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No.176 ★★★ 2003/04/20 Sun  ビジネス・ウェポン  大前研一 小学館 2002/12/20

ビジネス・ウェポン  大前研一 小学館 大前研一最大の武器(ウェポン)は論理力と創造力

久々に大前研一の本を取り上げます。この本はサラリーマンサバイバルシリーズの1冊で、『サラリーマン・サバイバル』、『サラリーマン・リカバリー』、『サラリーマンIT道場』に続く第4弾です。大前研一の武器とは何かが明示されています。と同時に私たちもぜひ身につけたい「武器」です。

「プロローグ」で、この本の目的を次のように述べています。
<問題の本質はどこにあるのか? どうしたら問題を解決できるのか? 最近の事例を取り上げながら、TVや大新聞では見えてこなかった真実をお伝えすることが、本書の第1の目的である。また、私が取り上げて批判したり、代案を示したりした事例を読んで、みなさんが自分自身の頭で考えるきっかけにすることが第2の目的である>

このサラリーマンサバイバルシリーズを通じて、その底流に流れている考えは次のことです。
<リストラされない努力よりも、たとえリストラされても生きていける、稼いでいける実力を身につける努力をするべきだ>

大前研一が考えるビジネス・ウェポンとは何かを知りたいでしょう。それは次の概念に集約されます。
<サラリーマンもとって最強の「ビジネス・ウェポン」は論理力と創造力である。その具体的なツールとしては「問題解決法(PSA=Problem Solving Approach)」がある。しかし、日本のサラリーマンで世界に通用する論理力と創造力、すなわちビジネス・ウェポンを身につけている人は極めて少ないのが現状だ>

私たちサラリーマンが誤解していることは「ボス」の言うことが絶対であると思い込んでいることです。それは間違っていると理由を明示して指摘しています。
<ビジネスでは「真実」がボスの言うことよりも上位概念である。日本企業が競争力を落としてきているのは、集団として問題解決能力を失ってしまったからだ。最盛期には、西欧に「追いつけ追い越せ」で答えが用意されていた。しかもその当時はQC(品質管理)などの分野では、事実(ファクト)に基づく問題解決法が幅広く企業に浸透していた。もう1つよくあるパターンは公開情報を真実と混同してしまうことである>

では、ビジネス・ウェポンを身につけるにはどうしたらよいのでしょうか?
<私が発想を磨く時は、自分を人の立場に置き換えて考える。自分がソニーの会長だったらどうするか、日本の首相だったらどうするか、と考えてみるのだ。これは頭の訓練としては非常に重要かつ効果的な方法である。(中略)また、私は、みんなが「答えはこうですよ」と言っていても、「そうだな」とは絶対に思わない。自分が本当に答えはこうだと確信できるだけの証拠が出るまで、事実を調べ続ける。そういう単純な態度を毎日続けていれば、ビジネス・ウェポンはおのずと身につくものだ>

こうした単純な(決して単純ではないと思いますが)態度を毎日続けてみましょう! いつかビジネス・ウェポンが身につくかもしれません。

私は、上司と衝突することが多く、日本の平均的サラリーマンからすると失格かもしれません。

しかし、右肩上がりの時代が終焉した今、大前研一が指摘する次のような事実には、上司の顔色をうかがうのはもういいかげんに止めたらどうですかと言いたくなります。
<常に直属の上司の顔色やその上司と対立している別の上司の様子をうかがいながら、自分の立場をできるだけ傷つけないように立ち回る、という発想しかできない。そういうサラリーマン生活を10年、20年続けるとそれが習い性になり、あとから入ってきた若い人たちもそれを真似するから、組織全体が変革することや新しいことを拒む体質になってしまう>

著者が生き残ってきた秘訣を吐露しています。
<決して知的に怠惰にならない態度をとり続けてきたことが、私が知的社会で生き残ってきた秘訣ひけつの1つだと思う>

著者の本を読んでいると、よく出てくる言葉にパスファインダーがあります。
<マッキンゼーでは、求める人材の資質を「シェイカーズ&シェイパーズ」という言い方で表現する。まずは揺すって(シェイクして)ふるいものを削ぎ落とし、それから新しいものの形を作る(シェイプする)という意味である。パスファインダー(道なき道を見つける人)という言い方もできるだろう。つまり、知的にタフな人間しかマッキンゼーでは通用しないのだ>

次の指摘は私たちサラリーマンには痛いところを突かれた、と感じるのではないでしょうか。
<いま日本人に最も欠けているものは、前例のない問題に直面した時に、それを解決していく力である。具体的に言えば、ロジカル・シンキング(論理思考)とそれを土台にした問題解決法(PSA=Problem Solving Approach)のスキルである>

ロジカル・シンキングについて詳しくみていくことにしましょう。
<ロジカル・シンキングとは、様々な事象の複雑な関係を収集した情報を論理的に正しく理解し、自らの思考を論理的に整理・構成するための技術である。その基本は2つある。1つはアリストテレスの論理学で言うところの「A=B、B=CであればA=Cである」という論理構築だ。(中略)もう1つは「足して100になる議論をする」ことだ。AとBを足せば全体像になり、それ以外に漏れもなければ重複もない、という理論構造の論議である>

すでにおわかりのように、前者は三段論法であり、後者はMECE(=Mutually Exclusive Collectively Exhaustive、漏れなくダブリなし)のことを指しています。

はじめて使う言葉は定義してから使用するというのは、その人の見識の問題ですが、このことは案外疎かにされています。社内文書の中でもよく見かけられます。大前研一が指摘していることは、言葉ではなく問題の定義がなされていないというものですが、「定義の重要性」はもっと注目されていいはずです。
<問題解決法の第一歩は問題を定義することなのである。しかし日本の学校では、まず問題を定義する、ということを教えない。先生が問題を出してしまうからである。そして生徒は参考書や虎の巻とらのまき(教科書ガイド)を見て答えを丸暗記する。だが、日本の社会人に学校で習ったことのうち、世の中に出てから何を使ったか質問してみればいい。「対数を使ったか?」「ピタゴラスの定理を使ったか?」と。おそらく90%以上の人は、加減乗除の計算以外は1度も使ったことがないはずだ。それが社会というものである>

ロジカル・シンキングだけではダメであると大前研一は述べています。
<ロジカル・シンキングが役に立つのは答えの範囲を狭めていく時であり、答えを見つける時には役に立たないのだ。誰も知らない答えを見つけるためには、ロジカルの対義語にあたるようなインテュイション(intuition=直観)やイマジネーション(imagination=想像力)を使わねばならないからである>

管理職の方々にとって次の指摘は当たり前と取るか、これはまずいと感じるかで大きな違いがありますがあなたはどうですか?少なくとも私のサイトにアクセスしてくださっている方々は心配いらないと思います。
<世界のトップ企業で、パソコンを使えない管理職が生き残っているところは皆無である。それは何も欧米の企業だけではなく、韓国や東南アジアの企業でも同じだ。(中略)パソコンを使えない幹部がいる企業は、遅かれ早かれ競争力を失うだろうし、また、ITを十分に使えない人は幹部にはなれないだろう>

次の指摘は他人事ではないと痛感しています。
<社内で情報断絶した人は、社外ではなおさら情報から隔離される。そうなったら、やがて始まる肩たたきの時代には、まともな生活さえできない。だから、会社が給料を払ってくれているうちに、独立しても困らないだけのITスキルを身につけておくべきなのだ>

最後に、大前研一の次の言葉で今回の書評を締めくくりたいと思います。
<サイレント・マジョリティ(もの言わぬ大衆)と軽んじられてきたサラリーマンもビジネス・ウェポンで武装し、自分の人生、家族、会社を守ってもらいたい。そのための投資がいまほどリターン(見返り)を生む時はない>



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