塗装ブースから外に向けて大型のファンが設置してある。
室内の空気を強制排出する為の強力な換気扇と思ってくれて良い。
直径が1メートル近くある巨大な羽根であるからして、その力は凄まじく、
これが作動している時は室内の気圧が下がり、この部屋の外開きのドアは
開ける事が難しくなる程だ。
ある時、作業に入ろうとして私はファンの電源をオンにした。
その時、窓ガラス越しに見えるファンの排気口から凄まじい量の羽毛が吐き出されてきた。
「、、、はぁ、、またかよ。」
電源を一旦落とし、塗装ブースに入ると何だかすえた様な匂いがする。
塗装ブースとファンを隔てるフィルターを取り除くとその甘苦い匂いは強烈に室内に
立ち込めた。
フィルターの向こう側にあった物は予想通りハトの死骸だった。
巨大なファンの6枚の羽根は特にエッジが切り立った物では無いが、
巻き込まれたら、人でも熊でもレイザーバックでさえも一瞬で命を落とす事になる。
この凶器にかかるとハトなんてシャボン玉の如く弾けてしまう。
とにかく片付けないとこのまま腐って行く。
腹の中で先程食べたランチの据わりが悪くなる。
バラバラに解体されたパーツはおおむね3つ。片方の羽根と、胴体と首だ。
その他にねじ切れた脚。壁にこびり付いた内臓の一部。何だか判らない肉片。
羽根はまぁいい。問題は胴体と首だ。
胴を持ち上げると内臓がすっかり飛び出て、ポッカリと開いた暗い空洞の周りにズタズタに
引きちぎられた筋肉組織が見える。その周りから飛び出ているのは折れた骨だ。
血はさほどでも無いが何しろ悪臭が酷い。
そして次は首。 剥き出しになった頚骨の先に破壊された頭部が付いている。
頭の向かって左側がファンの直撃を喰らったのだろうか、頭蓋骨が割れて左目だったらしき
モノが糸を引いて垂れ下がっている。右目は既に腐って眼窩の奥に吸い込まれる様にして窪んでいた。
吐き気を抑えながらビニール袋に入れようとした瞬間、持ち上げた頭部からクチバシが落ちた。
ちなみにこの様なハトの死体処理、3回目である。 何回やっても慣れないが。