やることやってとっととねちまいな!








人類皆兄弟説否定









はいはい、いらっしゃい。どうも、お久しぶりで。え、あぁ、ほんと、久しぶりですよね。連絡ないって、それはそっちだってそうじゃないですか。いや、俺は時々三橋から話聞いてたんで。まぁ、上がってくださいよ。すごく綺麗ってわけでもないですけど、ゴキブリ出るってほど汚くもないですから。
いやでもびっくりしました。浜田さん、すごい久しぶりだったから。俺、来るだなんて聞いてなかったんで、ほんと驚いて一瞬、なんて挨拶しようか考えちゃいましたよ。敬語?だって、浜田さん年上じゃないっすか、そりゃいくら俺でも敬語は使いますって。前々から浜田さんって言ってた気もしますけどね。まぁだって、元球児ですし、体育会系ですし。ケケ、まぁ言っても誰も信じてくれないんですけどね、俺が高校野球やってたって。ヒドイと思いません?あ、笑う。ヒドイわぁ。
えーっと、とりあえず座ってください。
お茶、飲みます?ペットボトルのですけど。三橋の飲みかけと俺の飲みかけありますけど、どっちが良いですか?俺のはお茶っていうかジュースで、三橋のはウーロン茶。
え、ウーロン茶で?あ、飲みかけっつっても、口付けて飲んでるわけじゃないから間接になりませんよ。わ、冗談ですって、や、冗談じゃないですけど。でも、そんなにムキになんなくても良いじゃないですか。浜田さんが三橋のこと好きだってことぐらい、俺分かってますもん。含みとかナシですからね。幼なじみで、良いお兄ちゃんでしょ?三橋だって、大好きみたいですしね。
はい、どーぞ。マグカップですいませんけど。
ところで、最近どうです?就職でしたっけ?営業、大変みたいじゃないですか。
いやね、俺もそろそろ考えないといけないなぁとは思ってるんですけどねー、もう学生続けちゃおうかなって感じもしますよ。留年じゃなくて、えーっと院生とか。別に、勉強すんごい好きってわけじゃないですけど、俺社会人ってイメージじゃないでしょ?
うーん、そりゃね。いつかはしなくちゃって思いますよ。でもまだ、全然分かんないから、もうちょっと考える時間欲しいなぁって。
三橋なんかは、多分、色々コネとかあるんですよね。悪い意味じゃなくって、妥当に進んでいくんだろうなぁって思って。
なんか、俺ばっかベラベラしゃべってますね。すいません。
えぇ?俺の話おもしろいって、そんなの言ってくれるの浜田さんだけですよ多分。いや、うーん、なんかおもしろい話しろって言われても、うーん、なんか、そうだなぁ・・じゃぁ、こういうのは?
ちょっと薄暗い話なんですけどね。そういうの大丈夫ですか?
都市伝説っていうか、うーん、まぁそんな感じですかね。
えーっと、あるところに一人の男がいました。男は、普通の家庭で育って普通に進学をして、普通に友達もいてごくごく普通の男でした。
でも、ある時恋をしたんですね。それも、ものすごい恋。
もう、相手のことを好きで好きでたまらなくなって彼はある日ついに告白をしたんです。玉砕を覚悟していたのに、嬉しいことに彼は相手からオッケーをもらって、付き合うようになりました。
けど、付き合ってからって、ちょいちょい不安が出てくるもんじゃないですか。
付き合う前は両想いになれるかなって思ってたのが、浮気されないかな?今話つまんないって思われなかったかな?友達といる方が楽しいとか思われないかな?別れようって言われないかな?って。キリがない感じで。
そうして男は結局疑心暗鬼みたいなのになっちゃって、そうなるともうあとは転がり落ちていくだけですよ。男はね、相手が誰かと話してるのを見るだけですごく苛立つようになってきたんです。もう、自分とそいつだけいれば、他の人間なんてどうでも良いやみたいな感じになっちゃったんです。
特に男には気に入らないやつがいて、そいつは自分の恋人の幼なじみだったんです。恋人の絶対的信頼を得ているその男のことが気に入らなくて、どうにか二人を引き離したいと思うんだけど上手くいかない。それで、とうとうだったら恋人を監禁しちゃえば良いやってことになったらしいんですね。
でも、なんか監禁て難しいらしいんですよ。ストレスなんかも相当有ったんじゃないですか?結局、男が一晩留守にしたら死んじゃったらしいんです恋人。
えぇ?良くある話しって?いやいや、怖いのはそれがうちのマンションで起こったことだってことで。
ね、ね、怖いっしょ?見てみます?その部屋、うちの部屋なんですって。
あれ?顔怖いですよ。もしかして、こういう話ダメな人でした?え、似てる?話しが?話しって今の話しと、俺、ですか?
三橋に浜田さんとあんま仲良くするなって俺が言ったって?あっは、そりゃまぁ・・・言いましたけどね。だって、ホントに三橋ってば浜田さんのこと好きなんだもの。嫉妬しちゃって、ちょっと冗談ぽくは言いましたよ。
浜田さんのことが嫌いって、やだなぁそんなんじゃないですよぅ。
むしろ、大嫌いですね。








(水谷が立ち上がってさぁさぁこっちですよと、ドアを開けた)(小さなマンションはたった二部屋しかないので、別に浜田が立ち上がるまでもなくドアは見えていた)(開けられたドアの向こうに見慣れた影が横たわっていた。三橋だ)(浜田は舌打ちを一つすると、派手に机をスライドさせる程に乱雑に立ち上がって、その部屋の方へと駆けた)(お前何したんだよと水谷を怒鳴りつける)(水谷はヘラヘラと緩い笑みを浮かべて、何ってなんですか?としらばっくれる。それを見て浜田が胸ぐらを掴み上げた。水谷がハンと鼻先で笑う)(何もしちゃいませんよ。放っておいたら、ああなってただけで)(テメェと浜田が怒鳴った。ビリビリと壁が振動するのではないかと思ったぐらいに)(そして、握られた拳は水谷の頬へと振り下ろされた)(イテェと呻く水谷。浜田が憤ったまま今一度拳を振り上げる。不意に、か細い声でどうして?と問われる)(横たわっていた三橋が起きあがって、怯えた瞳で浜田を見ていた)(しまった騙されたのかと浜田が思った時にはもう既に遅く、ちょっとからかおうと思ったんだけど、でも俺が悪いんだよ質の悪い冗談だったんだ、と哀れな声を出して頬をこれ見よがしに抑える水谷の姿があった)(ハマちゃん酷いよと三橋が泣いた)




三橋ごめん。俺、本当にちょっと浜田さんのことからかおうって思っただけなんだよ。三橋が死んだみたいにぐっすり寝てるから、怪談話一つしてオチで実はそれ三橋のことなんだよって寝てるお前見せて驚かせようって、質の悪いこと考えた俺が悪かったんだよ。だから、しょうがないんだ殴られても。だって、三橋だって、怒るでしょ?死人にさせられちゃったんだよ?




(水谷の言葉に、三橋はそんなことはないよと涙声で言う)(三橋ごめん、と水谷もまた泣いた)(浜田が居心地が悪そうに立ちつくしている)(握り拳が震えていて、三橋と声を掛けようとしては何度も挫折してしまっているのだ)(戦慄く唇からは、一言だって言葉が出ては来ない)(三橋の完全に怯えきった視線に、浜田は心底絶望した)(一気に失ってしまった信頼を取り戻すことは不可能なのだろうな、と直感で思った)(水谷がこのまま浜田が悪いのではないのだと被害者ぶって言い続けている限り、三橋の浜田に対する信頼が戻って来る日は来ないのだろう)(浜田さんにしてみたら、大事な弟分持って行かれたみたいな感じなんですよね。やっぱ、ダメなんですよね)(弱々しい声。どうせ作り声のくせにと、唾を吐き出したい気持ちになりながらも、それをすんでの所で堪える)(っていうか、お前らなに?つきあって、る、の?)(思わず三橋のような話し方になってしまった浜田。恥じらって頷く三橋。ほくそ笑む水谷/もちろん三橋には見えぬようにひっそりと)(頬を抑える水谷を庇うように支える三橋。浜田は一人悪者役。反対したいけれど、出来ようはずもなくただただ奥歯を噛みしめるばかり)


 


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