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No.252 ★★★ 2008/03/05 Wed  ロウアーミドルの衝撃 大前研一 講談社
 2006/01/25
 今や、日本人の8割が「中流の下ロウアーミドル」以下。


この本の中で、大前研一氏は事実をありのままに述べています。私たち多くの中流の下ロウアーミドルの階層は好むと好まざるとにかかわらず、現実を直視せざるを得ません。


 巷間、「1%の勝ち組と99%の負け組に二極分化されつつある」という言葉が流布していますが、「8割が「中流の下ロウアーミドル」以下」という表現の方が実感に近いかもしれません。


 2008年も早や、3月に入り、2007年度末となりました。長い間デフレが続いていましたが、ついに食料品をはじめ値上げラッシュが相次いでいます。先頃、都市銀行は住宅ローン金利(固定)を引き上げました。
      
 私のような「中流の下ロウアーミドル」以下の人間にとって、ますます厳しい時代に突入しました。
      
 でも、もしかしたらあなたは「中流の上」さらに「上流」の階層に所属しているかもしれません。だとすれば、これからの時代は左団扇でいられるかもしれませんね。でもずっとそのクラスにい続けられる保証は何もありませんよ。


 では、本題に入りましょう。


 大前研一氏は「はじめに」の中で次のように述べています。ロウアーミドルクラスとはそもそもどのようなものなのか。世界的に見てどのような位置にあるのか。
      
<日本ではロウアーミドルクラスに分類される収入でも、世界基準にあてはめれば、じゅうぶんアッパークラスに入る。しかし日本人の多くはその豊かさを享受できずにきた。私が本書で提案する変革は、ロウアーミドルクラス以下の生活を豊かなものに変える“質的変化”を引き起こすものである。
 日本はこうした“質的変化”を遂げなければ、少子高齢化と高負担社会への移行が重なって、長期衰退から抜け出すことは不可能になる。少なくとも今後20年間は没落の時代が続くことになるだろう。日本が「生活者大国」として「新たなる繁栄」に踏み出せるかどうか。今がその最後のチャンスなのである。>


ここで1つ質問をします。「現象」の反対語は何でしょう? クイズ番組のようですね!
       
 「現象」の反対語は「本質」です。これはきわめて大切なことであると考えています。と言いますのは、マスコミをはじめとして、企業人も、現象面ばかりを捉えて、ものごとの本質を見抜くことができないケースが多いからです。
      
 その意味で、大前研一氏は一貫してものごとの本質を見抜いてきた数少ない人物であると考えています。

 具体的に見て行きましょう。

 <この20年来、私が一貫して主張してきたことは、日本が生活者主権の国づくりに正面から取り組めば、「生活の質を上げてもコストは下がる」ということである。今の若い人たちはおそらく私の初期の著作は読んでいないだろうが、当時の認識としては「2005年までに一連の改革を達成しなければ、高齢化が進んで日本は自ら改革できない状況になる」というものだった。とくに平成になってからは、これらの改革を総称して「平成維新」と呼んできた。具体的には憲法だけではなく、あらゆる面で21世紀にふさわしい新しい法律を作り、日本を真の「生活者主権の国」にしていこうというものである。>


すでにご存知のように、日本の政治家も官僚もそして私たち有権者もほとんど何もせずに今日に至っています。残念なことですがそれが現実です。

 ロウアーミドルクラス以下が台頭してきたことによる経済的、社会的影響はどのようなものなのでしょうか。大前研一氏は次のように指摘しています。
      
 <所得格差の拡大にともなう所得階層の二極化、とりわけロウアーミドルクラス以下が国民の大半を占めることが及ぼす影響は、個々の生活にとどまらない。マーケットの劇的な変化を引き起こし、企業戦略の転換や組織体系の改編を促すとともに、日本の社会や国家の仕組みそのものにも大きな変革をもたらすことになる。>


 これからは、本書の中で特に関心を持った個所に絞ってご紹介していきます。
 まず、土地の有効利用について大前研一氏はどのように考えているのか見てみることにしましょう。

 <本当に有効な土地利用のためには、徹底的に規制を緩和・撤廃するか、都市近郊での農業を思い切って禁止するといった「第3次農地改革」を行うべきだ。そうすれば、非常に多くの住宅に適した土地が供給されるようになり、土地コストは格段に低くなるはずなのだ。(中略)
   地価の下落はデフレを招くとしてマイナスにとらえられがちだが、その本質は地価の“適正化”である。生活者から見れば、地価が下がればその可処分所得が上がって生活に余裕が生まれ、住宅ローンに苦しんでいた生活自体が豊かに変わる。ロウアーミドル以下が8割を占める今の時代、地価の下落は日本が「生活者大国」になっていくための必要条件だと考えなければならないのだ。>


 私は「規制の緩和」という言葉は、官僚が自分たちの既得益権を保持し続けるためのものと考えています。そもそも、「規制の緩和」は英語の deregulation (ディレギュレーション)の訳語ですが、本来意味は「緩和」ではなく、「撤廃」です。その点を訳語によって内容をすりかえたと思えてなりません。「緩和」なら規制は存在し続けますが、「撤廃」はなくなることですから。

 次に、日本の債務はすでに1000兆円に達していることに、与党自民党、公明党、官僚を頂点とした公務員、さらに国民がどれだけ認識しているかという問題です。

 大前研一氏は、具体的な数字をあげて説明しています。

<日本政府の債務残高は、政府短期債務、財投債、地方・中央政府債務を合計すると2004年度で1033兆円に達している。これに対して税収はたった44兆円で、歳出は82兆円(うち国債費が20兆円)もある。一般家庭にたとえれば、1億円以上の借金を抱え込んでいる年収440万円の人が、利子の支払いも含めて年間820万円も使っているようなものだ。
 これだけ債務が膨れ上がった原因は、歳入が減っているにもかかわらず、政府消費支出が増え続けていることにある。
 では、この債務を減らすにはどうすればいいのか。まずやらなければならないのは、当たり前だが債務を減らすこと。次に支出の約4割を占める公務員給与を削減する、つまり公務員の数を減らして人件費をカットすること。そして無駄な公共事業や公共サービスをなくすこと。この3つの政府リストラが急務であることは、誰にも異論はないだろう。>


 最後に、大前研一氏が日本が長期衰退の構造から脱却する処方箋を提言していますので、ご覧ください。

 <日本が長期衰退の構造から脱するには、市場も社会も解放してヒト・モノ・カネが世界中から集まってくるようにする以外にない。日本に世界から流入してくる資金は年間わずか9000億円(2004年、UNCTAD資料)、ピーク時は3兆円だったが、それもほとんどがリップルウッドなどハゲタカファンドの類で、直接投資とは言いがたい資金だった。それに比べて、中国には年間7・3兆円(2004年、UNCTAD資料)が海外から流れ込んでいるのである。
 金は入ってこない、企業は来ない、人も来ないのでは、産業が成長する条件はゼロに等しい。これでは長期衰退をとめることなど不可能である。>


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