万能包丁なんて目じゃないぐらい 栄口は「死」というものについて、深く考えたことはなかった。考えずとも、「死」と言う言葉や文字には、曖昧で当たり前な概念が存在し、それさえ何となく分かっていれば日常には何の支障もきたすことがなかったからである。そもそも、栄口ほど若ければ「死」というものは、太平洋を渡らなければたどり着かないアメリカ大陸よりもほど遠いもので彼自身の日常にはなんの関わりもないものだった。 しかし、その日常が突然「母親の死」によって変化した。 栄口の母親は、元々あまり丈夫な方ではなかった。 入院生活を送らなければならない程ではなかったが、外に働きに出ることは出来ない。環境の変化に順応することが苦手な人で、良く自律神経をおかしくしたり、熱を出したりしていた。 けれど、それが「死」に繋がるとは家族の誰もが思っていなかった。 彼女はその日、夕飯の買い物に出ていた。あまり出歩くことをしないので、買い物はまとめてすることが多く、その日も一週間分の食料をたっぷり買い込んでいた。それを自転車のカゴと、三人の子供がまだ小さかった時に使用していたチャイルドシートに乗せてゆったりと歩いていた。 暑い日だった。 なんだか体がだるいのよ。風邪かしらねぇ。 苦笑しながら言った時の、母親の少し笑いの混じった気怠げな声と、汗ばんだ体臭までもを栄口は今でもはっきりと思い出すことが出来る。 どうしてあの時自分は、休んでいたらと言ってやらなかったんだろうか。熱が出ちゃう前に買い物に行ってくるわと言った母親に、どうして俺が行くよと言ってやらなかったのだろうか。 彼女は帰り道、点滅している信号機を渡っている最中にふらりと倒れた。信号が赤に変わり、カーオーディオをいじっていて前を気にしていなかったドライバーが発信させた車によって、はねられたのだ。それは、はねられたというよりは轢かれたといった方が的確だった。 四肢が折れ曲がるとか、そういうことではなくてそれは完全に轢死体だったらしい。らしいというのは、栄口自身はその時の状況を知らないからである。 身元確認も、父親だけが行った。警察の方から、かなり酷い状態ですと前置きをされたからだ。 だから、栄口や姉、弟が見たのは、すっかり綺麗に処置をされて花の敷かれたお棺に安置されている母親だった。 小さな小窓から覗く母親の顔は白粉を塗られていて、不自然なほどに白かった。傷を隠す為に、多めにはたかれていたのかもしれない。けれど、それでもあちこちに見える皮膚の引きつった様子は、明らかにそこが縫合されたのだということを栄口に理解させた。そしてそれは同時に、自分の母親という存在はもうこの世から消えて無くなったのだなということも理解させた。 ただ、不思議と栄口は悲しいとは思わなかった。 それが病気で亡くなったとかで、綺麗なままの状態だったとしたらきっと大泣きしていただろうと、彼は思う。けれど、実際に母親の顔に刻まれたいくつもの縫合後は、もはや栄口の目には「人間」としても「母親」としても認識されなかった。 どれだけ見ても、その死体からは「母親」としての痕跡を見つけることが栄口には出来なかったのだ。 ごめんなさい。 栄口は、心の中で棺に横たわる「母親」に謝った。 (体調が悪いことに気づいてあげられなくてごめん。母さんだって、思えなくて、泣けなくてごめんなさい) 家族で涙を流さなかったのは、栄口だけだった。それを薄情だと思う人間はいなくて皆が一様に健気だと栄口を慰めた。 違うんだ。 俺は、母さんが死んだって分かっているのに、それに実感が持てずに死体を見ても母さんだとすら思えずなんの感慨も抱けないでいる薄情者なんだよ。 大人達が栄口を慰めるたびに、彼の心はきりきりと無理矢理棘の生えたネジで巻かれているみたいに痛んだ。 その痛んだ心は修復されることはなく、家の中にひっそりと置かれた仏壇を目にする度にキリ、と一つまだネジが巻かれるような、そんな感覚を覚えていた。 しかし、それ以外のことは順調だった。 まず、母親のいない生活に一番早く順応したのは栄口だっただろう。まだ立ち直れずにいる父親や姉弟に変わって、家事をした。 作る食事は美味くはなかったが、味わう余裕が他の家族にはなかったので何の問題にもならなかった。洗濯は、今までにも何度かやったことがあったので問題はなかった。唯一、問題があったとすればそれは、父親のワイシャツにアイロンを上手くかけることが出来なかったということだろうか。 結果、父親は妙な部分に直線の皺のあるシャツを着て出勤をすることになったのだが、それも気にしているのは栄口だけのようだった。 母親の死を実感出来ずに、どれだけ思い出に浸ろうとも悲しむことの出来ない自分にこそ泣きたくなった。 自分は、薄情な人間だ。そして、薄情な息子だ。 どれだけ自分を責め立ててもちっとも許された気分にはならなかった。むしろ、そんな気持ちを忘れたいが為に、ひたすら日常を取り戻すことに没頭した。 「死」について、何かを考えることは一切放棄した。 栄口は、「死」について深く考えたことはなかった。そして、それについて考えることを避けるようになった。 なのにどうして自分は、こんなものを拾ってしまったのだろうか。 机の上には、一つの黒いノートが置かれていた。ごく普通のキャンパスノートのようで、特異だったのはこのタイトルに「DEATH NOTE」と書かれていること。そして、開くとすぐに「HOW TO USE」という説明書きがあることだった。 英語で書かれた説明は、辞書を使えば何とか読むことが出来た。読んで、これは馬鹿馬鹿しいにも程があるな、と白けた。 『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ』 馬鹿げてる。至極、馬鹿げてる。そう思っていながらも、栄口は説明書きを読み進めていた。それでも、英語が得意というわけではなかったし、普段教科書では使われない言い回しも多く見られたので全てを完全に訳することは無理だった。 (あとで、花井に聞こう) 胡散臭さと興味深さの混じり合った感情が不愉快で、栄口は勢いよくノートを閉じわざと明るく内心で予定を立てた。 一人で読むから、なんだか荒んだ気分になってきてしまうのだ。花井に訳してもらうついでに、田島や水谷の脳天気な発言でこの鬱憤を吹き飛ばしてもらおうと決める。 乱雑にノートを鞄に押し込んで、栄口は着替えることもせずベットに潜り込んだ。布団を頭から被って、きつく目を閉じる。 そうすることで暗闇が降りてくると、視界は感覚に変わる。何も見えていないのだから、本当は暗闇だと関知することだって不可能なはずなのだ。だからこそれは、自身の記憶の中にある「暗闇」という感覚を意識しているだけに過ぎない。 その暗闇の中で、栄口は自分の母親がゆったりと彼女独特のペースで家事をしている姿を見ていた。彼女は、時々栄口を振り返ってにっこりと笑いかける。買い物に行ってくるわね、と言って消える。そしてただいまと帰ってくると、彼女の顔には醜い縫い目を皮膚の引きつりがあるのだ。笑いかけられるたびに、それが母親だとは分かっていても込み上げてくる余所余所しさを感じずにはいられなかった。 それも全て記憶である。網膜の裏に焼き付いた記憶を、栄口は眠りに落ちるその時まで見続けていた。 最初の反応は大方予想が付いていた。 花井は栄口が取り出したノートを胡散臭そうに見て、いたずらだろと言い放った。その声が少し苛立って板のは、練習後で疲れ切っていたからかもしれない。 頁を開いて説明書きを読み進めていくうちにも、何度か同じをこと言われた。 昨夜のうちに訳したところは、ほぼ花井の訳と同じだったので俺の英語能力も捨てたもんじゃないなと少し浮かれた気分になる。 「なにそれ?なんかおもしろいの?」 案の定、田島の水谷が興味深そうに食いついてきた。汗ばんだ体を気にもせず、水谷は栄口の肩に顎の乗せてノートをのぞき込んできた。田島は、おおいと三橋と泉を呼んでいた。 気怠げな泉と、恐る恐るといった風体の三橋。それでも素直に歩いてくる二人のうち、三橋だけの腕を田島が勢いよくとってホラ!と机の上のノートを指さした。 「真っ黒なの。すっげーよなぁ」 「わ、ほ、ほんと、だっ。すごい、ねっ」 たどたどしい口調で、それでも頬を赤らめて興奮したように言う三橋に田島が満足気に歯茎を見せて笑う。 そのままの表情で、ところであれって何?と聞かれて栄口は思わず苦笑をしてしまう。どこまでも天真爛漫なのだ。田島は、人の話をまともに聞いていることの方が少ないが、その時の言動が至極あっさりとしていてまるで嫌味や苛立ちを感じさせない。 分からなければ例え何度聞いていたって分からないと言い、興味があることはまだ話す前だというのに、すっげー!と喜んでみせるのだ。感情的で子供じみたその表現方法は、しかし栄口の嫌う要素にはなり得なかった。 「拾ったノートなんだけど、デスノートって書いてあるんだよ」 だから栄口は、丁寧にゆったりとした口調で教えてやった。それには、言葉にはしなくても田島と同じように疑問に思っているであろう三橋のことも気遣ってのことだ。 田島が人の話をきちんと聞いていなくて理解をしないのとは違い、三橋は一生懸命に理解をしようとしていても出来ないことが多い。なので、訪ねてきた田島ではなく三橋の方を気に掛けてやりながら、栄口は一層ゆっくり丁寧に説明をしてやる。とはいえ、使用方法の全てを覚えてはいなかったので、その辺りは適当に切り上げてとりあえず花井が今訳してくれてるよと部員が集まっている輪の中心へと三橋の背中を押した。 全員が全員好きなことを言いながら花井の訳を聞いているのを、花井は俺だけがなんでせっせとやらなきゃいけないんだとぼやいた。 訳を書いた紙は二枚目に入っていた。その一枚目を、いつの間にかのぞき込んでいた阿部がぺらりとつまみ上げてつまらなそうに眺めた。半眼で、馬鹿にしたように読む。 阿部のそういった表情を栄口は、あまり好きではなかった。花井も同じような反応をしていたけれど、気に入らないと思ってしまうのはいつだって阿部の態度ばかりだ。 以前はそんなことはまるで気にならなかったのに、それを感じるようになったのは栄口の母親の葬儀以後のことになる。当時から少なからず付き合いのあった阿部は、母親に連れられて通夜に参列していた。他にも何人か、仲の良い同級生もいて彼らが皆一様に神妙な顔つきで栄口を慰めてくれるのに対して、阿部だけは普段と変わらぬ様子でただ何も言わずじっと栄口を見ていた。その時の目が、鋭いようでいてどこかまとわりつくような阿部の目つきが、母親の死を悲しめないでいることを見抜いているような気がして、栄口は酷くざわついた気持ちになった。それは同時に、とても残忍な気持ちをも生んだ。 嘘でも良いから、同情するふりをして欲しい。なんでこいつはこんなにも不躾に「母親の死を悲しんでいる俺」を凝視してくるんだ。 思い込みのみの、薄汚い感情だった。それがさらに、栄口を後ろめたい気持ちにさせて、視線を上げると視線がかち合ってしまいそうだったので、栄口は俯いたまま奥歯をきつく噛んだ。 通夜から引き上げる時、阿部は「今度の試合、出るのか?」と聞いてきた。それは至極不躾にも思えたし、日常的な会話を装った慰めと取ろうと思えば取れないこともなかった。 「出るよ」 「そっか。意外と、元気そうで良かったよ」 ポンと肩に置かれた手を振り払ってしまいそうになる衝動を抑えて、栄口は「長男だしね」と自分に言い聞かせるように呟いたのだ。 それから高校に入った。阿部は同じ野球部にいた。 しばらくして、栄口は阿部の視線を感じるようになった。あの時の、まとわりつくような六月の湿気のような視線だ。 それはいつだって、栄口が三橋といるときに感じるものだと分かるまでにはそんなに時間はかからなかった。 苛々するのを堪えて、気づかないふりを続けたがそれも長くは続かなかった。栄口は元々阿部の視線に並ならぬ嫌悪を抱いていたのだから、一ヶ月も経つと我慢も限界だった。それでも「なんでこっち見てくるの?」とたった一つ聞くことすらも出来ずに、最初はストレスも薄っぺらい紙が肋骨に一枚ぺろりと張り付いているぐらいの感覚だったのに、紙は次々と貼り重なっていって栄口の心臓を厚く包み込んでいった。動脈がその重みで締め付けられ、血液の流れを求めて心臓は一層激しく鼓動を打つ。 その瞬間の息苦しさは耐え難いもので、栄口は阿部の視線を感じた時に何度か気絶してしまいそうな程の目眩と吐き気を覚えたことがある。 今もいよいよ耐えられそうにない吐き気を覚えて、よろめいた体を誤魔化す為にすぐ近くの椅子に素早く座り込んで「ノート見せて」と平然を装って花井に声をかけた。 真っ白で表面のツルリとした紙は、普段栄口が使っている学習ノートと何ら変わりがない。 「これって閻魔帖みたいなもんなのかな」 「悪戯だろ」 栄口の言葉に花井が素っ気なく返してきた。コロンと彼の手を離れた無地のシャープペンシルが、転がってきて栄口の手元で止まる。なんとなく手に取るととても手持ちぶさたになって、これもまたなんとなく「阿部の名前でも書いてみようかな」と呟いた。 普段から苦手意識を持っているし、時々言われる言葉も結構酷いこと言われている。好意ばかりを阿部に対して持っているわけではないが、だからといって殺意があるわけではない。というか、一般の高校生がそう簡単に殺意などと言うものを持ち合わせてはいるわけもないのだ。 だから、それは軽口だ。デスノートが悪戯の産物だろうと、どこかで高をくくっていたからこそ口をついて出てきた。 阿部は、テメェふざけんなよと威嚇をするように睨んできたけれど、それがまた決定打となって周りの人間(主に水谷や田島)も阿部は酷いヤツだよと囃し立てる。そしてそのまま勢いで、栄口は笑みすら浮かべたままで阿部の名前を書いた。花井と、三橋が不安そうに、そして驚いたように栄口の手元を見ていたのを栄口はノート上に視線を落としていたのにもかかわらず感じていた。(感じていただけなので、それは栄口の思い込みかもしれない。ひょっとしたら花井の横にいた泉だったのかもしれないし、三橋の後ろにいた巣山だったのかもしれない)(だけどそんなことはどうでも良いことなのだ)(名前を書いたノートにも阿部にもなんの変化もなかった。四十秒の間は) 四十秒。 阿部はゆっくりと沈むように倒れていった。あまり苦しんだ様子がなかったことが、かえって下手な演技のように思えたのは決して栄口だけではないだろう。おいおい、お前冗談やめろよ向いてないって、そんなことを言って阿部を揺さぶったのが誰だったのかすら栄口は思い出すことが出来ない。皆、一様に混乱した。錯乱した。 あの田島ですらも、慌てふためき目には涙を浮かべて阿部の名前を連呼した。 栄口もまた、ノートと倒れてピクリとも動かない阿部を見比べて狂ったように阿部の名前を叫んだ。 「俺、俺・・が、!」 「違うだろっ。これは事故だよ。事故で、誰のせいでもないんだよっ」 尋常じゃない震え方をしている栄口を花井が支えるようにして、そして耳元で叫ぶがその声すらも涙声だった。 「だけど、俺が、阿部の名前を・・これ、に、これに書いて・・」 「馬鹿野郎!こんなもんで人が殺せてたまるかよ。第一、信じてないからこそ、書いたんじゃねぇかよっ」 そうだ。そうだよ。殺すつもりなんてなくって。弱々しく言うけれど、それをまともに聞いていた人間がいたのかどうかも定かではない。 三橋が叫ぶように泣いていた。 栄口はそれを見て、三橋まで死んでしまうのではないかと思って泣き出したくなった。 「三橋。三橋、ごめん。ごめん、三橋、ごめん」 泣き崩れる栄口。 傍には同じように座り込み、阿部にしがみついて泣く三橋。 水谷が栄口の肩にそっと手を置いて、お前が悪いんじゃないよと耳まで真っ赤にして泣きながら言う。抱きしめられて悪くないんだよともう一度言われて、続けて「ありがとう」と囁かれる。それは本当にさりげない口調で、音のない小さな呼吸のようになんの躊躇いもなくそうして言うことが当たり前だというような響きを持っていた。 え、と見上げる。 「水谷」 「栄口、ありがとう」 今度は芝居じみた涙声で。こちらの方が断然場の空気に合ったものであったのにも関わらず、栄口は白々しさに居たたまれなさすら感じて困惑した。しかしその反面、自分以外の人間の言動によって生じる困惑に優越感とも高揚感とも言えない、どこか興奮した気持ちを覚えてそれと同時に安堵するという混乱した感情を得て戸惑う。しかし、水谷はその混乱が納得に変わるまでは待ってはくれなかった。スンスンと鼻を啜りながら、枯れた声であのね、と続ける。 「俺が、あのノートを栄口に拾わせるよう仕組んだんだよ。本気で殺してしまいたいと思えば思う程、名前が書けなくてさ」 「な、んで?」 「だって嫌だったんだ。阿部は三橋を三橋は阿部を意識してた。その状況が」 水谷の吐息で蒸れた耳元を拭って、栄口は涙が目尻に残ったまま大きな瞬きをした。涙が、筋になって頬から顎にかけて流れ落ちていく。 「でも、それだけで」 殺せるものなの?と聞こうとすると、口の形で察したのか水谷が顔を近づけてきて「シィ」と子供をあやすようにそっと口元に立てた人差し指を当てる。 端からみれば、慰めている様子に見えないこともないかもしれない。話の内容とは裏腹に、水谷のそんな態度は今この瞬間の場の雰囲気にとても似合っていると栄口は思った。 きっと田島が何を言っても嫌味が無く人好きするように、水谷もまたそういった他人に許容される才を持っているのだろう。そうするとさっき感じた自分の矛盾する考えや母の死に関する不完全な感情も全てそれらこそが人間らしくあり平凡なのではないかと湧き上がり、それがさっき感じた興奮であるのだと確信した。 安堵である。 怒られている人間を傍で見ながら心配するふりをして、けれども内心では自分でなくて良かったと思う。そういった安堵と同じ種類のものだ。 「好きなら付き合いたい、セックスしたい。嫌いなら」 ねぇ、と同意を求めるように見られる。 「分かるだろ。お前だって、三橋のことが好きなんだから」 そいつは初耳だ。 栄口が驚いた顔をすると、それに対して水谷が呆れたように声を出さず笑った。屈託のない普段と変わらないその表情に、水谷の中で阿部のことは既に過ぎ去ったことなんだろうなと思えた。 本当にあのノートなんだねと言うと、水谷は死神が言うんだから間違いないよと返してくる。頭がおかしいんじゃないのかという思いはなくて、そうか死神が言うのか。ならば自分程度の人間が「死」について考えたって追いつきやしないなと、金輪際「死」について考えることも考えないように意識することもやめようと思った。 考えるべきはどうやって「DEATH NOTE」を自分だけのものにするかということ。どうやって、三橋を自分だけのものにするかということ。 おんもしれー。 しゃがれた声が、聞こえた気がした。 |