覆面探偵] 3お笑い爆弾教室無料お試しページ
山本昌輝
午後一時五分、光栄高校三年一組の英語の授業中。突然、教室の前の戸が開いた。普段
は温和な担任の青山先生(四十一)が引きつった顔を出した。
「松本君、ちょっとこっちに」
松本東馬は席から立ち上がった。周りがざわめく中、不安に駆られながら教室を出た。
「何があったんですか?」
「付いて来れば分かる」
青山先生は足早に前に進んだ。東馬は急いで続いた。
「どこへ行くんですか?」
「校長室だ」
東馬はますます不安になった。覆面探偵]であることがばれてしまったのか。それで校長
先生に説教されるのか。
三階から一階に降りて、青山先生の後から校長室に入った。
「君が松本東馬君か」
机の前に座っている近藤誠校長(五十三)が上目使いで東馬をにらんだ。
「はい」
東馬はうつむいた。
「脅迫状が届いた。これを読んでみてくれたまえ」
校長が立ち上がり、東馬にB五サイズの紙を渡した。
「どうして僕に?」
東馬は突然のことに戸惑った。
「いいから読んでくれ」
「はい」
脅迫状にはこう書いてあった。
『教室に爆弾を仕掛けた。七十デシベル以上の笑いが起きなければ、爆発する。校長と三
年一組の松本東馬がコンビを組んで授業中の教室に入れ。その授業に合ったコントをやっ
て、生徒を笑わせろ。先ずは一年六組の生物の授業からだ。生物に合ったコントをやれ。
七十デシベル以下なら、爆発だ。クリアーしたら、校長のケータイに次の教室を指定する。
直ちに行け』
「無理ですよ。僕にお笑いはできません。それに授業中に二人が入ったら、どん引きです
よ。笑いどころか、何しにきやがった、という冷たい視線を浴びるに決まっています」
「泣き言を言っている場合か。わし達がコントをやって、みんなを笑わせるしかないんだ。
でないと、爆発するんだ。普通の会話が六十デシベルぐらいだから、七十デシベルは無理
な数字じゃない。明るくやっていれば、何とかなる。ネタはわしが考える。心配するな。
さあ、行こう」
「私も行きます」
「青山先生はここに残って、私からの連絡を待って下さい」
「分かりました」
校長が急いで部屋を出て、右端にある一年六組へ向かった。慌てて東馬は校長の横に並ん
だ。校長が東馬にコントのネタを教えてくれた。東馬は頭の中で練習した。
校長が勢いよく一年六組の戸を開けて、中に入った。
「校長でーす」
「東馬でーす」
「えー、今日は文化祭前日のサプライズ企画、校長と東馬の生物コントをやります」
東馬お母さん「先生、お腹の赤ちゃんを見たいんですけど」
校長医者 「はい。この画面を見て下さい。だいぶん大きくなっていますね。手を動か
していますよ」
東馬お母さん「本当だ。なになに、右手の人差し指を目の下に当てて、下に押し下げる。
アカンベーか。右手の人差し指を二回回して、手を広げる。クルクルパー
か。このー、母親をバカにして。お尻ペンペンしてやる」
東馬お母さん、股間に手を持って行く。
校長医者 「お母さん、それは入りません」
東馬お母さん「あっ、そうか」
校長医者 「赤ちゃんが何か言っていますよ。私、読唇術ができるので、代わりに言っ
て上げましょう。酒、飲み過ぎなんだよ。アル中になってしまうじゃねえ
か」
東馬お母さん「済みません」
校長医者 「タバコ、吸い過ぎなんだよ。ニコチン中毒になってしまうじゃねえか」
東馬お母さん「済みません。ちょっと待ってよ。赤ちゃんがしゃべれる訳ないじゃないの。
それって先生の私に対する悪口じゃないの」
校長医者 「済みません」
東馬お母さん「代わりに先生のお尻をペンペンしてやる」
東馬お母さん、校長のお尻を叩く。
校長医者 「ああ、気持ちいい。もっとやって」
東馬お母さん「いけませんわ。赤ちゃんが見ていますもの」
校長医者 「見られませんよ。あれっ、赤ちゃんが笑っている」
東馬お母さん「本当だ。見てたのかしら。かわいい、私の赤ちゃん」