銀河連合女王ヒミコ無料お試しページ
山本昌輝
はるか未来。六万人の観衆を集めたコンサートの帰り。トップアイドル歌手の白鳥ヒミ
コ(十八)は、彼女のマネージーの大和武(二十三)が運転する車に乗って、事務所へ向
かっていた。高速に入った。車体が宙に浮く。リニアモーターカーにように疾走して行く。
「誰か追って来るわよ。ファンの子かしら?」
ヒミコはバックミラーに映っている白の流線形の車を見た。
「パパラッチかもしれませんね。振り切ってやりましょう」
大和はスピードを上げた。前方の車を何台も追い越して行く。しかし、尚も白の車が追跡して来る。しかも二台だ。天井には赤色灯が付いている。
「前の車、停まりなさい。銀河連合パトロール隊だ!」
「銀河連合パトロール隊? 大和さん、何か悪いことやった?」
ヒミコは大和の堀の深い横顔を見詰めた。
「いいえ。とにかく停まりましょう」
大和が銀色の車を停車させると、白の車が右横に停まった。中から黒の制服を着た男が出
てきた。サイドウンドーを軽く叩いたので、それを開けた。
「白鳥ヒミコさんですね」
男が身を屈め、低い声で聞いた。
「はい」
「銀河連合パトロール隊隊長の根岸です。あなたはテロリストに狙われています。安全な
場所にお連れしますので、こちらに車に移って下さい」
「ちょっと待って下さい。どうして私がテロリストに狙われなきゃならないんですか?」
「それは後で説明しますから、早く移って下さい。ここは危険ですから」
その時、目前に青白い閃光が走り、バンパーのすぐ前が爆破した。アスファルトの破片が
フロントガラスに当たって、ひびが入った。
「キャー!」
ヒミコは頭上に両手を上げて、身を縮めた。
「さあ、早く。そちらの方も早く」
「分かりました」
ヒミコと大和は白の車に移動した。その瞬間、銀の車が爆破し、炎上した。白の車は急発
進した。両側から翼を出し、飛行モードに切り換えて、青空へ上昇した。後方から黒の円
盤状の飛行物体が追尾して来る。何十発もビームを打ち込んで来る。白の飛行船は上下左
右に方向転換して、それを交わして行く。急降下する。黒の飛行物体もビームを発しなが
ら、追って来る。もう一機の白の飛行船がその後から襲撃した。黒の飛行物体は黒煙を上
げて旋回しながら落下した。
「どうして私の命を?」
ヒミコは自分の右横に座っている百九十センチ程の根岸に聞いた。
「白鳥様は近々銀河連合の総裁、いや女王に就任されるからです。その情報がテロリスト
にも流れたのです」
「冗談ですよね。私はまだ十八歳なんですよ。どうして私が?」
「ご存知の通りこの数年銀河連合は戦争が続いています。そこで銀河連合は新しい総裁を
選んで、平和を取り戻すことにしました。激論の末、戦乱の世を静めるには、カリスマ的
な女王を立てる必要があることになりました。今こそ邪馬台国の卑弥呼のような人が必要
なのです。それが卑弥呼の子孫でいらっしゃる白鳥様です」
「そんな。私が卑弥呼の子孫だなんて。第一、卑弥呼に子供がいたなんていう歴史書はな
いはずだと思いますが」
「白鳥様は自分の秘密をすべて日記に書かれますか?」
「すべては書きませんけど・・・・・・」
「それと同じく事実がすべて歴史書に書かれているとは限りません。ここで私がつべこべ
言うよりも、直接卑弥呼女王の霊に、白鳥様が自分の子孫であることを言って頂く方が早
いでしょう。これから卑弥呼女王の霊の下にお連れします」
「嘘よ。大昔の卑弥呼女王の霊がいるなんて」
「行けば、分かります」
根岸は厳つい顔に不適な笑いを浮かべた。ヒミコは寒気がした。卑弥呼の霊がいるなんて
嘘だ。私を騙そうとしているんだ。
飛行船が大きなトンネルのような所に進入した。やがて巨大なドーム状の空間が現れた。
ドームの東西南北にあるゲートから、流線形の飛行体が離着陸している。どうやら航空基
地のようだ。飛行船が着陸した。ヒミコと大和は根岸の後に付いて行った。エレベーター
に乗り、下に降りた。地下一階から地下十三階まで行った。
ドアが開いた。廊下は緑、壁は白、天井は半透明になっている。天井から照明の光が漏
れている。しばらく行くと、白い壁に突き当たった。根岸が右横の約三センチ四方の青い
所を右手で押した。前の壁が自動ドアのように左右に開いた。何と前方の壁面に縦約五メ
ートル、横約十メートルの大画面がある。そこには縦五列、横十一列の様々な色の電光が
点いている。
「何ですか、これ?」
ヒミコは大画面の迫力に圧倒された。
「霊コンタクトです」
根岸が緊張した面持ちで、直立姿勢になった。
「霊コンタクト?」
ヒミコは引っ繰り返った声を上げた。
「はい。このハイテク機器で霊と会話をすることができるのです」
「まさか」
「本当です。霊は電気を帯びています。接触をすれば、わずかに電圧を変化させることが
できます。この原理を応用して、銀河連合は霊コンタクトを開発したのです。あの画面を
よく見て下さい。電光が五十音表のように並んでいるでしょ。霊が画面の背後で各電光の
電圧を変化させて、音声に変換させるのです。試しに、これから卑弥呼女王に語って頂き
ましょう。卑弥呼女王、お願いします」
いきなり根岸は大画面に向かってひざまずき、お辞儀をした。ヒミコは生唾を飲んで、そ
れを見た。すると、電光の一部が連続的に強く光った。少し遅れて、清らからで厳かな
声が流れてきた。