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No.189 ★★★ 2003/09/7 Sun  質問する力  大前研一 文藝春秋 2003/03/01

質問する力  大前研一 文藝春秋 これをつければあなたも必ず成功する

他の本の中でも再三取り上げられれていますが、ビフォーゲイツアフターゲイツについて説明しています。
<85年以前の時代をキリストの生誕前(BC)と後(AD)になぞらえてビフォーゲイツ(BG)、85年以降の時代をアフターゲイツ(AG)と私は呼んでいます。なぜなら、それほどビル・ゲイツが起業したマイクロソフト社が開発したウィンドウズの発売は革命的なことだったからです>



アフターゲイツ時代の特徴を3つ挙げています。
<第1の特徴としては、英語をベースとした世界の一体化、グローバリズムの急速な進展があげられます。ウィンドウズとインターネットという共通のプラットフォームの登場によって、世界が1つに結ばれるようになったのです。その中で共通言語の地位を確立したのが英語です。(中略)
 第2に、インターネットは国境を越えた消費の革命をもたらしました。eコマースというものが出てきて、ショッピングも配送の決済も、全部この世界でできるようになってきました。(中略)
 アフターゲイツ時代の第3の特徴は、インターネットによって世界の企業の経営が一新されたことです。その中心もやはりアメリカです。(中略)インターネットは工業化社会を情報化社会に変えたのです>

ここで、憶えておくとよい用語を2つご紹介しましょう。

1つは瑕疵担保条項かしたんぽじょうこうです。日本長期信用銀行が破綻し、アメリカの大手投資会社リップルウッド・ホールディングスによって買収され新生銀行に生まれ変わったことはご存知でしょう。売買契約の中に「瑕疵担保条項」があったということです。
著者の説明をみてみましょう。
<瑕疵担保条項とは、政府の算定以上に目減りしている不良債権があったときは、政府がそれを買い上げます、20パーセント以上目減りした債権は預金保険機構が肩代わりしますというものです>

もう1つはデュー・デリジェンスです。この用語も新生銀行に関連した個所に書かれています。説明をみてみましょう。
<(日本長期信用銀行が)債務超過でないなどというのは大嘘で、実は6兆円も投入しないといけない、とんでもない経営状態でした。
 それで、とにかく必要な額の税金を投入した、もうこれ以上は不良債権はない、これは間違いありませんと言って、他の金融機関に買わせようとしたわけです。
 普通こうした場合、買収する側には帳簿の閲覧権があります。デュー・デリジェンスといいますが、買収する企業の経営内容がわからなければ値付けもできないし、いくら隠れ借金があるのかわからなくて、危険すぎてとても買えないからです>

ここで、タイトルになっている「質問する力」についての解説を一緒に見てみましょう。
<所与の条件を所与として諦めずに、様々な角度から質問をし、問題点を見つけ、解決策を打ち出していく「質問する力」が日本と日本人にはなさすぎます。「瑕疵担保条項」についても、メディアが「けしからん」と報道しても、「なぜ、そんな不平等条約みたいな契約をしないと買ってもらえないのか」と質問をして調べていけば、実相がみえてきます。この実相がみえてくるというのが問題解決の場合とても大事で、そこから解決策を考えていけばいいわけです>

私たちは、次の言葉を咀嚼してよく理解することが必要のようです。
<どんな問題もテレビや新聞報道の単純化した図式から一歩つっこんだ質問をして、総合的、客観的な判断を自分の責任のもとでしていくことが必要なのです>

著者は金融機関に対してはかなり辛辣な意見を述べていますが、その理由は破綻あるいは瀕死の金融機関のトップが責任を取っていないし、そのトップに責任を取らせていないからですし、大半の行員がプロではないからです。
<金融機関というのは集めた資金を投資するのが仕事です。貸出先をプロの目で選んで運用し、必要な企業に資金を提供するところに存在意義があるのに、そうした社会的役割を放棄し、集めた預金で国債を買っているだけなのだったら、存在する必要はありません>

著者が四半世紀以上前に書いた『企業参謀』のなかで強調していたことがありました。
<なぜだろうと疑問を持ち、質問してみる。みんなが当然のように前提としていることがあったら、その前提条件はどういうことかと考えてみる。
 このことは私が27年前に書いた『企業参謀』という本のなかで強調し、1章を設けた問題でもあります>

大前研一の質問の1つは次のようなものです。
<まず必要なのは、日本は今後、どのような教育制度を目指すべきなのか、という質問をすることです。その前に、「日本は、これからそもそも何でメシを食っていくのか?」という質問をしなくてはなりません。それによって、どのような能力をもった子供たちを育てていけばよいかのヒントが出てくるからです。
 これからの時代には、どんな才能、どんな人材が必要とされているのでしょうか?(中略)
 みなさんも考えてみてください。今の日本に必要で、もっとも欠けている人材は何でしょうか?>

ここで、大前研一の考え方をご紹介する前に、その質問に対する答えを数分間考えてみてください。

(数分経ったとして)大前研一の回答例は次のものです。
<私の答えは「異才」です。
 政治にせよ経済にせよ、突出した発想と能力を持った異色の人材が、日本には決定的に不足しています>

では、日本には突出した才能を抱えた分野はないのでしょうか?
実はあります。先ごろスタジオジブリの宮崎駿(みやざき はやお)監督による『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞を受賞したことは私たちの記憶に新しいことです。
そうです。アニメの世界です。宮崎監督はディズニーからも誘いがあったくらいですから、世界の目利きのある人たちからは実力は認められていました。しかし、公には評価はされていませんでした。それが、遂に世界に認められたのです。

このあたりの件について大前研一は次のように書いています。
<日本が世界でも突出した才能を大量に抱えている分野があります。
 それはマンガであり、アニメであり、ゲームです。
 これらの業界はぶっちぎりで日本が世界一です。たくさんのクリエーターが競い合い、世界に誇れるすばらしいクリエイティビティを発揮しています>

これらに関連した記事が最近の日経ビジネスに掲載されていたことを思い出しました。その記事の概要は以下のとおりです。
和製コンテンツ、世界を席巻(日経ビジネス 2003年8月25日号)
 日本のアニメやゲームとそのキャラクターの人気が海外で高まっている。ポケモンの成功が契機になり、戦略
 的に海外展開する企業も増えてきた。


 ハム太郎のアニメは2002年6月から全米で放映が始まり、現在では1週間に7回放映されるようになった。英語版は合計104話あり、これを繰り返し放映するわけだが、「手応えがなければ5回で放映を打ち切るのも当たり前(日本のアニメ製作大手の役員)という米国で人気が高まっている>

さらに、私にとっても懐かしい手塚治虫の「鉄腕アトム」(現在では「アストロボーイ・鉄腕アトム」と言うようです)が日曜日の朝にテレビ放映されていますが、この「鉄腕アトム」についても言及しています。
<アニメ製作にハリウッド型のビジネスモデルを導入しよう―。そんな意欲的な試みも始まった。来年初め、全米でテレビ放映される手塚治虫のマンガを原作とする「アストロボーイ・鉄腕アトム」がそれだ。従来の日本のアニメは国内市場で製作費を回収することを前提にしていた。しかし鉄腕アトムの新シリーズは、従来の考え方とは大きく異なっている。
 「当初から海外放映を前提に製作した。日本のアニメとしては画期的だ」。鉄腕アトムのアニメをソニー・ピクチャーズエンタテインメントと共同製作する手塚プロダクションの清水義裕著作権事業局長は自信を見せる>

ちなみに、この「アトム」は<ハリウッドにある米ソニーのスタジオで製作中の劇場版の映画はすべてコンピューターグラフィックス(CG)で構成され、製作費は約100億円を予定している。ハリウッドでも大作映画の部類に入るものだ>ということですから、力の入れようが違うことがわかります。

話を原著に戻しますと、大前研一の『親が反対しても、子どもはやる』のなかで書いていることを述べています。
<幸せとは一人一人の人生に対する態度で決まってくるのであって、どの学校を出たかで決まるのではありません。(中略)
 今の日本の状況では、どんな学校に行くかより、家庭での育て方の方がよほど大切だと私は思います>

さて、次に私たちが時々立ち止まって反芻しなくてはならないことを述べている個所がありますので、ご紹介しましょう。つい、「分かった気になっている」私たちの頭にガツンと強烈な衝撃を与えかねない内容です。少し、引用が長くなりますがご覧ください。
<まずは本当に自分が理解しているかどうか、つねに点検してみることです。
 そして、すこしでもわからないところや疑問点があればとことんつきつめるということです。
 その際には人に聞いてもいいでしょうし、あるいはインターネットで調べてもいいでしょう。あるいは文献にあたるのもいいでしょう。しかし、ひとつの情報源にたよるということはしないことが大切です。
 他人のうけうりではなくて、自分のに落ちるまで調べてみるのです。
 そうすることでいろいろな問題が整理されていきます。問題点が整理されてくれば、解決方法もわかってきます。その解決方法をこんどは他人に説明して理解してもらうというプロセスがあります。
 「自分の考えを説明する力」は「質問する力」と表裏一体の能力です>

この部分を読んだだけで、この本を読んだ価値があるといってもよいほど大切な個所です。自分で理解したつもりになっていても、他人にも理解できるように説明できるとは限りません。自分の説明で他人が理解でなかったとしたら、自分がまだ充分に理解していなかったということになります。

この本は、ビジネス書というよりも人間として基本的な能力を磨くための哲学書あるいは教育のための本という趣きが備わった必読書です。

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