QUANTUM LEAPS
今回は、
『ONとOFF』に続き、ソニー株式会社会長兼CEO出井伸之氏の本を取り上げます。予定ではもう少し早く書評を掲載するはずでしたが、急遽掲載する本がありました関係で延び延びになっていました。
4月にはソニーの業績下降修正の発表があり、株価が急落する場面がありました。ソニー株の下落を受け、連想で電器業界の株式が下落する、いわゆる「ソニーショック」に見舞われました。ここにきてようやく市場は落ち着きを取り戻しつつあります。私も保有している(単位株にも満たないごく一部ですが)主力国際優良株の「ソニー」には奮起してもらいたいと思います。
さて、本題に入ります。
まず、この本はどのようなものなのか著者に語ってもらうことにしましょう。
<本書は、私が社長に就任した1995年から現在に至るまで、ソニーの内外に向けて発信してきたスピーチをまとめなおしたものです。今の時代を混迷の時代としてとらえ、それ故の変革の必要性、方向性を主に述べているスピーチを選びました>
『ONとOFF』の中では「危機」「危機感」「危機意識」「クライシスマネジメント」がキーワードになっていました。
この本のキーワードは何か探っていきますと、変革や革新、変化という言葉に遭遇します。この変革や革新は「危機感」や「危機意識」が末端の社員にまで浸透してはじめて可能になるものと考えられます。
その意味で、本書『非連続の時代』は『ONとOFF』の続編と捉えることもできます。
変革という言葉が使われている個所を見てみることにしましょう。
<工業化社会から知識社会への転換期において、国家、企業、個人のあらゆるレベルでの変革が求められているのです。今はまだはっきりとした形が見えない、しかし確実に迫り来る危機を定義し、進むべき方向性、つまり明確なビジョンを示すこと、そして具体的なアクションへとつなげていくことが重要なのだと考えています>
<近代日本のまず第1の変革は、明治維新。これで日本は近代国家になりました。ペリーの黒船来航が1853年、明治維新は1868年。日本は外圧によって大変革を成し遂げたと言われています。(中略)第2の変革期は、第二次大戦の終戦を迎えた1945年。これは我々にとって、一つの大きな区切りとなりました。明治維新と同じく、終戦による様々な変革も、外圧によって行なわれたとも言えるかもしれません。(中略)そしていま、第3の変革が起こっている。しかし、今回は、いったい何が変化点か極めてわかりにくい。変化した事実を、殆ど誰もリアリティをもって感じていないんですね。(中略)このみえない第三の変革―それが、デジタル革命です>
<混乱を恐れていては漸次的な進歩はあるとしても、非連続の革新は決してない>
次の文章の中で、出井氏はジレンマに苛まれていた心境を吐露しています。社長の孤独さを象徴しているような文章です。
<社長に就任してからの4年間、ソニーを変革するために努めてきましたが、日々感じるのは、いかに自己変革が難しいかということ。自分で自分を変えるということは、これまでの自分の成功体験、慣れ親しんだやり方を否定しなければならないということで、たいへん辛い作業です>
<しかし、変化しなければ先はないのです。6500万年前の恐竜のように新しい環境に対応できず絶滅に向かうか、それとも新しい環境に適した哺乳類として、更なる繁栄を迎えるのか、今行っていることが将来の行方を決めるのです。インターネットという隕石によってもたらされる転機を好機ととらえることが重要だと思います>
<私が好きなインターネットがらみの小話で、隕石の話があります。これは方々に書いたり喋ったりしたので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、要するに、約6500万年前に巨大隕石がメキシコのユカタン半島に落ち、急激な環境変化にまったく対応できなくなった地球上の恐竜が絶滅してしまった。現在において、この隕石に相当するのがインターネットだという話です>
<インターネットという隕石が落ちてきたので、我々企業や国も自ら変化していかないと、恐竜みたいに滅びてしまう。ただ幸いなことに、この隕石はまだ比較的小さい規模です。なぜなら、まだまだナローバンドのインターネットだからです。それが将来、ブロードバンドのインターネットになると、もっとすごい勢いで変化が要求されるかもしれない。そんな大きな隕石が落ちてくることが予想される>
<私は日本には、3つの側面があると考えています。1つめは、政治家と官僚が支配する日本。2つめは、政府に規制され、同時に政府の保護を受けている、主に国内市場を相手にする日本です。つまり銀行、保険、建設、電力、ガス、通信などの産業です。3つめが、トヨタやソニーを初めとする、輸出型製造業の日本です。第1と第2の日本は、大きな問題を抱えています。政府の財政赤字は拡大する一方ですし、金融機関は不良債権問題に苦しんでいます。2つの日本は戦後復興の成功体験に安住し、変革を嫌ったのです>
変革を訴えていたことは明らかです。
最後に、「QUALIA」についてご紹介します。
その理由は<「QUALIA」はソニーがソニーである証なのです>と著者が述べているからです。本当に書きたかったことは、この「QUALIA」についてではなかったのかとさえ感じられます。
「クオリア」という言葉に初めて出会ったときの感動を次のように書いています。
<記事によれば「クオリア」とは、数字や数式では表せない、赤色の赤い感じといった感覚を構成する「質感」のことで、脳を含めた物質の物理的記述と、私たちの心が持つさまざまな属性との間にあるギャップを象徴する概念だと説明されていました。そのとき直感的に感じたのは、この領域こそソニーが創業時から取り組んできたことではないかということでした。数値では表すことのできない脳や心の動き。人間の原始的な感覚に訴える感動。ソニーは、そんな感動を生み出すためにさまざまな商品やサービスを世に送り出してきたのではないか、と気づいたのです>
また、このようにも書いています。
<クオリアこそ、目で見て、手で触れて喜びを感じるような、心の琴線に触れる何かを創り出すというソニー・スピリットの原点であり、グループ全体で追求すべきミッションではないでしょうか>
<クオリアは人に一生忘れない記憶を残します。そんな感覚、経験、記憶、そして「幸せ感」を求めて「かたち」にし、人の心に驚きと感動を残していくことこそ、ソニーの本質ではないでしょうか>
感性という一言では言い表せない何か―。間違いを恐れずに言いますと、「アナログとデジタルの融合」もその1つなのではないかとふと思いました。パソコンのブランドVAIOはまさに「アナログとデジタルの融合」を目指した「作品」です。
「クオリア」については蘇れソニー・スピリッツ 日経ビジネスもご参照ください。
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