「レスリング・ウィズ・シャドウズ」が日本発売されるとことは、この映画の発売を
実現させた、「ナイトロ」の実況でお馴染みの内田稔さんから以前から聞いて
おり知っていた。ぼくは発売日を楽しみにまっていた一人だった。しかし、発売
1か月前になって、突然に「ライナーノーツを書いてみないか?」と依頼がきた。
ありがたい話ではあるが、最初は断ろうと考えていた。しかし内田さんが「好きな
ように書いていいよ」という言葉と、Fumiさんの「なんでもチャレンジだよ!!」という
ありがたい言葉にぼくは依頼を受けることにした。それから状況は一変し、
Fumiさんに「文章の書き方」を指導してもらい、なんとか書き上げた。
 大好きなヒットマンのことを書けたのだから、これほどハッピーなことはないと
改めてチャレンジして良かった。これはDVDにしか入ってないライナーノーツだが
VIDEOを買った人にも読んでもらいたくここに紹介しました。

 次のページからスタートする「読むレスリング・ウィズ・シャドウズ」では、映画の
ストーリーラインを紹介しているだけで、ぼくの気持ちをあまり書かないように
しました。この素晴らしい「ブレット・ハートの愛情とプライド」が、いっぱい詰まった
「レスリング・ウィズ・シャドウズ」をジックリと観てもらいたい。




 ついに日本でも「レスリング・ウィズ・シャドウズ」を目撃する日がやってきた。カナダ・トロント のハイ・ロード
プロダクションという映画会社が製作した゛ヒットマン"ブレット・ハート主演の長編 ドキュメンタリー映画である。
これまでほとんどファンの目に触れることのなかった試合会場のバック ステージ・エリア風景などのビハインド・
ザ・シーンがそっくりそのまま映しだされた大変貴重な映像 を観ることもできるが、これをレスリングビジネスの
゛暴露映画"だなんて思わないでもらいたい。 「レスリング・ウィズ・シャドウズ」は゛ヒットマン"ブレット・ハートという
人物をより深く理解 する映画なのである。

 原題を無理やり意訳しちゃえば ゛プロレスの光と影"というニュアンスになるが、もっと深く追求 すれは゛゛ブレット・
ハートが闘い続けている影"ということになる。ぼくが惚れてしまったブレット ・ハートが ゛ヒットマン" というキャラクター
を演じている向こう側で、いったいなにを感じて、なにを 伝えようとしているのかを正直に語っている。
キャラクターそのものをよく知ることではなくて、大切 なのはその奥にあるハート。レスリングに対する愛情や情熱が
大切だと「レスリング・ウィズ・シャ ドウズ」では教えてくれる。もちろん ゛フェイクではなくリアル" だということも。
 撮影開始当初は、この「レスリング・ウィズ・シャドウズ」はハート・ファミリーの歴史や ふれあいがフィルムに
収められてた。実際、映画の前半部分には家族みんなが笑顔で登場し、父スチュ ーの誕生日シーンがあり、
母ヘレンが「すべててがプロレスなのよ」と微笑む。兄キースが強かった 親父を懐かしそうに笑い、姉エリーがプロレス
一家と言われるのがイヤだったと昔を思いだす。 ブレット・ハートも自らの生い立ちから現在までをに語っている。
しかし、物語は撮影中におもわぬ 方向へと進んで行くことになる。

 撮影開始の'97年はWWFとWCWの2大メジャー団体で繰り広げられる月曜TV戦争は激しさを増し、 アメリカン・
プロレス大ブレークの要因にはなったものの、視聴率獲得のために過激な路線に 変化したのも事実。この時点では
゛視聴率対決"をわずかにリードしていたのはWCWであった。この 状況の中、WWFは大きな転換期を迎えた。
これがいまの爆発的プロレス人気の前兆だった。。 月曜TV戦争、過激な演出によって、今までアメリカン・プロレス界に
おいて根付いていたベビー フェース、ヒールという図式が崩れ、ワルでもヒーロー、正義感あるヒーローにはソッポを
向きはじめ るという現象が起こった。ヒットマンはこれまで絶対的ヒーローだった。ハート・ファウンデーション 時代に
ヒールとして活躍していた時期も多少あったが、それ以降は ゛ヒットマン" ブレット・ハート はベビーフェース一筋で10年
近く闘いつづけた。伝統的なベビーフェースは行き場を失い、ヒール転向 を決意した。

 ブレット・ハートから笑顔が消え苦悩の日々がはじまった。後戻りできないヒール道、WWFへの忠誠心、 ヒットマンが
考えるプロレスからますます離れていくWWFの過激な路線、5度目の世界王座に輝いても 笑顔はなく「なにかがちがう」と
バックステージで頭を抱え込むブレット・ハート。家族との少なす ぎる時間もまたヒットマンを苦しめる。心理描写が痛い
ほどストレートに伝わってくる。

  '97年9月ついにビンス・マクマホンがヒットマンに対して20年間契約解除という爆弾を落とした。
「カナダでベルトを落としてくれ」と頼むビンス・マクマホンに対して「それは出来ない」と拒む ブレット・ハート。
WWFで身動きがとれなくなったヒットマンは14年間在籍したWWFと決別する決意を を固めた。ブレット・ハートが望んで
WCWに移籍するのかといえばちょっとちがう。アメリカン・ プロレスにはメジャー団体は2つしかないので選択の自由がない。
結果、ブレット・ハートはWCWに 移籍することしか道は残されていなかった。

 ゛運命の日" は1997年11月9日に開催されたPPV大会「サバイバーシリーズ」。ヒットマンとして WWFを去りたいと願う
ブレット・ハートに、その日ビンス・マクマホンは「わかった」と。「これで 大丈夫だ」とヒットマン。心配する妻のジュリーは
「私はちがうような気がするの」。クライマックス ・シーンは'96年3月の「レッスルマニア12」以来、じつに18か月ぶりとなる
ショーン・マイケルズとの WWFヘビー級選手権試合。ショーン・マイケルズがシャープシューターの体勢にはいった瞬間、
試合 終了のゴング。「いったいなにが起こったんだ」という表情のヒットマン。その決定的瞬間をカメラ は克明に収めている。
映画の結末としてはこれほど劇的なラストシーンはないが、ヒットマンにとって は最悪のエンディングが待っていた。

 エピローグは「レスリング・ウィズ・シャドウズ」を観たみんなにまかせているのが、またすごい ところである。
これからきっとディープにアメリカン・プロレスと付き合うことができるだろうし、 ゛ヒットマン" ブレット・ハートを知るうえで
これ以上の映像は他にはない。プロレスに対して どのくらいの愛情とプライドを持っているかが伝わってくる素晴らしい映画だ。
゛ヒットマン" ブレット・ハートのメッセージがみんなのハートに届きますように。