1億5000万円の借金を9年間で完済した男
この本は、著者木戸次郎氏の記憶に基づいて書かれた本です。木戸次郎氏の人生が「天国から地獄へ」180度転換するプロセスが克明に描かれています。
死を現実のものとして自覚し、必死に返済するさまは悲壮感を伴って伝わってきます。事実だからこそ、その当時の木戸氏の心のありようがひしひしと伝わり、胸を打ちます。
この本から学ぶことができたことは、死ぬ気になれば何でもできそうだということと、株式の世界で勝つためには想像を絶する厳しさがあるということでした。お手軽では勝負に勝てないのです。
「人の行く裏に道あり 花の山」という諺が正しいことを証明した本と言えるでしょう。
著者木戸次郎氏は、大学卒業後証券マンとしてサラリーマン人生をスタートさせます。入社後配属された支店で1年目にしてトップの成績を収めました。人一倍負けん気が強い木戸氏でしたから、他人と違うことをしてトップになろうとしていました。このあたりの経緯を次のように述べています。
<やっとのことで「地獄の特訓」が終わると、私は船橋支店に配属になり、営業の仕事に就くことになった。(中略)私はこの船橋支店で、それほど時間をかけることなく、預かり資産や獲得客数などで、トップの成績になった。そのほとんどが、船橋支店のこれまでの記録を塗り替えるものだった。>
実は、木戸氏は証券会社入社前、大学在学中に「弁当屋」を起業し、成功した経験を持っています。
<ここへくるまでに、弁当屋での成功の経験もある。手元には、1億8000万近い現金もある。こうなると、人間は驕慢から自由ではなくなる。私の目には、須崎さん(上司)ほか、私が一目置く数人を除いては、誰もがみんな、無能な人間に見えるようになっていた。>
株式の取引の中には信用取引があります。その信用取引で木戸氏は大きな損失を被ることになります。
<信用取引は、持ち金の2・5倍まで取引することができるから、投資効率は高い。そして、この信用取引に手を出したことが、最終的には私の息の根を止めることになってしまった。>
木戸氏がすごい人だと思うのは、株式で出した損失は株式で取り返すと決心し実際にやってのけたことです。
<「株で失ったものは、株で取り返す」という思いがあったのに違いないのである。この時点での私は、紛れもなく惨めな敗者である。そんな男が、捲土重来を期すとしたら、一度、私を完膚なきまでに叩きのめした相手に、今度こそ勝つしかない。私にとってのそれは、間違いなく株であった。>
莫大な借金を完済するために木戸氏が行なったことは次のようなことでした。
<誰もが手にすることのできる情報を元に投資したところで、確かに利益を確保する程度のことはできるだろうが、やはり、限界があるのだ。一般の人が入手しにくい情報を検討、分析して投資しなければ、大きな利益など望めるはずもない。私は、やっとそのことに気付いたのである。>
<私には、ある種の<投資哲学>が生まれたのである。所詮、株は少数の人間だけが儲ける仕組みになっている。ならば、他の人と同じことをやっていたのでは、利益を得られるはずがない。つまり、<人の逆をいけ>ということである。ほかの人が、悪条件にのみ気を取られているときにこそ、その中に潜む好条件に目を付ける。国際航業株での勝利は、まさしくそれであったと自負している。>
株式投資での勝利を通じて得た教訓は次のようなことでした。命懸けで返済のために株式投資している木戸氏からは鬼気迫るものがあります。
<最初に塩水港精糖株を買ったのが1993年の4月だから、実に1年3ヶ月をかけての大勝利だった。この投資からは多くの教訓を得たが、その中でも最も大きなものは、「信念があるときは焦らず、辛抱して、最後の最後まで、自分の判断を信じること」というものである。>
<私が9年間にも及ぶ借金返済生活の中で得た成功するための教訓は、「経済というものは自分の都合どおりには決して動いてくれない。だから、どんな苦境にあっても冷静に対処しつつ、自分で次のトレンドを見つける必要がある」ということと、「その時が訪れるまでじっと我慢する」の2点だった。私はこれを、<成功のための2大法則>として、座右の銘としている。特に「その時が訪れるまでじっと我慢する」というのが重要なのだが、実はこれが難しい。苦しければ苦しいほど焦りも大きくなるし、慌てて動きたくなりもする。たいていの投資家はじっと我慢することができずに失敗してしまうのである。>
木戸氏が命懸けで借金を返済したと書きましたがどんなことだったのでしょうか?
<街金(4社)で、私は各社500万円ずつ、合計2000万円を借りた。利息は年利で21パーセントの元金返済期間5年である。この契約方式だと、1ヶ月の利息が、各社8万2000円ということになる。年利21パーセントの利率といえば、この種の金融業者としては、極めて安い。しかし、その分だけ、厳しい条件が付いた。どの業者も口を揃えて、「もし、1回でも返済が滞ったら、遠洋漁業の船に乗ってもらうからな」といったのである。>
これはどういうことなのでしょうか?
<戦慄が、瞬間的に背筋を通り過ぎていった。私は、遠洋漁業での重労働が怖かったわけではない。金沢氏(相場師)に義務づけられた、生命保険のことを思い出したのである。―ある程度漁をやらせたら、事故を装って俺を殺すつもりではないのか。私は、そう恐れたのだ。警察の捜査も不可能な、本土を遠く離れた船の上での出来事である。海に叩き込まれて殺されても、それが発覚する可能性は低い。>
著者木戸次郎氏は「文庫版あとがき」で多額の借金を完済するまでの過去を振り返って次のように述べています。その心構えは参考になると思われますので、ご紹介します。
<私は24歳からガチンコで命を賭けて株式投資をしてきた。失敗が死を意味するような環境下で何年間も株式投資をしてきたので、株に関しては他の人よりも臆病なのだと思う。臆病だからこそ買う銘柄やトレンドに関しては病的なまでに徹底的に調査し分析し、自分が納得できるところまで調べつくさないと安心できないというのが本音なのだと思う。>
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