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| No.131 | ★★★ | 2002/05/26 Sun |
デリバティブの非情な世界 リチャード・トムソン TBSブリタニカ 1999/04/30 |
デリバティブを理解するための必読書 デリバティブ(金融派生商品)を理解するためにうってつけの本が本書です。デリバティブの定義や関連する用語を実例を交えて、きわめて分かりやすく解説しています。翻訳者前田俊一氏の技量に負うところ大といえましょう。 著者はイギリスの金融ジャーナリストで、元トレーダー兼ファンド・マネジャーです。 本書の特徴を的確に言い表している一節がありますので、ご紹介します。 <本書は、デリバティブが金融システムの危機を招く理由について明らかにしようとするものであり、その対象は専門家でさえ理解できないほど猛スピードで起こっている金融革命である。規制や法システムは余りにも時代遅れのものとなり、デリバティブという新たな世界は、ルールも行動規範もほとんどない、いわば金融上の無法地帯のようなものだ>まず、デリバティブは何をどのように変えたのかということから検証していくことにしましょう。著者の見解は次の通りです。 <ただ一つはっきりしているのは、デリバティブは金融システム全体を変えたということだ。(中略)デリバティブは、市場を根本から変えた。したがって、市場の参加者である企業も個人の行動も変えてしまったのだ>そもそも、デリバティブとは何なのか、著者の説明を聞いてみることにしましょう。 <金融デリバティブは、株式や債券や商品や通貨といった原資源をもとに、あるいはこれらの資産から“派生”した金融商品である。一般的に言えば、将来の一定時点に、原資源を合意した一定の価格で売ったり、買ったりする約定のことだ> <もともとデリバティブは、リスクを軽減するために発案されたものだ> <デリバティブそのものは、悪いものではない。うまく正しく利用すれば、疑もいなくメリットがある。しかし、間違った使い方をすると、まさに銃弾を込めた銃に等しく、いつ暴発するかわからない。つまり、自衛のためにも、人を殺すためにも使えるのだ。不運なことに、後者のために使う誘惑は図り知れない>経営者に、デリバティブ理論でノーベル賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンという二人を揃えたLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が破綻したことは、私たちの記憶に新しいことです。 詳しくは、天才たちの誤算をご覧ください。 こうした事件の詳細を知ると、恐怖が先にたち、デリバティブには手を出さないほうが安全と考えがちです。 しかし、投資信託(ファンド)に投資している方々は、本人が自覚していようがいまいが、すでにデリバティブ商品に投資しているという現実に目を向けるべきでしょう。著者の次の言葉を読めば、そのことがはっきりします。 <ファンドの投資家は、ファンド・マネジャーがデリバティブに手を染めているか否かを、いったいどうやったら知ることができるのだろうか?そんなことはほぼ不可能だというのが、単純な答えだ。ファンドがデリバティブの保有について外部に提供しなければならない情報は、かなり限られている。たとえ、彼らが売買したすべてのデリバティブの詳細を提示するよう求められたとしても、それが、純粋にヘッジングのためのものなのか、それともギャンブル的なものなのかを知ることは非常に難しい>トレーダーはどのようにして儲けるのか、関心のあるところではないでしょうか。著者の見解は次の通りです。 <相場の動きの少ない市場では、トレーダーは儲けられない。まさに、ボラティリティ(注:変動幅 藤巻)こそ、富をつくる鍵である。市場が変動しているかぎり、金儲けのチャンスはある> <トレーダーは、自分でボラティリティをつくり出そうとする一方で、取引所の外部にいる投機家や企業の顧客が相場を動かしてくれることを好む>デリバティブはレバレッジ(梃子)を効かせて大きく稼ぐことができる一方で、振り子が逆に振れれば、最悪の場合、LTCMの事件のように破綻したり、個人破産することもありえます。このあたりについて、著者はどのように考えているのか見てみることにします。 <大損すると、それを取り返すため賭け金を二倍にしようとする誘惑は、別に不良トレーダー達だけに固有のものではない。貪欲は、何も彼らの専売特許ではないのだ> <一般投資家は、レバレッジを使って儲けようという誘惑から逃れられない。この誘惑に乗るように誘う人間がいるかぎり、これに乗せられて大金を差し出す人は後をたたない>デリバティブを通して、金融の世界の裏表を描いた力作です。 関連した書評 リスク 文科系にも分かる金融リスク入門 |
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