする強さの原点が、詰まっていて、その優しい色合いがスケールの大きな世界を見事に描き出している。ちょっと心のすさんだところに優しく掌を当ててくれるような優しい絵本だ。あなたの行動範囲に、あの雑貨屋か本屋かわからないビレッジバンガードとかあったら、結構在庫が在ると思うので手にとって見てください。500円ほどで手に入る、良作の宮崎作品をどうぞ。

アルジャーノンに花束を/ダニエル・キース

 不覚にも本で泣きました、泣かされました。いやぁ卑怯、全く持って卑怯だ。主人公の「チャーリー・ゴードン」が良い人なんだこれが、そしてもともとIQが低かった彼は単純に頭が良くなりたかった、頭が良くなって、もっともっといろんな本が読めるようになったり、知らない事を覚えたり、離れてしまった家族に会いたかったのだ。だから彼は医者たちの実験材料になる事を快諾してしまう。
 この本の話自体面白いのですが、日本語訳がまた素晴らしい、日本語訳の小尾芙佐さんに「良くやった!」と言いたい。外国の作品って訳し方によって読みやすくも読み難くもなるが、これは本当にすごい。本国では1966年に書かれて、日本語版の初版が出たのが1989年、未だに良作として皆の口にタイトルが出てくる本である。
 ジャンルとしてはSFだけど、そこには家族との関係、養護学校のキニアン先生への恋心、そしてその恋が短期間にたった2度の接点をかするだけで、結ばれずに終わる、しかし、冒頭にも言ったが「チャーリー・ゴードン」が良い人なんだ、人間って知らなくて良い事を知れば落ち込むし、人のせいにしたりしたくなるのを、彼は誰を恨むこともなく自分の行き先を自分で決め最後の台詞を残す。この決めの一言はキツイ、ここ何回読んでも泣ける。泣けて泣けてしょうがない、凄いなぁこの話。こんな話しかけるなんて、キースったら天才。

寄生獣/岩明均

 漫画大好きです。バードさんは漫画に必要な要素は大きく分けて「画力」と「ストーリー」だと思っています。漫画の神様手塚治虫氏はこの両方の要素を併せ持った上に多作かつ哲学にまで及び入る上玉のストーリーを描きました。あんな作家さんは今後出ないんじゃないか?と思っていたのですが、最近この両要素を兼ね備えた漫画家として井上雄彦さんなんか最強だと思うのですよ。
 若かりし頃は絵が好きと言うだけで、後に女の子の尻のラインを描かせたら日本一とまで謳われた、尻職人「桂正和」のウイングマンとか読んでたっけなー。などと思い出すのです、とにかくバードさん的には、2つの要素でどちらが大事か?と問われれば確実に「絵」のほうなんですよ。
 さて、ほんでもって岩明均さんの「寄生獣」なのですが。この人の絵、はっきり言って全く好きじゃありません、が、しかしこの話を全巻読みきった後感じたのは、こんな凄い話描いちゃって、この後この人はこの作品超えられるんだろうか?であった。人間って、一生涯に一度は他の人を感動させる作品を叩き出す事が出来ると思うし。一度きりを超える人だけが「天才」と呼ばれ、ソレこそが手塚治虫のいた場所なんだと思うのです。残念ながら岩明先生がこの作品を超えるものを描けていないのです、と言うか、自分で描いてしまったこの作品はあまりにも高いボーダーを自分自身で作ってしまった、そういえるほどこの作品は話のギミックが効いている。
 今まで人間を捕食する敵が出てくる話は、漫画やドラマ、映画と山ほどあって、地球外生命体や未知のウイルスなどの敵と戦う訳ですが。この話が面白い一つの要因は、未知のエイリアンが人間を喰い尽くすために、人間の脳味噌に寄生して人間の世界に紛れ込む所、そして主人公新一は辛くも脳に寄生される事を逃れたが、彼の右腕にそのエイリアンが寄生する。と言う、一ひねりも二ひねりも洒落が聞いた話と、途中キャラクターが勝手に走り始めてからの、哲学の領域に入ってしまった話の内容、大きく広がってしまった話の風呂敷の集約の仕方まで、まさによく出来た話だ。なんか聞く所によるとハリウッドで実写でリメイクの話まで出ているらしい。凄くショッキングな始まりと、改めて考えると背中がさわさわするラストまで。この話の出来の良さを機会があったら、お楽しみください。
 あぁ、再度言いますが「画力」は期待しないでくださいね。

PLATONIC SEX/飯島愛

 あーこの作品をあげた時点で、純文学とかから遠い所で本を選んでいることはあからさまであろう。ほっとけ!しかーし、汝、この作品を侮るなかれ。
 今や印税生活を送る飯島愛大先生である。印税生活の基となったっ作品は言うまでもなく売れに売れたこの「PLATONIC SEX」である、あまりに売れたおかげで今や文庫まで出ている、スゴイ。「どうせゴーストライターが書いたタレント本でしょ。」とお思いのあなた、一度騙されたと思って読んでみなされ。なにしろ、たかが10年弱のある少女の生き様を書いただけの本で、コレほどまでにインパクトを得るのは、ソレがお茶の間でおなじみの飯島愛の過去だからであり。AV出演も、豊胸手術も、好きな彼氏との子供を中絶した事も、そのすべてを、なんだか知らんが、見事に自分から離れて一歩引いた目線で、お涙頂戴一切なしで書き切ってるところが見事である。今テレビでコメントをしている飯島愛の、「無防備」かつ「あけすけ」かつ「的確な突っ込み」かつ「圧倒的説得力」の理由を、この本がすべて語っている。因みにこの後週刊朝日に書いていたコラムを再編した、2作目の「生病検査薬≒性病検査薬」に書かれているのだが、「私は主婦層の高感度が極端に低い」と豪語しているように、唯一、AVからタレントとして生き残った唯一無二の存在が飯島愛である。結局彼女は可愛かったからこそ生き残れた、だからこそ若いうちの無茶を相殺して、過去の悪行をすべて白日に晒して吹っ切ったのだ、そりゃー強いでしょ、最強ですよ。それ以上にこの本読むとわかるんですが、作品として充分面白い。良くコレだけ自分を突き放して書けたものだ、天晴れだ。

ESCAPE/桜沢エリカ

 漫画が好きで、そんな漫画本の中でも、特にハードカバーの漫画が好きで、特に絵が綺麗な漫画家さんがお気に入りなんです。その中でも特に絵の綺麗さとストーリーの構成が大好きなのが桜沢エリカさん。結構多作な方で、どの作品もいいのですが特にコレとあげるのならば「ESCAPE」を推します。
 ストーリーは、生きることに目標が見出せず、その日暮らしをしている人志は、ある日引越しのバイトでメゾネットタイプのマンションに一人で住む、どう見てもそれに見合った収入を生み出していそうもない、可愛い女性に出会う。しかしその引越しの荷物を運び込んだ後に、人志は彼女から心付けのポチ袋からお札とともに電話番号の書かれたメモを貰う。同僚がのたまう一言が人志の耳に残る。「彼女、AV嬢の水沢アンナじゃないっすか?」、そして「人志」と水沢アンナこと「加奈子」の危うい恋愛が始まる。加奈子がつけている香水がカルバンクラインのESCAPEで、人志は抱きしめた彼女の香りから南の島を想像し、二人は南の島で暮らすことを夢見る。しかし、二人の幸せな時間は少しづつ揺らぎはじめる。
 いやー、桜沢エリカの描く女の子は超エッチで可愛い。ウエストは細く顔は小さく手足は長くて、唇はエッチだ。しかも、彼女が描く恋愛は、「好きになっちゃったらどうしようもないよねぇ。」ってのと「駄目なやつっているもんねぇ。」って言うのが的確に描かれている。どれ読んでもぐうの音も出ない。他にも「私に優しい夜」にでてくる姉の亜子ちゃんとオキャマの弟の乃武夫の掛け合いも、「恋の掟」にでてくるタクちゃんの駄目男っぷりも、妙なリアルさが妙に納得してしまう。桜沢さんの若かりし頃の夜遊び武勇伝を聞くと成る程、ゲイの友人が多く、おしゃれして六本木で騒いでるのが好きだったのが、今までの作品にも的確に表れている。今や結婚して男の子のお母さんながら、センスのよさは揺らぎなし!

てのりくじら/桝野浩一

 現代短歌です、短歌。
短歌なんて学生のときに古典の授業でやったかも、だけどあんまり良くわかんなかったような・・・。バードさんもそうなんです、でもコレはちょっと違う。短歌は短歌でも「現代短歌」なのだ、その第一ページ目に出ている句はこうだ。
  「こんなにもふざけたきょうがある以上
           どんなあすでもありうるだろう」
 と、こうだ。なんてイカしてるんだ!どの句を取って見ても「わかるわかるっ」って感じの歌ばかり。それ以上に、句を読み進めて行く内に「五七五七七」と言うリズムが日本人のDNA に刷り込まれているんだと感じさせるその語韻の心地よさ、イラストを描くオカザキマリさんの絵のかわいらしさ、そして歌の辛辣さや毒っぽさ。それらがバランスよく混ざり合って珠玉の一冊となっている。因みに第二集のタイトルは「ドレミふぁんくしょんドロップ」こちらはさらに内容が危うく辛辣になってくる。
  「じゃぁまた と笑顔で別れ5秒後に
               真顔に戻るための筋肉」
 かぁーっ、キテル、キテル!昔ながらの良き様式を踏み、新しき現代の形で表現する。この心地よさを是非あなたも!




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