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| No.157 | ★★★ | 2002/11/10 Sun |
V字回復の経営 三枝匡 日本経済新聞社 2001/09/17 |
2年で会社を変えられますか今年(2002年)6月、ミスミの社長に就任した三枝匡氏の本です。 三枝氏は長年経営コンサルタントとして会社を指導したり(外部からアドバイス)、あるいは不振会社の経営者に就任し再建する(内部から改革)という多くの実績を残しました。 三枝氏がミスミの社長を引き受けた理由をミスミのホームページの中で述べています。 <30代で赤字会社2社の再建という仕事に巡り会い、その後この16年間はターンアラウンド・スペシャリストとして不振会社の再建を請負う形でさまざまな会社に関わってきました。ところが、50代を迎えた頃から次から次と人の会社の再建をやるよりも、もし機会があれば自分の経験と情熱をひとつの会社づくりに注ぎ込んでみたいという気持が強くなっていたのです。そこにたまたまミスミとの出会いがありました> 三枝氏の経歴を先に紹介した理由は、2つあります。ひとつは、本書が「実話をもとにした企業変革ドラマ」だからです。 いわゆる理論だけの本ではありません。 ここには三枝氏が不振会社の再建に苦労した様が赤裸々に描かれています。もちろん、コンサルタントとしてクライアントに対する守秘義務がありますから実際に関わった数社の出来事を混ぜ、どこの会社か分からないような配慮がなされています。しかし、読む人が読めば「こことここの会社のことだな」と推定できるかもしれませんが、それは重要なことではありません。 もう一つの理由は、今年ミスミの社長に就任し、創業者田口弘氏に代わってどのようにミスミを変えていくのか興味があるからです。 本書で不振会社(沈滞企業)には「共通点がある」と指摘していますがこれはきわめて重要なことです。 それがどのようなものなのか見ていくことにしましょう。 (1)<「企業戦略の最大の敵は、組織内部の政治性である」。自分の体験から得たこの教訓を痛感する状況に、人生の中で何度、遭遇したことだろう。ここで言う組織の政治性とは、会社の中の派閥のような話ではない。一緒に飲めばとても楽しく、性格もよい普通の社員が、危機感の欠如と変化への恐れから、新しい変革に背を向け、身の安全を図るのである。そのため企業を変えようとする努力は社内のあちこちで骨抜きになり、結果的に業績回復や体質変化が遅れてしまう> (2)<とりわけ必死に働くべき不振企業の社員ほどノンビリしている。そのくせ狭い社内で政治性を発揮することだけは得意だ。余剰人員を抱えているうえに社員がこの状態では、会社が元気になるわけがない> (3)<経営者が「改革は血が流れる」「危機」「正念場」「最後の勝負」「あとがない」といった言葉を口にしたところで、その人が本当に改革推進者とは限らない> (4)<激しい議論は、成長企業の社内ではよく見られるが、沈滞企業では大人げないと思われている。情熱を持って突き進む者がしばしば「青い」と疎まれる> (5)<トップが社内の人望を集め、周囲の役員やスタッフが批判される構図は、それ自体が病気の現象である。トップが自らハンズオン(現場主義)の経営スタイルをとらない限り、組織の危機感を保つことはできない。しかしそうすれば、トップが温かな人気者であり続けることはない> (6)<重要なことだが、スターやエリート層がいない組織で変革は絶対に起きない。エリートとは「選ばれた者」というよりも、「集団への責任を自覚した者たち」と解すべきなのだ> (7)<やたらと出席者の多い大会議。ダメ会社症候群の典型。出席者を減らすと「自分は聞いていない」「関係ない」と拗ねる者が出てくる。リーダーシップの弱い組織の特徴だ> (8)<商品別損益がボトムラインで語られていない。担当者レベルの「赤字に鈍感」の集合体が組織全体の危機感不足を構成している> (9)<不振企業の共通現象は、トップも社員も表層的な数字ばかりを追いかけて、議論が現場の実態に迫っていないこと> (10)<大きな市場を少人数の営業マンで効率よく攻めなければならないのに、「絞り」「セグメンテーション」の考え方が足りない> (11)<経営レベルで抜本的に構造を変えなければ直しようがないものを、個人や狭い職場の改善に話をすり替える人が多い> (12)<幹部の経営リテラシー(読み書き能力)が不足している。社内力学に流されやすいのはこのせいである> (13)<組織を変革していくためには、社員が共有できる「コンセプト」「理論」「ツール」などを経営トップが提示できることが重要である。もちろん明快で強力なものでなければならない> (14)<経営改革において「組織の再構築」と「戦略の見直し」はワンセットで検討することが不可欠である。現実には、組織をいじり回すことを先行させてしまう経営者が圧倒的に多い> (15)<「強烈な反省論」は、イコール「改革シナリオ」の出発点である。経営幹部や社員が反省論に共鳴すればするほど、彼らは改革に向けて結集していく> (16)<赤字には「将来が楽しみな赤字」と「悪性の赤字」の二種類がある。再生の道がないと確認した悪性赤字事業は、恥も外聞もなく早期に撤収するのが王道である> (17)<沈滞企業の社員は外部競争に鈍感なばかりか、内部競争の悔しさや痛みを感じる機会が少ない。元気な組織とは感情の起伏が激しい組織であり、褒められたり、悔しかったり、痛かったりを豊富に体験させる組織である> これらの指摘はどれも肯けることばかりではないでしょうか。 エピローグに次の一節があります。 <経営組織の改革とは、正しいと思われることを、「愚直」に必死になってやり通すことである。それには先頭に立つ人の果てしない情熱の投入が必要である> 三枝氏は社長としてミスミをどのようにしたいのか、ミスミのホームページの中で述べていますのでご紹介します。実は本書の中に同内容のことが書かれているからです。 ミスミのホームページの中で <経営とはつまるところトップ経営者の「高い志」と「魂の伝授」ですから、私のすべてをこの会社に注ぎ込んでいきたい> 本書の中で <ストーリーの最後の<星鉄也の話>に「改革とは『魂の伝授』である」「経営者にとってもっとも需要なのは『高い志』である」という言葉が出てくる。これは私の言葉ではない。ある上場企業で数年前に経営改革が行われたとき、幹部のさぼりや陰湿な抵抗に遭いながら満身創痍で動き回った改革チームのメンバーのひとりが、今回本書のために寄せてくれた文章の一節である> 関連する書評 トヨタ式最強の経営 なぜトヨタは変わり続けるのか 柴田昌治+金田秀治 日本経済新聞社 カルロス・ゴーンが「日産リバイバルプラン(NRP)」を掲げ、日産復活を成し遂げたことは衆目の一致するところです。 この日産復活への道程が、三枝氏が関わった不振会社が見違えるほどの業績向上を見せた様と軌を一にしていたというくだりがあります。 そこで、ぜひ次の書評も参照していただきたいと思います。 ルネッサンス カルロス・ゴーン ダイヤモンド社 (2002/11/12 Tue 補足) |
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