ユニクロも失敗ばかりだった
ユニクロの社名は(株)ファーストリテイリングであることをご存知でしょうか?
まず、ユニクロとファーストリテイリングの由来からご紹介することにしましょう。
<「いつでも服を選べる巨大な倉庫」という意味を込めて、店名「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」も決まった>
<早い=ファースト(FAST)と小売=リテイリング(RETAILING)を組み合わせて名付けた背景には、対外的な意味にとどまらず、会社の内側に向けた発信でもあった>
この本を読み進んでいくうちに、柳井氏のある意図を読み取ることができたと確信しました。この本は2つの読者層に対するメッセージではないのかということです。
1つは、ユニクロがこれからどこへ進んでいこうとしているかをより多くの読者(既存顧客、新規顧客)に知らせることであり、もう1つは店舗数が約600になり従業員数も増え、組織が巨大化し、経営者層の考え方、方針が末端にまで伝わりにくくなったため、読者(従業員)にメッセージを伝えることを意図したのではないのかということです。
真偽のほどはあなたに委ねます。一読してからご判断ください。
柳井氏は随所で本音を語っています。そのなかでも「経営者はどうあるべきなのか」、あるいは「会社とは何か」、「経営とは」、「会社組織とは」という点について語っている部分は読み応えがあります。
例えば次のような個所です。
<会社は安定成長を続けると、形式的に動くようになり、管理組織も次第に肥大化し、意思決定のスピードが鈍くなる。会社というもの、事業=商売というものは、安定や形式とは正反対に位置すべきものではないだろうか>
<経営者は企業環境がどうあろうが、収益を上げ続けることが責務なのだ>
<会社を経営するうえで一番重要なのは「どういう会社にしたいのか」と、「どういう人たちと一緒に仕事をしたいのか」を明確に示すことだと思う>
<一番目は「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」。これは商売の根本だと思う。お客様がいない限り、商売をやっても無駄。店を開けていればお客様は来て当然、売れるのは当然と考えるのは間違いで、お客様の要望に応えないと売れないし、店も繁盛しない。要望に応えて、お客様を作り出していかなければならないのだ。
二番目は「良いアイデアを実行し、世の中を動かし、社会を変革し、社会に貢献する経営」。自分で良いアイデアを持っていて、それを実行する。商品を買ってもらって、それで世の中が動く。その結果として、社会に貢献できる。事業とは、こういうことだと思う>
<会社組織というのは、優秀な人がいるだけで成長するわけではない。構成員全体のバランスが大事だと思う。優秀な人も必要だし、そうでない人も必要だ。バランスがとれていて、初めて成長するものだ。全員が組織全体の目標を共有化していて、しかも自立しながら仕事をしないと成長しない>
<経営は頭で考えただけではダメで、実行がともなわないといけない。頭のいい人は頭だけで考えて、「いい案作ってそれでおしまい」と思ってしまいがちだ。机上の空論では実行できない。実行しながら、気づきながら、どんどん計画を作り変えていく。計画は実行するためのものでなくてはならない。実行しながら「体得」することが一番だ>
さて、書名の「一勝九敗」とはどういう意味なのでしょうか?
野球を例に取れば、10戦して1勝しかできず、9敗しては大きく負け越し、最下位に甘んじることになるかもしれません。
柳井氏はこの点について「はじめに」で、次のように述べています。
<経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。商売は失敗がつきものなのだ。十回新しいことを始めれば九回は失敗する。成功した経営者のなかには、もっと凄まじく「百回に一回程度しか成功しない」などとおっしゃる方もいる。「現実」はいつでも非常に厳しい>
経営の原点とは何か ― これは非常に重要なことです。これがしっかりしていないと、市場から足をすくわれます。
柳井氏は「経営の原点」を次のように考えています。
<ユニクロの品質向上には、現場で学んだ失敗の数々が大きく寄与している。「現場を知る」ことこそ、経営の原点だと今も考えている>
私がユニークな考え方だと思ったのは以下の内容です。
<一番いい会社というのは、「社長の言っていることがそのとおり行なわれない会社」ではないかとぼくは思う。社長の言っていることを「すべて」真に受けて実行していたら、会社は間違いなくつぶれる。
表面的に社長の言うことを聞くのではなく、まずは社長が言いたいことの本質を理解すべきなのだ。現場では自分なりにその本質を見極めどう具体化するかを考える。そして、実行する。これができる会社がほんとうに立派な会社である>
柳井氏はタイトルのように数々の失敗を繰り返してきたと再三述べていますが、失敗が失敗で終わるのではなく、失敗から多くを学んできたと自負しています。
<フリースの場合は成功したが、他については失敗は数知れず。当社は数々の失敗を繰り返して、学習してきた会社だと思っている。繰り返し強調しておくが、成功よりもむしろ失敗のほうが勉強になる。一方、成功というのは、ここまで可能性があるということを知らせてくれる、元気の源のようなものだ>
この本が出版された後で起こった変化に触れることにしましょう。
ご存知のように新鮮な青果を取り扱った「エフアール・フーズ」は解散し、この事業から撤退しました。最後まで採算ベースに乗らなかったことが理由でした。損失を増加させないための積極的な撤退と言えましょう。
最近ユニクロに来店したことのある方ならお気づきと思いますが、女性用下着と男性・女性・キッズ用水着の取扱を開始しました。
女性向け衣料品の取扱量がめっきり増えてきたことが最近の傾向でしょう。
商売の基本は「スピード」と「実行」であると強調しています。これに反論できる人はあまりいないのではないでしょうか?
<スピードがない限り、商売をやっても成功することはない。だから、ぼくは失敗するのであれば、できるだけ早く失敗するほうがよいと思う。(中略)
もうひとつ大事なことは、計画したら必ず実行するということ。実行するから次が見えてくるのではないだろうか。経営者本人が主体者として実行しない限り、商売も経営もない。頭のいいという言われる人に限って、計画や勉強ばかり熱心で、結局何も実行しない。商売や経営で本当に成功しようと思えば、失敗しても実行する。また、めげずに実行する。これ以外にない>
2003年9月10日、柳井氏は「2010年売上高1兆円」宣言をしました。エールを送りたいと思います。ユニクロの一ファンとして、また一個人投資家として。
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