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No.148 ★★★ 2002/09/04 Wed  ローマ人の物語T ローマは一日にして成らず
 塩野七生 新潮社 1992/07/07

ローマ人の物語T ローマは一日にして成らず  塩野七生 新潮社 私たちはローマ帝国の興亡から何を学ぶべきか

書棚には、数百冊の未読の本が「未読本コーナー」に陳列されています。その「未読本コーナー」の中には、長年読みたいと思い、また読まなくてはいけない本がありました。その中の1冊が今回取り上げる塩野七生氏の「ローマ人の物語T ローマは一日にして成らず」です。

ローマの興亡は、今日の日本にも大いに参考になるはずです。1980年代の日本は飛ぶ鳥を落とす勢いを呈していました。そして「21世紀は日本の時代」と断言する人たちが国内外に多くいました。しかし、現在はどうでしょう。


今、日本はリセッション(景気後退)に喘いでいます。真因はどこにあるのでしょうか。
インターネットで外国の有識者の意見を見ている限り、不良債権問題を先送りしてきたことを主因と捉えたり、輸出(特にアメリカ向け)に依存しているためであるという論調が多く見受けられます。

デフレはモノの値段が下がることですが、賃金も上昇しませんから個人消費は増加しません。GDP(国内総生産)の6〜7割を占める個人消費が増加しなければ、GDPの成長率は伸長しません。日本が先進7カ国中最も成長率が低いことは世界にも悪影響を及ぼしています。世界第二位の経済大国といわれて久しいですが、中身はお寒いかぎりです。

さて、こうした日本の現状を鑑み、古代ローマ人はどのような行動をとり、真のリーダーたる人物たちはどのように人々を安全な場所へ導いて(リード)いったのかに非常に興味がありました。遠い昔に「世界史」を学びましたが、年を取るにつれほとんど忘れてしまいました。教科書的なローマ史ではなく、いわば「塩野七生の世界」を垣間見ることによって、新しい世界観が得られるのではないかと思います。

歴史を考える場合に、その主人公とはだれなのかという命題に,著者は次のように明快に答えています。
<後世から見れば歴史的必然と見えることのほとんどは、当時では偶然にすぎなかったのだ。その偶然を必然に変えたのは、多くの場合人間である。ゆえに、歴史の主人公は、あくまでも人間なのである>

日本人とローマ人との類似点を次のように指摘しています。
<ローマ人は、本来的に農牧民族である。彼らにとって、財産といえば土地しか意味しなかった。そして、これほども土地を重視する人々にとっては、配分を受けるならどこでもよいということにはならない。土地には、豊かな土地と貧しい土地がある>

では、ローマ人の特質は何でしょうか?
<古代から現代にいたるまで、歴史家たちがこぞって認めるローマ人の特質の一つは、敗北を喫してもその害を最小限にとどめる才能と、勝てば勝ったで、その勝利を最大限に活用する才能である>

<歴史の主人公である人間に問われるのは、悪しき偶然はなるべく早期に処理することで脱却し、良き偶然は必然にもっていく能力ではないだろうか。多くの面で遅咲きの感のあるローマ人が、他の民族と比べて優れていたとしてもよいのは、この面での才能ではなかったかと思われる>

<知力ではギリシャ人に劣り、体力ではケルト(ガリア)やゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣っていたローマ人が、これらの民族に優れていた点は、何よりもまず、彼らのもっていた解放的な性向にあったのではないだろうか。ローマ人の真のアイデンティティを求めるとすれば、それはこの開放性ではなかったか>

ローマから日本を見るという壮大な試みを続けている著者、塩野七生氏の確かな眼力と圧倒的な筆力は、第二巻以降も続けて読んでみたいという気持ちに拍車をかけるものです。必読書の一冊です。

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