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No.192 ★★★ 2003/10/04 Sat  社長失格の幸福論 板倉雄一郎 英治出版 2003/05/02

社長失格の幸福論 板倉雄一郎 英治出版  すべてを受け入れることが、すべての始まりである

 本著は、35億円の自己破産から5年がたった今、著者は幸せであるという自伝的幸福論です。

いわゆる「ビジネス書」ではありませんが、著者の体験は大いに参考になることでしょう。

 ちなみに『社長失格』もご覧ください。




 著者板倉雄一郎について簡単にご紹介しておきましょう。
 1963年12月26日生まれ。
 1991年、株式会社ハイパーシステムを設立。
 1996年、インターネット広告を結びつけた「ハイパーシステム」を開発。インターネット接続無料サービスを展開。ニュービジネス協議会の「ニュービジネス大賞」受賞。
 1997年12月、負債総額37億円で破産。
 1998年01月、負債総額26億円で自己破産。
 2000年、ベンチャーマトリックス(株)代表取締役会長に就任。
 現在、企業コンサルティングをはじめ、講演や執筆で活躍。
            (「著者紹介」から)

 まず、できそうでなかなかできないことを著者の言葉から引用してみましょう。
<まずは、すべてをありのままに受け入れること>
 この心境に到達するためには、心を平穏に保つことが必要です。
 自分自身の経験を振り返ってみますと、今年になって入社以来18年間在籍した経理部門から流通管理部門へ異動になり、今までとは全く異なる仕事をこなさなければならない立場に追いやられました。異動当時は心が乱れ、<すべてをありのままに受け入れること>がなかなかできませんでした。

 しかし、異動から2カ月が経過した今、ようやく<すべてをありのままに受け入れること>ができるようになってきました。周囲の方々が温かく迎え入れてくれたことと、家族が心の支えになってくれたことが大きな助けとなりました。
<目の前に与えられたものを、まずはこなしてみる>
 今まで長年デスクワークに携わり「座り仕事」でしたが、今は商品出荷で体を動かす「立ち仕事」になりました。
 最初は、梱包の要領が分からず手間取っていましたが、周囲の人たちがロートルの私に丁寧に教えてくれ、要領が少しずつわかってきました。当たり前と言われそうですが、人がやっているのを見て簡単だと思うことと、実際にやってみるのとでは大きな違いがあることが実感できました。実際にやってみると新しい発見があるものです。
 通勤時間は往復で約5時間で、異動当初はかなりハンデを感じましたが、もう慣れました。
 結果的によかったと思われることがありました。1つは、多くの人柄のよい方たちに出会ったことです。もう1つは「体を動かす仕事」の副次効果が現れたことです。2カ月間で体重が4キロほど減ったのです。今までいろいろなダイエットを試してみましたが、なかなか減量することができませんでしたが、体を動かして汗をかき、血行を良くさせることによってストレスの解消にも役立ったのだろうと解釈しています。さらに、精神的に開放されたことも大きな「成果」だと考えています。

 個人的なことがらはこのあたりで終わりにしまして、本題に戻りましょう。

 処女作『社長失格』を上梓したことの意義について述べている個所があります。
<自分の考えを文章にすることによって、考えは論理的に明確化される……よく言われることだが、考えが明確になるばかりではなく、それを第三者が読んだ場合には、書き手自身が認識していない、書き手の本性が浮き彫りにされるという効果もあるようだ>
 だれが言った言葉か忘れましたが、「文は人なり」に通ずることでしょう。文章を書いているとその人らしさが自然に文面に現れてくるものです。

 板倉雄一郎は起業家でした。ですから起業家の立場から述べた「起業家の目標」には傾聴に値します。
<起業家にとって、株式公開は長期的な目標ではないにせよ、自ら起業した会社のひとつの大変大きな成功へのステップであることには変わりない。株式公開は、大量の自己資本を調達し、さらなるアグレッシブな事業を有利に展開できるという直接の恩恵以外にも、自分の努力や功績を社会に「パブリック」として認めていただく証でもある。だから、どれほど謙虚な姿勢を持った起業家であっても、株式公開ということになれば、その満足感や達成感が態度に表れて当然である>
 次の言葉は私の考えと共通するものでした。
<相手が社会のなかでどれほどの人物であっても、まずは自分の尺度に合わせて相手を評価することだ。それが自らに幸せを導くための、決して見失ってはならない手段である>
 板倉雄一郎の本に共通することは、起業し成功を収めながら、資金繰りに窮し短期間で破産するという貴重な経験に基づいた言葉で綴られていることです。著者の言葉に説得力があるのはそのためです。

 板倉雄一郎は現在ベンチャーキャピタルの経営者をしていますが、なぜベンチャーピャピタルなのかについては次のように述べています。
<僕は、事業の実績や成功の代わりに、多くの経験を手に入れた。だから、自ら事業を実行するより、僕が他人に対して優位性を持てる「経験値」を最大限に効率よく運用する。つまり、ベンチャーキャピタルなのである>
<投資や育成をする上で、投資や育成の経験則を持った人間はたくさんいるが、投資や育成を受ける経験を持った人間は、僕が思いつくかぎり投資や育成をする側には見当たらない。これはすなわち投資事業分野での優位性にはならないかもしれないが、少なくとも特異性にはなりうる。そして、それこそが、この国のベンチャー環境に最も不足している部分だともいえる>
 つまり、事業に失敗した経験を活かし、投資と育成をされる側の立場を理解した<ハイパーネット時代までの僕の仕事とほぼ対極にある投資と育成>をしていきたいということだったのです。

 板倉雄一郎が起業家の道を選んだ理由は、他人に使われるくらいなら自分で判断・決断・断行したいということが動機であったと述べています。
<僕が起業家としての道を歩んできた大きな理由は、「他人にとやかく指示されるぐらいなら、リスクを取ってでも自分で決めて、自分で実行したい」という動機だった>
 板倉雄一郎の心の隅から片時も離れないのは、破産して多くの人たちに多大な損害を与え、迷惑をかけたことでした。
<失敗から学んだ多くは、それを使って成果を出さなければ意味がない。なにせ僕の場合、失敗の授業料は数十億にも及んでいたのだから>
<可能であれば、すでに法的には返済の義務がなくなった当時の債務を返済すること。それ以外にその呪縛から抜け出すことはできない。さもなければ、一生、失格社長を演じつづけるしかない。そんなのいやだ。呪縛からの脱出準備は着々と進んでいる>
 著者にエールを送りたいと思います。

 最後に、私にとって非常に印象的な言葉がありましたので、ご紹介します。
<何度も言うようだが、企業そのものに意思や感情はない。あくまでそこにかかわる人たち、従業員、経営者、得意先、取引先、そして株主の富の道具にすぎない。そこにかかわる人間が幸せにならなくては、起業としての価値はまったくない>
「板倉雄一郎事務所」

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