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No.222 ★★★ 2004/12/13 Mon  会社にお金が残らない本当の理由 岡本吏郎 フォレスト出版 2003/12/18

会社にお金が残らない本当の理由 岡本吏郎 フォレスト出版 ビジネス環境を支配する「7つのシステム」

日本の企業業績には先行き不透明感が漂っています。いまだに多くの企業は赤字に悩まされています。その原因は様々でしょうが、1ついえることはキャッシュフローに問題があることです。

本書は、マーケティング・コンサルタントで税理士による実体験から得られたノウハウ集です。

最近はお金持ちになるための本が書店にたくさん並んでいます。では日本に1億円以上の預金を所有する「お金持ち」はいったい何人ぐらいいるのでしょうか?

<そもそも、現在日本には1億円以上の預金を持つ人は約108万人います。日本の総世帯数が約4700万世帯ですから全体の2・3%世帯は金融資産で1億円を持っているのです。50世帯に1世帯は1億円を持っている計算です。>

お金持ちはこんなに少ないのですね。では経営者の実態はどうなのでしょうか?

<どんなに優秀な経営者でも会社をつぶす人はつぶします。>
どんなにアイデアや発想が素晴らしくても、経営の背景になっているシステムが分からなければ会社がつぶれます。

この本の目的は何か?この部分は大切なところなのでご紹介しましょう。

この本は中小企業がシステムを知らないことでいかに損をしているかを書いた本です。そして、逆にシステムを利用して中小企業のお金の残す方法についても書いています。

経営の最終到達点とは何か?換言すると、赤字会社にしないためにはどうしたらよいかということです。著者岡本氏は明快に答えています。

<経営の最終到達点は1円でも多くお金を残すことです。当然、良い人材を作ることや社会に貢献することも大事ですが、お金がなければ何もできません。まずは、1円でも多くお金を残す。これがすべてだと断言します。そして、この会社がためたお金を「内部留保」と言います。>

私は経営者ではないので、経営については本から得た知識しかありません。ですから実践から得た知恵はありません。ただ20年近く、経理実務を経験したことから言えることは、売上至上主義では利益は出てきませんし、キャッシュフローの観点から見ればマイナスになるということです。

 「黒字倒産」というのは決算書上は利益が出ていても、預金が口座に残っていないため小切手や手形決済ができず、半年以内に2度の不渡りを起こし倒産することです。そもそも1度不渡りを出すと金融機関からの信用が失墜し、追加融資はきわめて困難になります。倒産するか他社の支援を受けて存続できるかどちらかです。

経営について分かりやすく書かれている個所がありますので、見てみましょう。

<経営にも過去、現在、未来があります。過去を代表するものが、借入の返済。現在を代表するものが、売り上げと利益。そして未来を代表するものが、内部留保と再投資。この3つをバランスよく管理することが経営のコツです。>

7つのシステムとは何か?著者岡本氏が指摘する7つのシステムとは次のことです。

 システム@収入 システムA支出 システムBリスクのある借入れ、リスクのない借入れ システムC“かっぱらい”の帝王。そして、ゾンビを生む日本の税制 システムD「決算書」を読んでも経営は良くならないのに・・・ システムE価格の意味を考える システムFリスク

では順に見ていくことにしましょう。

システム@収入

 著者岡本氏はアメリカのマーケッター、ジェイ・エイブラムス(寡聞にして知りません)の「ビジネスを拡大する方法」を引用して説明しています。

<「ビジネスを拡大させる方法は三つしかない。それは・・・@お客の数を増やす Aお客一人について平均の販売数量を増やす Bお客が再来して購入する回数を増やす そして、@〜Bの三つの要素を増やせばビジネスは拡大できる」と言っています。>
 率直に言って、この三つを完璧にやることはかなり難しいことです。大企業なら人材は豊富なので、採算が合うかどうか検討した上で実行するかどうかは別として、実践することは可能でしょう。しかし、中小企業ではとても無理なことでしょう。

 ではどうしたらよいでしょうか。著者は実に簡潔に述べています。
<どれもそこそこでいいのです。それさえわかれば、売り上げを倍にすることはカンタンです。私は、こういうことを「そこそこビジネス」といっています。どんなものでも、要素を見つける。そして、その各要素について満遍なく行動する。しかも、それらをそこそこしか行わない。これが「そこそこビジネス」の極意です。「そこそこビジネス」はやることはそこそこですが、成果は大変大きなものになります。要は構成要素をしっかりつかむかだけです。それさえ、しっかりつかんでおけば誰でも大きな成果が手に入ります。ところが、これがわかっている人が少ないわけです。>

システムA支出

 昔、再建屋として名を馳せた人が再建を求められた企業でやったことは休み時間に工場の電気を消したり、鉛筆が短くなるまで使うということでした。その結果起こったことは、倒産でした。大量の社員を抱え、人件費の肥大が大きな問題でしたが、手つかずに終わったことが主因でした。

<会社がうまくいかなくなるとよくやるのは、いらない電気を消すとか、文房具の購入を控えるなどの手段です。(中略)戦略のない節約は本当に悲劇的です。チビチビした節約は単に組みやすいところをいじめているだけの行為です。>
<経費の節約は戦略的でなくてはいけません。戦略的とは、仕入額などの変動費と365日間取られる支出を徹底的に管理することです。>

システムBリスクのある借入れ、リスクのない借入れ

 借入れにはリスクがある借入れとない借入れがあると著者は言っています。

<ノーリスクは無理としても、リスクは最小限にするのがビジネスです。そして、そのためには経験が必要になります。今の中小企業のほとんどはこの原則を知らずに銀行から借入れをしています。>
 中小企業が借入れをする場合には連帯保証人が必要になり、しばしば代表取締役社長の個人保証を銀行から要求されます。

 倒産した場合、社長も自己破産し敗者復活ができないのは日本の法律(民法)によるものです。<日本の民法はお金を借りた人の保護よりも貸した人の保護が優先されている>からです。

 著者岡本氏は返済に窮した時に取るべき手段を提示しています。
<資金繰り悪くなって返済がきつくなったということは、借金をした時に立てたビジネス・プランが思い通りにいかなかったということです。こういう場合にできることは借入れの返済を待ってもらうしかないのです。他の選択肢はありません。ですから、待ってもらえばいいのです。その代わり、売り上げがプラン通りになるよう全力を出して働き、約束通りの返済が可能になったら返済額を元に戻せばいいのです。>

システムC“かっぱらい”の帝王。そして、ゾンビを生む日本の税制

 かなり過激な表現になっていますが、税金の専門家から見ても日本の税制はおかしいという指摘を端的に表わしていると思います。

 まず、次をご覧ください。

  <結論!「税金は取りやすいところからとる!」税金は、私たちから“かっぱらう”ことしか考えていません。現実なんでどうでも良いのです。そして、取りやすいところから取る。これが底流に流れている考え方です。>
 もう1つ。耐用年数についてです。
<耐用年数は長めに決められています。そして世界で最も長い耐用年数と言われています。耐用年数が長くなるようにするために、そうなるような調査方法を国税庁が取ったといううわさがあります。この話の真偽は分かりません。でも、客観的に見ても長いのは事実です。>
 著者岡本氏はパソコンを例に解説しています。パソコンの耐用年数は以前は6年でした。6年も使えるパソコンはないという批判があり、現在では4年に短縮されました。

 余談になりますが、私は2000年11月からパソコンを丸4年使っています。だましだまし使っていますからなんとか故障もなく、現在に至っています。パソコンが故障して使えなくなったら書評が書けなくなってしまいます。

 いくらパソコンの価格が低下してきたとはいっても簡単に買い換えることはできません。

 この本では中小企業経営者に対してアドバイスをすることに主眼を置いていますので、元に戻りましょう。
<耐用年数をヤリ玉に挙げていますが、減価償却費は後で経費化されるか今経費化されるかの問題でしかありません。しかし、ここは重要なところです。経費化は少しでも早い方がいいのです。その方がこちら側が有利になります。経費化を早くして税金を先に延ばせるかどうかは巡り巡って経営の効率性の問題にまで影響するからです。>

システムD「決算書」を読んでも経営は良くならないのに・・・

 しばしば「粉飾決算」がテレビや新聞、雑誌などで大きく取り上げられます。「粉飾決算」は商法違反で、重罪です。それでもなくなりません。その理由は決算書作成は税法に則って作成されるからです。

<日本の決算書は税法の都合がそのまま反映されていて、本当の利益を表わしていないからです。言い方を変えると、税法の都合が決算書に反映されているので、決算書には多くのゾンビが潜んでいるのです。ゾンビの代表は固定資産です。一般的に建物やパソコンなどの備品が、この固定資産に当たります。(中略)これ以外にもゾンビ化しているものは ・繰延資産 ・前払費用 ・貸付金 ・保証金 ・電話加入権 ・不良債権 ・商品 などがあります。>

なぜこうしたことが言えるかですが、著者岡本氏は次のように断言しています。

<決算書の利益は「利益」ではない。これが結論です。あれは「税金を取るための数字」。税金の世界では「所得」といいます。中小企業の経営者は、あの数字を会計事務所から見せられて「利益」と思っているわけです。>
 つまりどういうことかと言えば、<税法は、「税金を取るための数字」と「利益」は違うという当たり前のことを前提に作られている>ということです。
<税金を取る側にすれば、税制とは税金をなるべく多く取ろうとするものだとわかっています。ですから、利益が多めに出るように制度を作って当たり前です。それは本当の利益よりも多いことぐらい最初からわかっているのです。>
 書店のビジネス書コーナーに行きますと、「経営分析」の本がたくさん棚に並んでいます。経営分析は果たして本当に必要なのでしょうか?

 この点について著者岡本氏は次のように考えています。
<「決算書」が読めても「経営分析」がわかっても資金繰りはよくなりません。むしろ、順調な経営なら「経営分析」なんかまったく必要ありません。「経営分析」が基本的に必要なのは、経営がうまきいかない時です。(中略)悪化している経営に必要なのは、決算書の分析なんかではありません。売り上げを上げることであり、利益を上げることです。>

システムE価格の意味を考える

 「値決めは最も大切なことの1つである」と名経営者稲盛和夫氏は述べています。高すぎても安すぎてもいけない。適正利益を得るためには避けて通れない重要問題です。

 よく言われるように売上は次の式で表わせます。

         売上高 = 数量 × 単価

   数量を増やすか単価を高く設定するか。両方とも増やすということはきわめて難しいことです。

 中小企業が取るべき選択は価格を高く設定するしかないのです。少量でも利益が出る経営を考えるべきであるというのが、著者岡本氏の主張です。まったく同感です。価格競争に陥ったら、体力のない中小企業に勝ち目はありません。

 一般的に言われる「顧客満足」とは異なることにご注目ください!

<顧客満足とは、高いお金を出してくれたお客さんに対して、あなた自身がその期待を超えようと一生懸命に尽くした時に生まれるものです。そして、それは良循環を生み出します。中小企業が生き残るにはこの循環しかありません。中堅企業、大企業には低価格戦略もあり得ますが、中小企業では原則として低価格戦略はあり得ません。>
<戦略なきままに安売りをするくらいならビジネス自体やめればいい。そして、自分の商品やサービスに高い値付けができないのは、単に自社の提供物に自信がないことの表れでしかありません。結局、中小企業の明暗はほとんどがここでつきます。(中略)企業業績を決めているかなめは価格です。>

システムFリスク

 優れた企業業績を上げている企業を見ますと、そこには必ずと言っていいほど採算の合わない、つまり失敗した事業からの素早い撤退が上げられます。仮に100の事業をするとしたら100すべてが成功するはずはありません。失敗はつきものです。

 ある程度リスクを負うことが必要です。その際には、単年度の赤字はいくらまでは認めるが、累損がいくらを超えた場合には撤退すると決めておけば大きな損害を被らずにすみます。

<ビジネスでは、進めていたことをサッとやめるのもテクニック。というか、進むことより引くテクニックこそが大事です。>
<リスクを最小限にすることは経営での重要な戦略の一つです。「ソリューション」という言葉があります。一般には「解決」と訳されていますが、「溶ける」という意味もあるそうです。つまり、「ソリューション」の意味は、問題を直接解決するという考えではなく、器を大きくすることで問題が溶けるという考えです。これはリスク論でも同じです。リスクを最小限にする方法は人の言っていることをうのみにしないで勉強を続けることです。これだけがリスクを減らす唯一の方法です。>

著者岡本氏が指摘している絶対におさえておくべき数字4つをご紹介して終わりにしたいと思います。

 ・一人当たり付加価値[粗利とか売上総利益]

 ・労働分配率[付加価値をどれくらい人件費に分配したかという指標]

 ・一人当たり経常利益[稼いだ利益を社員数で割った数字]

 ・ROA(総資本経常利益率)[経常利益÷総資産]またはCROA(総資本キャッシュフロー率)[キャッシュ÷総資産]

それら4つで望ましい数字はどのようなものかについては本書でお確かめください。

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