<日本ではロウアーミドルクラスに分類される収入でも、世界基準にあてはめれば、じゅうぶんアッパークラスに入る。しかし日本人の多くはその豊かさを享受できずにきた。私が本書で提案する変革は、ロウアーミドルクラス以下の生活を豊かなものに変える“質的変化”を引き起こすものである。 日本はこうした“質的変化”を遂げなければ、少子高齢化と高負担社会への移行が重なって、長期衰退から抜け出すことは不可能になる。少なくとも今後20年間は没落の時代が続くことになるだろう。日本が「生活者大国」として「新たなる繁栄」に踏み出せるかどうか。今がその最後のチャンスなのである。>
<この20年来、私が一貫して主張してきたことは、日本が生活者主権の国づくりに正面から取り組めば、「生活の質を上げてもコストは下がる」ということである。今の若い人たちはおそらく私の初期の著作は読んでいないだろうが、当時の認識としては「2005年までに一連の改革を達成しなければ、高齢化が進んで日本は自ら改革できない状況になる」というものだった。とくに平成になってからは、これらの改革を総称して「平成維新」と呼んできた。具体的には憲法だけではなく、あらゆる面で21世紀にふさわしい新しい法律を作り、日本を真の「生活者主権の国」にしていこうというものである。>
<所得格差の拡大にともなう所得階層の二極化、とりわけロウアーミドルクラス以下が国民の大半を占めることが及ぼす影響は、個々の生活にとどまらない。マーケットの劇的な変化を引き起こし、企業戦略の転換や組織体系の改編を促すとともに、日本の社会や国家の仕組みそのものにも大きな変革をもたらすことになる。>
<本当に有効な土地利用のためには、徹底的に規制を緩和・撤廃するか、都市近郊での農業を思い切って禁止するといった「第3次農地改革」を行うべきだ。そうすれば、非常に多くの住宅に適した土地が供給されるようになり、土地コストは格段に低くなるはずなのだ。(中略) 地価の下落はデフレを招くとしてマイナスにとらえられがちだが、その本質は地価の“適正化”である。生活者から見れば、地価が下がればその可処分所得が上がって生活に余裕が生まれ、住宅ローンに苦しんでいた生活自体が豊かに変わる。ロウアーミドル以下が8割を占める今の時代、地価の下落は日本が「生活者大国」になっていくための必要条件だと考えなければならないのだ。>
<日本政府の債務残高は、政府短期債務、財投債、地方・中央政府債務を合計すると2004年度で1033兆円に達している。これに対して税収はたった44兆円で、歳出は82兆円(うち国債費が20兆円)もある。一般家庭にたとえれば、1億円以上の借金を抱え込んでいる年収440万円の人が、利子の支払いも含めて年間820万円も使っているようなものだ。 これだけ債務が膨れ上がった原因は、歳入が減っているにもかかわらず、政府消費支出が増え続けていることにある。 では、この債務を減らすにはどうすればいいのか。まずやらなければならないのは、当たり前だが債務を減らすこと。次に支出の約4割を占める公務員給与を削減する、つまり公務員の数を減らして人件費をカットすること。そして無駄な公共事業や公共サービスをなくすこと。この3つの政府リストラが急務であることは、誰にも異論はないだろう。>
<日本が長期衰退の構造から脱するには、市場も社会も解放してヒト・モノ・カネが世界中から集まってくるようにする以外にない。日本に世界から流入してくる資金は年間わずか9000億円(2004年、UNCTAD資料)、ピーク時は3兆円だったが、それもほとんどがリップルウッドなどハゲタカファンドの類で、直接投資とは言いがたい資金だった。それに比べて、中国には年間7・3兆円(2004年、UNCTAD資料)が海外から流れ込んでいるのである。 金は入ってこない、企業は来ない、人も来ないのでは、産業が成長する条件はゼロに等しい。これでは長期衰退をとめることなど不可能である。>