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No.221 ★★★ 2004/11/27 Sat  藤巻兄弟の大人塾。 藤巻健史&藤巻幸夫 朝日新聞社 2003/12/20

藤巻兄弟の大人塾。 藤巻健史&藤巻幸夫 朝日新聞社 兄弟の個性対決

朝日新聞に連載中の藤巻兄弟の本音トーク集です。 正直に告白するとまったく読んでいませんでした。時々、家内に連載記事の内容を聞いていただけです。

兄は「伝説のカリスマディーラー」の名をほしいままにした藤巻健史氏、弟は「伝説のカリスマバイヤー」と呼ばれた藤巻幸夫氏です。二人のウイットの利いた言葉や時にはジョークを交えた話をあなたもご一緒に聞いてみませんか?

<金融ディーラーは、為替、株などを安く買い、高く売るのが仕事。それを、「高い時に買い、安い時に売ってしまう」から悲劇は生まれるのである。私はいま、円は実体経済に比べて強すぎだと見ている。身の丈にあった水準まで、円は安くなるはずだ。だから私は、外貨建てMMFなどで、外貨に投資している。(健史)>
<私の提案は、まず色から入ること。「海が好きだから、ブルーが好きだっ」。それでもいい。そんな単純なノリでいいから、自己主張を始めてみよう。なんたって「色」は大事。(幸夫)>

健史氏は元モルガン銀行(現モルガン・チェース・マンハッタン銀行)東京支店長を歴任し、為替・債券ディーラーとして莫大な利益を上げ、「東京にフジマキあり」と言わしめた伝説の人です。

 一方、幸氏は伊勢丹1階に名物コーナーを企画し、一躍カリスマバイヤーとなり、現在では福助社長として再建に腕を振るっています。

二人の個性がぶつかり合っているところにこの本の面白さがあります。感性の違いにご注目ください。  「自己責任」という言葉が人口に膾炙するようになって久しいですが、健史氏は「自己責任」について述べています。

<マーケットコメントはあくまで参考程度にとどめ、自分の頭で判断することが肝要だ。金融取引の世界は、いつでも自己責任。儲けようと思ったら、多少の「お勉強」は必要なのである。(健史)>
 一方、幸夫氏は靴の購入のしかたに薀蓄を披露します。
<上質な靴は、手入れを怠らなければ10年は履ける。3万円の靴を10年履けば、年間3千円のコスト。1万円の靴を1年で履きつぶせば1万円だ。(幸夫)>

一週間ほど前の朝(2004年11月21日日曜日)の日本経済新聞を読むと、アメリカ大統領に再選されたブッシュ氏は「強いドルを支持する」と小泉首相との会談の席上で発言したようです。事実であれば、強いドル=円安は日本にとって追風になります。

<藤巻に言わせれば、デフレこそが景気低迷の「原因」なのだ。デフレを脱して地価が上がりさえすれば、いたちごっこは終わる。銀行の融資も増えるから、日本経済も回復する。デフレにサヨナラするには、円安にすることだ。「通貨安が進めばインフレが進み、デフレを脱却できる」ことは世間の常識であり、経済の教科書にも書かれている。(健史)>
<個人投資家には、私のように「長期的見通しに基づいて勝負する」ことをお勧めする。ディーラーをまねて頻繁に売買を繰り返すと「高いところで買って安いところで売るはめ」に陥りかねない。マーケットの大きなうねりに乗ることが肝要だ。(健史)>

幸夫氏は服飾が専門ですから、身に着けるものに対する確かな眼があります。服装にあまり関心のなかった私には、大いに参考になります。

<生地は「顔」だ。良い生地には、自らの格を主張するかのようなある種の手触りがある。安物は「ツルッ」としていて顔がない。良いコットンは「しゃりっ」としている。同じカシミヤでも、上質なものは「ヌメッ」としている。(幸夫)>

次も幸夫氏の言葉ですが、これは経営者としての視点で語られています。現場の重要性を認識していなければ発言できないことです。

<経営には「鳥の目」と「虫の目」が大事。でも「鳥の目」は持っていても、「虫の目」がない、つまり現場を知らないエライ人は多い。だから、アパレルではビッグカンパニーのオンワード樫山で、今井さん(今井博氏、オンワード樫山の執行役員:注 藤巻)のような人が偉くなったのはうれしい。日本も捨てたもんじゃないな、と思う。不景気で、「モノが売れない」といろんな所で言われるが、簡単に言って欲しくない。なによりまず、お客さんと話をする。お客さんが何を求めているかを読む。その結果としてモノが売れる。そう、そんな生きたマーケティングが必要だ。(幸夫)>

為替に関しては健史氏は第一人者なので、終始円安を望むという見解を公にしています。この本の中でも「円安」の効用を強調しています。

<マーケットにおいても、「常識」がないがゆえに間違った取引をしてしまう人たちがいる。円が安くなると、「外国人が日本株を売る」と思い込み、あわてて日本株を売ってしまう人たちである。外国人が持つ日本株の価値が、ドル換算で下がると考えるのだろう。でも、海外のヘッジファンドなどでは、株の担当者と為替の担当者は別の人なのである。円安になれば、株の担当者は日本景気回復を予測して日本株を買うし、為替の担当者は円安が進みそうだと思えば、先物で円を売る。つまり円安は、外国人にとっては「日本株買い」の要因であって、売り要因ではないのだ。(健史)>

「リスクを負わないのがリスク」(ビル・ゲイル)とか「ハイリスク・ハイリターン」といったことをよく耳にします。健史氏は「リスク」をどのように考えているのでしょうか?

<もし、あなたが「ハイリターン」を得たければ、「ハイリスク」を取らざるを得ないのである。そこでは、リスクをいかにコントロールするかが大切だということは、言うまでもない。(健史)>
<金融取引にも、いろいろなリスクがある。信用リスクとは倒産のリスク。複雑なデリバティブ取引を組み込んだ金融商品によく見られる流動性リスクとは、売りたい時に売れないリスク。マーケットリスクとは、マーケットが動いたときに損するリスクで、「金利、為替で儲かった、損した」といういちばんおなじみのリスクである。「ハイリスク・ハイリターン」の原則がある。他の商品に比べて、非常に魅力的な金利が示されるなどしていたら、何らかのリスクを内蔵していると考えるべきなのである。(健史)>

リスク・コントロールについては同様な言葉のリスクマネジメントについて書かれたONとOFF(ソニー会長兼CEO出井伸之 新潮社)をご参照ください。

為替でも株式、債券の取引では他人と違うことをする人が勝利を掴むということはよく見聞きすることですね。株の世界に「人の行く裏に道あり 花の山」という格言があります。的確に表現されていると思います。

<大多数が「下がる」と、思っている時でも、「上がる」と見る人は必ずいる。そして、中長期的に見ると、へそ曲がりに思えた人のほうが正しかったということもよくある。「多数意見に従ったおかげで儲かった」というのは、ごく短期的な現象にすぎない。自分で絶えず考え、中長期的に経済がどう動くかを予測することこそが、資産運用の基本だと私は信ずる。(健史)>

このあたりでファッションの話に戻りましょう。幸夫氏の話は軽妙洒脱で面白いです。

<思えば日本人は、むやみに周りに合わせたがる。でも、「オレはこれだっ」っていう主張をこめて、時にあえてハズしてみることも大事。それこそが個性。ファッションの楽しさなんだ。でも、ひとつ間違えれると単なる独りよがりになる。そうならないためには、格好だけでなく、中身が伴わなければ。(幸夫)>
<「自然体」への第一歩は「自分の雰囲気を自然に醸し出すなにか」を見つけることなのだ。色でもいい、小道具でもいい、ブランドでもいい。その「なにか」が触媒になり、個性が忽然と輝きだす。(幸夫)>

幸夫氏が社長を務める会社、「福助」を今後どのように改革していくか簡単に触れている個所がありますので、ご紹介しましょう。

<さて立て直しの秘策、基本は靴下である。前にも書いたが、フクスケの売上の65%はストッキング、靴下。そこから攻める。信じられないことに、フクスケには「フクスケ」というブランドすらなかったのである。だから「フクスケ・ブランド」を立ち上げ、「足元」をまず固めるのである。(幸夫)>

幸夫氏は実践マーケッターといえるかもしれません。自分の直感を信じ、行動に移すという点において理論よりも実践で証明する人でしょう。

<もちろん、兄貴の相場の世界の事情はわからない。ただファッションの世界では、「どうしようか」と話し合っているうちに流行の先端を取り逃がす。とくにフジマキが得意な「女性服」は、いちばん最初に流れをものにしたやつが大儲けする。その「直感」を持続するために、多くの商品を見て、ひとに会い、いろんな店を訪ねる。いざというときに頼る「感性」こそ、日ごろから鍛えておかなければならないのだ。(幸夫)>

他方、健史氏は理論的裏づけをベースに実践し、成果を上げる人と感じられます。「基本の大切さ」を教えている個所をご紹介します。

<ところで、勉強が必要なのはディーラーも、そして個人投資家も同様である。「安直なノウハウ本を読むよりは、やさしくてもいいから、経済や金融の基本的なしくみの本を読め」と部下にも学生諸君にもたえず言っている。勉強したからと言って投資で成功出来るとは限らないが、読まなければ、決して成功し得ない。「必要最低条件」なのである。(健史)>

多くの失敗があるに違いありません。何もしなければ失敗もしない代わりに、成功もありません。「失敗は成功の始まり」とはいつの世も変わらない真実なのかもしれません。

金融でもファッションの世界でも一朝一夕で身につくことはありません。二人の個性がぶつかり合い、核融合して出てきた結論はそうしたことでした。

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