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No.187 ★★★ 2003/08/09 Sat  クライシス・マネジメント  アイアン・ミトロフ
 徳間書店 2001/10/31

クライシス・マネジメント  アイアン・ミトロフ 徳間書店 米同時多発テロから企業は何を学ぶべきか?

世界を恐怖のどん底に陥れたあの日がまもなくやってきます。

あの日とは、2001年9月11日に米国内で起こった民間航空機ハイジャックとその旅客機を世界貿易センタービルへ激突させ多くの犠牲者を出したテロ事件のあった日のことです。それは単独テロ事件ではなく、同時多発テロでした。

時の経つのは早いもので、あと1カ月ほどで丸2年になります。


この事件をきっかけに「クライシス・マネジメント」の重要性が認識され、この分野の第一人者であるアイアン・ミトロフ氏によった著されたのが本書です。

アイアン・ミトロフ氏は、南カリフォルニア大学マーシャル・スクール・オブ・ビジネス教授で、コンプリヘンシブ・クライシス・マネジメント社の社長でもあり、コカ・コーラ、ゼネラル・モーターズなどの大手企業で危機管理のコンサルタントも務めているそうです。(裏表紙の「著者紹介」より)

ミトロフ教授は「日本語版への序」で、<今回の悲劇から少なくとも3つの重要な教訓を得ることができる>と述べています。それらに意外感を持たれることでしょう。私もそうでした。その3つとは―
<1 今回の悲劇は常軌を逸した幻覚のようなものだという考えは、完全にぬぐい去る必要がある。それは幻覚ではない。実際、悲劇は行き当たりばったりに起こってはいない。(中略)
 2 今日の世界では、人為的危機が、規模と重要さにおいて自然災害に劣らない場合が想定される。このような状況は人類の歴史においてはまったく未曾有みぞうのことだ。(中略)
 3 米国が地球上で最もすぐれた危機対応システムを持っているのは疑いようもないことである。同時につらいことだが、我々がすぐれた危機予知、準備システムを持っていない、ということは認めざるを得ない。我々の科学技術は非常にすぐれているが、危機予知の組織はすぐれていない。個々の政府機関や団体、例えば、FBI、FAA、CIA、軍隊、その他はそれぞれ非常に有能であろうが、これが相互の協力、情報交換などになると議論の余地がある>

さらにこうした教訓から学ぶべきことを次のように述べています。
<こうした教訓から我々が本当に学ぶなら、今回の悲劇は真の意味で我々に対する“目覚ましコール”となるであろう。「危機が発生する前に、すべての効果的な手を手遅れにならないように打つべく、そのためのシステム作りをする」ことの必要性を、我々は本当に理解するはずだ>

これらの言葉はこの本の本質のすべてを語っていると言っても過言ではありません。さらに驚くべきことは、この「日本語版への序」が書かれた日付を見ますと、2001年9月17日すなわち同時多発テロ事件発生からわずか6日後であったことです。

日本語では危機管理になりますが、英語ではリスク・マネジメントクライシス・マネジメントとで明確な違いがあると指摘しています。ミトロフ教授はこの2つの言葉の定義をしています。
<まずお断りしておきたいのは、リスク・マネジメントが主として自然災害に対処するものであるのに対して、クライシス・マネジメントは人間によってもたらされるもの、例えばコンピュータ・システムへの不法侵入、環境汚染、経営幹部の誘拐、詐欺行為、製品変造、セクシュアル・ハラスメント、職場暴力といったものを取り扱う点だ。自然災害と違って、人間によってもたらされる危機は、避けることができるはずである。それはある意味で、起こらなくてもよいものだからだ。この理由により、世間は危機を起こした企業、あるいは組織に対しては非常に厳しい評価を下す>

クライシス・マネジメントにおいて重要なことを指摘しています。
<事前の適切な計画と準備があれば、重大な危機の期間を短くしたり、被害を小さくしたりすることはできる>

<“企業はその危機管理の強みと弱みについてどれだけ多くの真実を直視することに耐えられるか”ということと“企業はどれだけその弱点を直すために資金や労力をつぎ込み、強みをさらに強化することを前向きにやれるか”ということである>

結局、危機管理とは次のことを学ぶことであると述べています。わかりやすくまたきわめて重要なことがらです。
<危機管理とは「なぜ人的要因による危機が起こるのか」、「危機を防ぐために何をなすべきか」、そして「危機が発生したらそれを悪化させないためにどうしたらよいか」を学ぶことである>

ここでどの企業にも当てはまる問題があります。
<たいがいの場合、一つの組織に少なくとも一人ぐらいは、差し迫った危機に気付いている人間がいるものである。問題は、危機に気がついている人が往々にして、組織に対して問題提起するに十分な権限を持っていないということである>

最後に訳者の一人である大貫功雄氏がアイアン・ミトロフ教授について解説している個所がありますので、ご紹介します。
<教授の危機管理理論の裏づけが機械工学と人間工学の両面からなされている点を強調しておきたい>

非常に重要な問題である「クライシス・マネジメント」を理解するための一冊と断言できる本です。

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