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| No.167 | ★★★ | 2003/02/02 Sun | 中華連邦 大前研一 PHP研究所 2002/11/20 |
台湾から明日の中国が見える本書『中華連邦』は、『チャイナ・インパクト』(講談社 2002/03/29)、『中国シフト』(小学館 2002/07/20)に続く「中国三部作」の最新作です。 大前研一の本の特徴の1つは、経験に裏打ちされたものであるということです。この本も多くの人に説得力を持ち得るのは、長年李登輝前総統率いる台湾のアドバイザーを務め、「中国と台湾の問題」について直接係わってきた実績があるからです。 この本の特徴を1つ挙げるとすれば、サブタイトルにあるように台湾の現状を見ると明日の中国が見えてくるという点です。私が知る限り、この視点が類書との決定的な違いといえます。 いつものことながら、大前研一の「世界の見方・考え方」には舌を巻きます。発想の違いと言ってしまえばそれまでですが、その点こそが私たち凡人との大きな相違点です。 大前研一の本を読み出してから20年くらいになりますが、ようやく大前流の「世界の見方・考え方」の一部がわかるようになってきました。 大前研一がすごいと思うのは、単なるコンサルタントではないということです。マッキンゼー時代に培った経営ノウハウを自らの会社経営にも適用し、「理論と実践」を通じて実績を積んでいることです。 さらに、成果を上げたことに甘んじることなく、常に向学心を持ち続けていることです。 私たちは言うこととやることがしばしば矛盾することがありますが、大前研一のようなプロのコンサルタントには許されないことです。 評論家には、理論はりっぱでも実践できない人たちがいます。無責任な発言を繰り返し、以前に言っていたこととまったく違うことを、断ることなく平気で展開する人がいてがっかりさせられたことが何度もあります。 結局、どのような発言をしたり、どんな内容の本を書いても責任を問われることがないからでしょう。 大前研一は以前に述べたことが間違っていたとわかれば、素直に間違いを認め、その上で多くの新しい情報を加えて発言しています。そうした態度が私には潔く、また快く感じられるのです。 さて、本書の内容をみていくことにしましょう。 この本のキーワードを1つ選ぶとすると、それは「リージョン・ステート(地域国家:注 藤巻)」です。 <ボーダーレス・ワールドが時代の潮流であるならば、「リージョン・ステート」という視点で世界地図を眺めてみる必要もあろう。国家という単位にこだわる必然性も薄れてくる。つまり、世界で経済的に繁栄しているところは、ほとんどが世界中から人、モノ、企業、情報の押し寄せる地域国家(巨大都市)である> 地域国家論という同著者による名著がありますので、ぜひご参照ください。大前研一を知るための1冊です。 そもそも「中華連邦」というコンセプトはどのようにして生まれたかについて述べています。 <私は、中国を1つの大きな国と考えるよりも、いくつもの地域が集まってできた「中華連邦」と考えたほうがいいと思っている。つまり、現在の中国は、アメリカ合衆国と同じような統治機構になっているというのが私の説である> この説の前提となるのは、中国が大きく6つの地域に分かれはじめていると著者は見ているからです。 その6つの地域とは― <@上海を中心とする「長江デルタ」、A北京と天津を結ぶ「北京・天津回廊」、B大連を代表とする「東北三省」、C青島・煙台を中心とした「山東省」、D深圳から広州にいたる「珠江デルタ」、E厦門・福州を中心とする「福建省」である> この本は、中国との関係次第で台湾の生きる道はあるのかという視点で書かれていますが、中国との競争が不可避な日本にとっても他人事ではありません。 この問題について、「中国シフト」という言葉で表現しています。 <「中国シフト」とは、「単に生産基地を中国に移すことではなく、日本人の生活の質を上げてコストを下げる」価値観の大転換を意味する。つまり、空洞化は大歓迎であって、意欲的な経営者のいる産業はつぶれることはない。どんどん出せるものは海外に出して、残った分野を競争力のあるものにする。そこに、付加価値が生まれ、日本経済活性化の原動力になる> 著者によれば、台湾は中国とすでに「小三通」を暗黙の了解で行なっているということです。 <台湾と大陸との全体的な「通商」「通信」「通航」を「大三通」というのに対して、台湾の離島部(金門島と馬祖列島)と大陸の福建省との間など、一部地域に限定された往来を「小三通」と呼んでいる。台湾当局は、香港を除き(香港は特別行政地区として他の一般国同様の取り扱いを認めている)、中国大陸各港との直接往来や貿易取引を認めていない。(中略)2001年に入ってから、台湾当局は「小三通」を認めた。とはいっても、現在は香港経由か、台北から日本を経由して大陸に入るのが一般的である> 著者が「中華連邦」というコンセプトを唱えたのは、実は十数年前に遡るそうです。 <私は十数年前、「中華連邦説」を唱えて、大陸とうまくやっていくためには「中華連邦」という概念をつくり、その中の1つに「地域国家としての台湾」「地域国家としての香港」があり、地域国家として中国がいくつかに分かれて、北京が盟主になればよい、と台湾政府にアドバイスしたことがある。(中略)英連邦のように、オーストラリアやカナダがあっても、英連邦というかたちでまとまっていく方法もある> 著者はこの本の中で大胆な予想をしています。 中台統一が2005年に実現するのではないかというものです。 その根拠は次の通りです。 <中国と台湾は共通の利害があるのだし、もともと同胞なのだから、「中華思想でまとまった1つの連邦国家を建設しましょう」「中華人の中華連邦をつくりましょう」ということである。(中略)祖国統一の時期だが、2008年の北京オリンピックの前後だとあまりおめでたい感じがしなくなるので、2008年までのどこか中間地点に目標を設定しているという可能性がある。私はそれは2005年だと予想している> 中台統一が2005年に実現するということが現実味を帯びてきたと思うのは私だけでしょうか。 あなたもこの本をお読みになり、実現の可否をお考えになってください。 最後に、大前研一の次の言葉で締めくくりたいと思います。 <経済的な要因から事実上の地域国家が生まれ、「中華連邦」の方向に進んでいくのは歴史的な必然であろう> |
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