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No.149 ★★★ 2002/09/12 Thu  中国シフト  大前研一 小学館 2002/07/20

中国ビジネスの現状

中国シフト  大前研一 小学館 今回から2回にわたり、大前研一の「中国レポート」とも言うべき『中国シフト』(小学館)と『チャイナ・インパクト』(講談社)を取り上げます。

先ず、『中国シフト』を見てみることにしましょう。
中国事情に疎い私には初めて知ることばかりで、中国に目を向ける機会を提供してくれました。

著者の主張は、中国ビジネスの中心はもはや北京にはなく、上海、大連、深圳、蘇州等の海岸線沿いの地域にあるということです。そして、今後ますますその地域が発展していく可能性が高いということです。


冒頭で、著者は大胆な予想を披露しています。
<近い将来、おそらく2010年までに、中国と日本の間は完全にシームレス(継ぎ目なし)になり、中国は日本の「国内市場」になるだろう>

その根拠は1990年代後半に起きた物流革命にあるとしています。
<商品を産地から消費者までシームレスに届ける物流システムのネットワークが世界中に広がったのである>

しかも、<物流革命とITは無限につながっている>からだとも主張しています。
<『Fedex(フェデラル・エクスプレス)』は、インターネットのサイトを見れば、24時間いつでも自分が注文したパーセル(小包)がいまどこにあるのかわかる。あるいは、香港や中国、オーストラリアなどの産地では通関インフラや港湾インフラが急速にシームレスになり、ほとんどの輸出入手続きがインターネット経由でできるようになった>

この本の中で先ごろ西友を傘下に入れた『ウォルマート』について述べている個所があります。
<雑貨やアパレル関係に関しては「日本人はこんなものを好むかな?」と首をかしげる商品が多い>

<日本の消費者には『ウォルマート』よりも『ターゲット』のほうが合っていると思う。低価格路線で低所得層を押さえている『ウォルマート』に対して、『ターゲット』は中級イメージを維持しているからだ>

<『ウォルマート』も『ターゲット』も全商品の40%を中国で調達している>

ここで取り上げられている『ターゲット』は全く聞いたことがありませんでした。『ウォルマート』に次いで2位だった『Kマート』が倒産し、<アメリカのディスカウントストア業界第2位の売上げを誇る>『ターゲット』が『ウォルマート』の対抗馬になったということです。

中国に対する認識を改め直さなくてはならない事実があります。著者の発言を見てみることにしましょう。
<すでに実質的な貿易量(輸出入量の合計)では中国が日本を抜き、1位のアメリカ、2位のドイツに次いで3位になっている。中国は日本にとっても、アメリカにとっても、韓国にとっても、もちろん台湾にとっても最大の貿易相手国になっている。海外からの投資にいたっては、中国は日本の10倍も受け入れている>

今、大連では日本語を勉強する中国人が増えているそうです。
その理由は、
<大連では日本語ができると給料が3割ぎらい高くなるため、みんな日系企業への就職をめざし、先を競って日本語を勉強している>からです。

著者が大連と遼寧省に対してある提案をしたことが、この話の伏線になっているのではと考えられる事実があります。
<私(大前研一)が、日本語による間接業務やコールセンターに着目すれば新しいビジネスチャンスがたくさん生まれる、という提案をした。これは彼らから見たら目からウロコというか、全く想定していなかったビジネスだったと思う。しかし、日本語を軸にしてやっていけば、華南地域には真似のできない大連と遼寧省独自の強みが出てくると言うことで、急に彼らの頭の中でアイデアの回路がつながった>

私たち日本人にとって気になる話が書かれています。以前は日本を目標にして、日本に追いつけ、追い越せ―戦後の日本がアメリカを初めとする西洋先進国に「追いつけ、追い越せ」の合言葉で、個人を殺し、組織力で勝負し、高度成長を成し遂げました―の意識が漲っていたことが嘘のような話です。
<最近、中国の識者や経営者の間では「日本の失敗を研究しよう」という議論が出てきている。日本はあれほど繁栄していたのに、なぜ、この10年で急に没落してしまったのか?同じ轍は踏みたくない、明日は我が身と思って日本が失敗した理由を研究することが重要だ、と言うのである。これまで、そういう議論は聞いたことがなかった。ずっとアジアの「雁行モデル」の先頭を飛ぶ雁が音・日本の成功の理由を研究して追いつけ追い越せだった。それがいまや反面教師にしなければならない、となったのだから、日本もおちぶれたものである>

高度成長期の日本と現代の中国がダブって見えてきますが、現在の日本と中国とでは大きな違いがあります。
人口比では、1億2千5百万人の日本に対し、中国は日本の10倍の12億5千万人を擁しています。少子高齢化が急速に進む日本に対し、中国はまだ高齢化は進んでいません。一方、これ以上の人口増加を抑えるために、「一人っ子」政策を推進していますが。
もう一つは上海や大連など大きな成長が見込まれる都市が多くあることです。日本にはこれらの都市に匹敵する都市は新しく出現していません。

今回の現地取材を含めた、大前研一の「中国レポート」は、将来に不安のある日本の行く末と中国の躍進という対比を浮き彫りにしています。

最後に、著者から日本の将来を担う若者たちへのメッセージがあります。このメッセージを正面から受け止めて、行動につなげていってもらえれば、日本は再生できると確信します。
<活力は若い人々が競争して、より強力な事業を起こそうと走り始めなくては出てこない。世界一のスピードで高齢化の進む日本は、世界一のスピードで秩序回復しなければ膠(にかわ)のように固まってしまうのが目に見えているのだ。だからこそ秩序破壊なしに日本が再生することは不可能なのだ>

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