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No.191 ★★★ 2003/09/21 Sun  誰でもやり直せる復活の経営学 江坂 彰
 光文社 2003/04/25

誰でもやり直せる復活の経営学 江坂 彰 光文社  どん底から抜け出す経営新発想、新戦略!

 まず、著者の次の言葉からご紹介しましょう。
<昔からよくいう。危ない会社ほど危機感がない。そうした企業はこれからどうすればいいかということになるが、だからこそ“経営者格差の時代”、“プロの経営者の時代”と言いたい>
<トップの思考、企業の文化風土を変えないで、他社のいいとこ取りをしようというのは土台ムリ。いつまで経っても強い企業には絶対になれない。他社の真似まねをして一時的にうまくいったとしても、本家本元を抜くことはむずかしいし、成長には限度がある。

 経営の正解は1つではない。企業というものは企業の数だけ顔も姿も違う、つまり解決しなければならない問題が違う。問題が違えば答えは違ってくる>
(「はじめに」から)

 低迷していた日経平均もようやく1万1000円台を回復するまでになり、日本企業の復活が確認できる兆候が出てきました。しかしながら、小泉政権樹立当時の日経平均が1万4000円台だったことを思えば、完全復活というのは早計です。

 自動車・AV家電などの輸出産業が牽引していることを見れば、日本経済はアメリカ経済頼みであることは一面において事実です。国内消費にも徐々に明るい兆しが見えてきましたが、デフレから完全に脱却できたわけではありません。

 こうした時代背景を考慮しますと、著者の慧眼にはいつも敬服しています。
<日本の優良企業もアメリカの優良企業も、自前の経営仮説、つまりオリジナルの儲ける仕組みをきちんと持っているところは強い。そのことで優良企業でありつづけ、結果として従業員と株主を大事にしている。従業員を大事にする企業が勝てるのであれば、大事にすればよい。しかし、それだけでは勝てない。大事にするということと平等にするということはイコールではない>
 最近では、リストラ(「事業の再構築」の意味を取り違えて「首切り」の同意語になっています)が日常茶飯事になっています。この点について著者は次のような見解を持っています。
<当たり前になるが、企業のなかに利益はなく、企業の外部にしか利益はない。首切りリストラで利益を出したとしても、それは本当の利益ではない。それを利益と言うならば、社員をゼロにすれば史上最高益になるのか。なるわけはない、待っているのは倒産だけだ>
 では、これからの時代を生き抜くためにはどうしたらよいのでしょうか?
 その前にどのような時代に変わったのかを認識することが大切でしょう。
<知恵の付加価値の時代、ソフト化時代、あるいは知識情報産業化時代と言ってもよいが、こうした時代になると、規律・勤勉・正確という従来のキーファクターは事業の形態によってはむしろ足かせになってくる。そこで人の能力の陳腐化が起こり、必要な人間が変わってきた。それがカンパニー人間の終わりだ>
 リストラの一方、企業は「定年制」を社員の自然減を促す手段として使っています。労働寿命について著者は次のように述べています。
<企業の平均寿命は30年。しかし、ドラッカーも言うように知識社会の到来と人生80年時代で、労働寿命は企業の平均寿命をはるかに超えている。
 これは初めての現象だと思うが、ときに知的労働にはブルーカラーのような定年が必要ないから、労働寿命との差が大きくなっている。(中略)頭脳が灰になってしまわないかぎり、知的労働に定年制はない。ドラッカーはすでに90歳を超えていると思うが、「代表作は」と質問されると、「ネクスト」と答えている。恐れ入る>
 余談になりますが、最後の部分「『代表作は』と質問されると、『ネクスト』と答えている」は、喜劇王チャールズ・チャプリンが同じことを言い残していることはおもしろいと思います。偉大なる人たちは、現状に満足することはなく、飽くなき追求を望んでいるということでしょうか。

 今私はインターネットを使って、ホームページの更新をしているわけですが、インターネットは今後どのような展開をしていくのでしょうか?
その問題に対する1つの回答が日本を代表するベンチャー・キャピタリストによって示されています。

 ニューヨークに設立されたZERON(ゼロン)グループの代表取締役社長 である増田茂氏は次のように指摘しています。
<インターネットは、融合されたメディアのバック・エンドを支えるテクノロジーとなる。同じバック・エンド・テクノロジーを利用していても、人によって呼び方は異なる。おそらくは、ヒューマン・インターフェイス・ディバイス、すなわち、その人が操作している端末の名前で呼ぶことだろう。つまり、インターネットを利用していたとしても、人は「テレビ」「カーナビ」「携帯電話」「カラオケ」と呼ぶことになろう> (『覇者の条件』 東洋経済新報社 2000/12/21)。
 つまり、やがてインターネットという言葉や概念を意識しなくなってくるということです。テクノロジーというものはそうなって初めてユビキュタス(いつでも、どこでも、だれでも使える)なものとなり得るということなのでしょう。

 江坂彰は「インターネット」についてどう考えているのでしょうか?
<インターネットの特徴は匿名性と同時性(瞬間性)と受発信の世界的広がり。このインターネットの発達、インターネットの怖さを、上の古い人間ほど理解していない。昔は「人の口に戸は立てられない」と言ったものだが、いまは「インターネットに戸は立てられない」と言うべきだ。(中略)
 失敗、ミス、トラブル、スキャンダルは早く公開すること。隠すリスクの方が大きくなった>
 江坂彰は、しばしば経営者に対してかなり手厳しいことを歯に衣着せずに述べています。これからは経営者に対する考え方を中心にご紹介しましょう。

 日本企業低迷の真因はプロフェッショナリズムの衰退にあると著者は的確に言い当てています。
<日本企業の低迷の真因は、プロフェッショナリズムの衰退にある。
 儲けてナンボの大阪商人が儲け下手になったのもプロフェッショナリズムの衰弱だし、経営者は経営のプロでなければならないと言うけれども、そのじつ儲かる仕組みがつくれない>
<日本の能力主義が中途半端に失敗している理由も、このプロフェッショナリズムのなさにある。能力主義というものは上のほうからやってはじめて浸透し、定着する。しかし、日本では、役員になった途端に「万歳!」を叫んで「もう勉強しなくてすむ」とやっていたし、能力主義が叫ばれてからもやっていた。役員以上は能力主義なしの丸抱え主義でいながら、下だけ厳しい能力主義でハッパをかけようなど虫がよすぎる。
 プロフェッショナリズムのない人間ほど、自分に自信のない人間ほど、“ごっこ”をやりたがる。愛国心ごっこ、忠誠心ごっこ、愛社精神ごっこ、忙しごっこ......。>
<経営者は経営のプロ、儲かる仕組みづくりのプロであって、イベント役、セレモニー役ではない。イベントやセレモニーで忙しごっこをやっている暇などないはずだ>
<経営者が経営のプロフェッショナルとしてやっていこうと思えば、勉強することは山ほどある。勉強して、咀嚼して、自分なりの仮説を織り上げる、儲かる仕組みづくりをデザインする。時間は待ってくれない>
 経営に関する2つの教訓を披瀝しています。
<ここには経営に関して2つの教訓がある。1つは、「自社の強みはこれだ」とか「うちの得意分野はここだ」と思っていても、勝手な思い込みにすぎないこともあるということ。もう1つは、自社の長所や得意な分野を見つけることも能力のうちということである。偶然に見つかったのではなく、意識的に発見することも1つの能力である>
 「情報」についての著者の見解を見てみることにしましょう。
<知識情報化社会では、“ギブ・アンド・テイク”が原則だ。まったくギブする能力のないところに、テイクされることはない。だから、情報発信力のあるところに情報が集まってくるし、情報発信力のないところはさびれている>
<鮮度の高い情報、欲しい情報であれば、時間と苦労をかけても手に入れたい。鮮度が低く、魅力の乏しい情報しかなければ、いくら簡単に手に入るとしてもソッポを向く>
<情報をニュースだけと勘違いしている人もいるが、情報には知恵も入っている。情報力とは知恵と情報の複合体>
 著者は「あとがき」に興味深いことを書いています。落ち目の会社と成長している会社の違いについてです。
<落ち目の会社を調べているうちに、ひとつの共通点があることに気がついた。
 それは落ち目の会社は、どうすれば失敗しないかを上から下まで全員が一丸となって懸命に考えているということである。冷ややかな言い方をするようだが、この種の会社が昔日の栄光を取り戻すことは、まずない。(中略)
 逆に成長している会社、伸びる会社は、どうすれば成功するかを真剣に考える。そしてまた、今日の勝利がかならずしも明日の勝利に結びつかないことを知っている>
 最後に、著者の私たちサラリーマンへのメッセージをどうぞ。
サラリーマンの能力は発揮してこそ能力、発揮させてこそ実力である
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