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| No.145 | ★★★ | 2002/08/11 Sun | ONとOFF 出井伸之 新潮社 2002/04/25 |
「OFF」の世界
今回取り上げる本は、以前に掲載した「出井伸之のホームページ」の続編とも言うべき本です。いわゆる「ビジネス書」とは違い、「エッセイ集」ですが、ビジネス上でもプライベートな時間の使い方という点でも役に立つヒントが数多く含まれています。 私が注目した言葉は、「危機」、「危機感」、「危機意識」あるいは「クライシスマネジメント」でした。 本書は1998年2月12日から2002年2月13日までの84回のエッセイをまとめたものです。それぞれ違う時期に書かれたものであるにも拘わらず、6カ所(個数は11)で述べられています。 1.<私は本心から危機感を感じています。「変革」ということを私が言いつづけているのは、決してトップの「変革のための変革願望」ではないのです(1999・4・16)> 2.<どの会社もソニーより時代の変革に対する認識が高く、危機感も強い。変革への取り組みが真剣で、スピードがあるということ。トップだけでなく、会社組織として共通の危機意識をもって対応しているように感じ、ソニーとの差が気になってしかたがありませんでした。ソニーは高株価や好意的なマスコミ報道もあり、社員の危機意識が薄いように思えてなりません(2000・3・15)> 3.<CEOとして如何に企業を変革させるか、つまり経営プロセスそのもののIT化については、スピードの時代だ、過去の延長線上に未来はないのだ、という危機感を如何に社員に浸透させるか、同じ悩みを持っているようでした(2000・6・20)> 4.<日本の危機、ソニーの危機 前回の総選挙の結果を受けて、自民党内の危機感は相当なものがありますし、こうした危機感を共有できている時というのは、物事は本当に速く動きます(2000・9・26)> 5.<いうなればソニーは「平和産業」であり、それは、まったく逆の流れに巻き込まれつつある。この非常事態にどう対応するかということは、リスクマネジメントの域を越えて「クライシスマネジメント」を考えなければいけないということであり、教科書にない事例であるだけに、本当に悩みます(2001・10・12)> 6.<私が仕事でもよく説明に使っている「改革のための8つのステップ」というものがあります。 これは、 @危機意識の確立 A強力なガイドチームの形成 Bビジョンの創造 Cビジョンの伝達 Dビジョンに向かって行動するように全社員を奨励 E短期的成果の計画と実行 F更なる改革の推進 G新しいアプローチの制度化 という一巡で改革を達成しようというもので、ハーバード・ビジネススクールのコッター教授が95年頃書かれた論文から見つけました(2000・5・2)> これだけ同義語が使用されていることを考えますと、著者が相当な「危機感」を抱いていることが伝わってきます。トップが常に危機感を持って経営にあたっていることは不可欠であることは言をまちませんが、重要なことは末端の社員にまでその意識が浸透しているかです。 その点で、著者出井会長は大企業となったソニーに一抹の不安を抱いているように感じられました。 「あとがきにかえて」で「OFF」の世界を持つべきであると言う、出井会長のメッセージをご紹介して、今回の書評を終了させて頂きます。 <これからの時代、会社の仕事とは関係なく外の世界とコミュニケートする「裏番組」や趣味が最も必要だと思えてなりません。いわば、「OFF」の世界です。興味さえあれば、インターネットなどを利用して個人が得られる情報の量は飛躍的に増えていて、専門家と素人の差は限りなく縮まっています。つまり、「OFF」の世界を持つか持たないかということで、知識の差がどんどん広がってしまうのです。これからの「Knowledge Society=知識社会」では、仕事のみならず生活すべての局面で、知識の根源になる「興味」のあるなしが決定的な意味を持ってくる。未知のものに率直に感動する気持ち、「センス・オブ・ワンダー」を持っているかということにもつがってくると思います> |
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