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ハゲてもいい友
山本昌輝
「あっ、俺、卓哉。今度の日曜、高校のクラス会やるんだ。陽子も来るだろ」
「なーに、いきなり。でも、久し振りね」
「だろう。大学の時以来だから、十年ぐらいになるな」
「みんな変わっちゃったでしょうね」
「ああ。きっとハゲになった奴もいるよ」
「まさか。だって私たちまだ三十二よ」
「甘いな。若ハゲが結構いるんだよ」
「卓哉もそうだったりして」
「バカ言え。俺は植えて配りたいぐらいあるよ。なあ、誰がハゲになったかかけないか」
「やだ、そんなの」
「おもしろいじゃねえか。かけようぜ」
「何かけるの」
「俺が当たったら、陽子は俺と結婚する」
「バカバカしい。まあ、それは別として、ちょっと興味あるわね。誰がハゲになったか」
「だろう。やろうぜ」
「で一体どうなったら、ハゲっていうことにするの」
「そうだな、まさか丸っパゲはいないだろうから、少しでもハゲになっていたら、ハゲと
いうことにしよう」
「ねえ、誰がっていうよりも、何人がっていうことにしない」
「よし、そうしよう。俺、四人」
「私、三人。負けたら、食事おごるのよ」
「ああ」
「じゃ、もう切るね。私、今、風呂から上がって、髪乾かしていたところなの」
「あまりドライアーかけるなよ。ハゲになるぞ」
「実は私、円形脱毛症になってるの」
「えっ、本当か。なっ、今度会ったら、見せてくれ」
「バーカ。嘘に決まってるでしょ。じゃ、またね」
電話が切れた。卓哉は、くそー、と首を曲げて言って、思わず身を乗り出してしまった体
を起こし、受話器を置いた。テレビのスイッチを入れてから、台所に行った。少し前屈み
になり、壁にかかっている鏡の前で髪を梳かした。髪は耳にかかる程度の長さで、七三に
分けてある。癖のある髪なので、ブラシで梳かさないと、パーマをかけたようになる。今
頃陽子はヘアードライアーをかけているだろう。熱風が陽子の艶のある長い髪を掻き分け
る。その隙間から、丸くて白い地肌が顔を覗かせる。卓哉はそれを想像すると、ニヤニヤ
しだした。クラス会がますます楽しみになってきた。ブラシを持つ手に力が入ったので、
慌てて髪から離した。すぐそれを目に近付けて、新しい髪の毛がゴッソリ付いていないの
を確かめると、ほっとして冷蔵庫の上に置いた。