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ベンチャー企業への投資とベンチャー企業から見れば資金調達について、専門書を通じて、そのプロセスを明らかにし、それぞれのメリットとデメリットを浮き彫りにしていきます。

まず、未公開株式を扱う「グリーンシート市場(店頭取扱有価証券市場)」についての解説を見ていただきます。
未公開株を専門に手がけるディー・ブレイン証券の会長兼CEO/公認会計士である出縄良人氏の手による本が非常に参考になります。

次に、ベンチャー企業から見た「目的」と「手段」についてご紹介します。
続いてベンチャーキャピタルや個人投資家から見たベンチャー企業の「選択基準」と「リスク要因」についてご紹介することにします。

尚、内容が重複することがありますが、より深く理解するために必要であると考え、敢えてその都度おことわりしません。
ご了承ください。(2003/02/26) (2003/02/27 改訂)(2003/03/05 加筆修正)


No.1
[図説]ベンチャー株投資の実践ノウハウ  出縄良人 PHP研究所 2000/08/31

まず、「グリーンシート市場」とはどのようなものか見ていくことにしましょう。
<1997年7月、日本証券業協会が発表した未公開株式の流通制度は、金融ビッグバンの先駆けとして注目された。今ではグリーンシート市場と呼ばれているこの制度の正式名称は「店頭取扱有価証券制度」。未公開株式であっても、一定のディスクロージャーをしていることを要件に、証券会社による売買を認めた制度だ>

「グリーンシート市場」への登録要件については、次のように書かれています。
<グリーンシート市場に登録するためには、最低要件として「会社内容説明書」と呼ばれるディスクロージャー書類を1年に1度作成することが必要だ。しかし、ディー・ブレイン証券などは、これだけでは投資家に対する情報開示が不十分と考えている。そこで、登録企業には4半期報告書やタイムリーディスクロージャー(適時情報開示:注 藤巻)などのディスクロージャーを独自に義務付けている>

ディー・ブレイン証券ではヴァイメックス・クラブという投資家会員制度を構築し、VIMEX(ヴァイメックス=ベンチャー投資マート取引制度)銘柄を取り扱っています。

このVIMEX制度については、このような説明がなされています。
<VIMEX制度は、登録企業と投資家を証券取引法に代わって規制することで、グリーンシート市場における市場の透明性と公正性を保つための制度だ>

グリーンシート市場はエマージング市場、リージョナル市場、フェニックス市場の3市場に分類されています。
その内容を見ていくことにしましょう。
<エマージング市場は、成長性が高いと認定されるベンチャー企業の株式を集めた市場だ。(中略)リージョナル市場は地方の中堅企業の銘柄。(中略)フェニックス市場は、証券取引所や店頭市場から登録廃止となった銘柄が集まる市場だ>

ベンチャー企業のディスクロージャーに関し、どのような点に注意したらよいかについて5つのポイントを指摘しています。

1 マーケットの規模と成長性

事業の内容から、対象としているマーケットのセグメントを把握する。セグメントとは一定のニーズをもつ顧客群だ。その顧客群がどの程度の規模をもち、今後増えていくかどうかだ。

 2 利益の源泉

ビジネスモデルとして、現在の収益構造と、将来の想定される収益構造を考えることが必要だ。収益構造とは、どこからどのような収益が上がってくるのかの構造だ。誰に、どんなサービスを提供し、それがどのような対価として会社に入ってくるかということだ。

 3 会社の強さ(コアコンピタンス)

ベンチャー企業への投資にとって極めて重要なのは、その会社が何に強い会社かだ。強さの特徴、それを「コアコンピタンス」という。

 4 マーケティングストラテジー

マーケティングストラテジーとは、どのように事業を拡大していくかの戦略だ。

 5 研究開発活動

現在の会社の強さだけではなく、今後の経営資源の強化も念頭に置くべきだ。これまでの経緯として、コアコンピタンスを築いてきた企業が、今後もそれをより強化していく可能性をもっているのかどうか。>

担保となるものがないベンチャー企業が、市場から直接資金を調達(直接金融)するためにはグリーンシート市場などの未公開株式市場で取引されることが必要となります。

引受証券会社は、ベンチャー企業がグリーンシート市場などの店頭市場で取引されるのにふさわしい企業であるかどうか審査します。
具体的にはどのような点を審査するのでしょうか。
<審査の目的は大きく分けると二つある。第一に企業の内容だ。すなわち投資家から投資を受け入れるのにふさわしい会社かどうかということだ。第二にはディスクロージャーだ。自己責任投資の前提となるディスクロージャー がしっかり行なわれているどうか、そして今後、継続的に適正なディスクロージャーが行なわれていく体制となっているかどうかだ>



No.2
[図説]ベンチャー株市場のすべて  出縄良人 PHP研究所 1999/12/29

株式会社とは何かということから考えてみましょう。著者は「株式会社」を次のように定義しています。
<株式会社とは、そもそも株式が流通することを前提に作られた組織である>

しかし、同族経営の企業の場合ではどうでしょうか。経営者一族だけが株式を所有し、株式を公開する意思がほとんどないのが現状です。

その理由は2つあります。
1つ目は、株式を公開することによって持株比率が低下し、最悪の場合に会社を乗っ取られることを非常に恐れるからです。
2つ目は、経営の透明性と公正性を維持することがむずかしいからです。言い換えますと、経営をガラス張りにすることの不都合を感じるからです。

今だに、銀行は長年の不良債権処理が完了していません。それどころか、株価の下落により不良債権は増加傾向にあります。ですから「貸し渋り」や「貸し剥がし」だけでは根本的な解決にはなりません。
都市銀行が相次いで外資の投資銀行に巨額の出資を仰ぎました。その目的は、自己資本比率を高めるという資本の充実だけではなく、出資を通じて外資との関係を強化し、投資銀行が持つ不良債権処理の経験とノウハウを同時に手に入れたかったからです。

こうした状況では、資金を必要としているベンチャー企業や中小企業に対して、銀行は融資に応じず、ベンチャー企業や中小企業にはお金が回ってきません。その結果、資金繰りが悪化し廃業や倒産に追い込まれる例は枚挙に暇がありません。

昔から「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を貸さない」(必要のないときに金を貸し、必要なときには金を貸さない)とよく言われます。この状況はほとんど変わっていません。

マネーサプライ(通貨供給量)を増やせば市中にお金が回るかというと必ずしもそうではありません。行き場のないだぶついたお金は滞留することになります。
本来ならばお金を必要としているベンチャー企業や中小企業に融資が行われるべきですが、銀行は貸出しを増やすと不良債権化する危険性が高まるため二の足を踏みます。このため流動性が極端に低下しているのです。

貸し手(銀行)から見れば融資(貸付)は、債権であり、借り手(企業)から見れば融資(借入)は、債務です。
融資を銀行のバランスシート(貸借対照表)で見ますと、負債にあたります。融資が増加すると負債が増加します。このままでは、赤字になってしまうため融資の際には土地や定期預金を担保にとり、資産を増加させるという手段をとります。

バブルがピークを迎えた頃(1980年代末)を思い出してください。土地が異常な値上がりをしました。そのため通常であれば担保にとる土地に対して、掛け目(融資額の割合)を7割とするところを1.2倍あるいは極端な場合には2〜3倍にしていたそうです。
例えば土地の評価額が5億円とします。通常であればこの7割の3.5億円を融資額としていたのですが、10億〜15億円を貸し付けていたことになります。バブルの時代はそれでも地価が上がり続ける限り回転していきました。

ところが地価が暴落し、かりに2億円になったとしますと、融資額との差が膨大になり一挙に不良債権化したのです。そして、バブルが弾けて10数年経った今でも、未だに不良債権問題が解決できずにいます。

不良債権化したもう一つの理由は、株式持合いによって保有していた株式が下落し、取得価額を大きく下回ってしまったからです。つまり含み損を抱えてしまったのです。株式の持ち合い解消をしたくても、株価が下落していますから、売ればさらに下落に拍車をかけることになり、売りたくても売れない状況にあります。3月期末に好決算をしたくても、円高・株安が重なり、日本経済回復の重石になっています。

含み損を考える場合に、欧米と日本の会計基準の違いを認識する必要があります。欧米では時価会計が採用されていますが、日本では簿価会計が採用されています。

時価会計の場合、常に時価評価しますから含みという概念が存在しません。時価評価によって損益を確定します。
ところが、簿価会計の場合には、取得原価が帳簿に掲載され続けますから、実際に簿価に対して価額の上下があっても表面化しません。つまり、損益が発生しません。この点が大きな違いです。

去年、アメリカの企業の相次ぐ不正会計が摘発されました。これを表面的に見ますとアメリカの企業はダメになったと思えるのですが、実は時価会計が採用されていることに注意していただきたいと思います。本来、時価評価し、損益を確定しなくてはならないところを次期に繰り延べたことなどが原因です。一部には、時価会計を厳格に適用しなければならないのに、日本で行っているように緩めたのが根本的な原因と見る向きもあります。
ですから、日本にとってはアメリカ企業の不正会計事件の摘発は「対岸の火事」ではなく、欧米で採用されている(欧州とアメリカでは多少違いがあるようですが)「時価会計」を日本企業に適用するとほとんどの企業が不正会計で摘発されることになります。

日本経済はデフレ下にあり、この状態がさらに続きそうな様相を呈してきました。最近日銀総裁に決まった福井俊彦前日銀副総裁はインフレ・ターゲット論には否定的な見解の持ち主のようです。

日銀の新人事には国内外からの関心が高く、The Economist や Washington Post も関連記事をサイト上に掲載していました。
詳細につきましては日本に関する記事をご参照ください。

デフレについて、Washington Post がわかりやすい説明をしている個所がありますので、ご紹介します。

<デフレ ― 物やサービスの価格が下がること ― が企業の売上増大や設備投資さらに雇用拡大の動機付けを減少させ、経済の回復を困難にした> (Deflation--falling prices for goods and services--has reduced incentives for corporations to increase sales,invest in equipment and hire more people,making an economic recovery difficult.)

話を戻しますと、こうした現状を考慮しますとどうしたら資金調達を行なうことができるでしょうか。
間接金融から直接金融への時代の転換という大きな流れの中で、ベンチャー企業や中小企業はグリーンシート市場やVIMEX市場(既出)で未公開株式を流通させたり、店頭公開あるいは上場への道を選択肢と認識することが、問題解決への第一歩となります。

今後、中小企業は資金調達を直接金融という手段によって行なうことが不可避になってくるものと思われます。

その理由は、間接金融による資金調達では元金も利息も必ず返済しなければなりませんが、直接金融による資金調達では返す必要がないからです。この差は大きいと思います。


以下に店頭公開とVIMEXの比較表を掲載しましたのでご覧ください。


ベンチャー株市場の公開基準
店 頭 公 開 比 較 項 目 未公開株式市場VIMEX
500株以上の公募 株  数 な し
300人以上 株 主 数 な し
な し 純資産額 な し
な し 利  益 な し
5億円以上 時価総額 な し
あ り 四半期決算の開示 あ り
7 週 間 申請から上場・公開までの審査にかかる期間 2 週 間

「主なベンチャー株市場の公開基準」(P.171)の表を基に作成。

では、トータルでいくらぐらいのコストがかかるのでしょうか。1億円程度の公募増資の場合のコストを見てみましょう。

1億円程度の規模の公募増資であれば、通常1000万円以内で収まる。VIMEX登録後の追加公募増資については、さらにコストが下がる。返済の必要のない資金の調達であることを考えれば、高いコストではない

銀行からの融資による資金調達(間接金融)では元金も利息も必ず返済しなければなりませんが、グリーンシート市場やVIMEXでは<返済の必要のない資金の調達>(市場から直接資金調達=直接金融)であるということは極めて重要です。


「VIMEX(店頭取扱株式市場)」の登録手続きの一連の流れを見てみることにしましょう。ディー・ブレイン証券はこのように行なっています。

1 プライマリーデューディリジェンス

財務内容について、公認会計士がショートレビュー(短期財務調査)を行なう。

 2 内部格付け審査

担当コンサルタントが作成した審査依頼書に基づき、ディー・ブレイン本部の内部格付け審査にかける。

 3 目論見書の作成

株式の公募等に関連し、リスク等を詳細にディスクロージャーした「有価証券報告書」や「会社案内説明書」の作成が義務付けられる。
VIMEXではディー・ブレイン、またはベンチャー支援実務研究会の公認会計士等が目論見書の作成を代行している。

 4 公認会計士監査

目論見書には過去二期間の財務諸表が必要だ。監査手続きの一部ができない場合等でも、投資家の判断に資する適正な財務諸表が開示されていればよい。

 5 事業計画書の作成

3年から5年程度の中期経営計画書を作成する。今後の資本政策(未公開株式市場における増資や株式公開の計画)を立案することも多い。

 6 ディスクロージャー審査

ディー・ブレイン証券と、これを取り扱う証券会社が共同で十分かつ正確なディスクロージャーが行なわれているか否かを審査する。

 7 日本証券業協会ヘの届出

「会社内容説明書」または、「有価証券報告書」を持って、取り扱う証券会社が、それぞれ日本証券業協会に店頭取扱有価証券・気配公表銘柄(グリーンシート銘柄)の届け出を行う。

 8 気配提示と事業説明会

7の届出から十四営業日後に、日本証券業協会が正式に届け出を受理し、グリーンシート銘柄となる。証券会社は気配提示を開始する。VIMEXのWebサイトには会社内容説明書、または有価証券報告書が開示される。公募増資の投資勧誘はWebページで行われるとともに、事業説明会も開催する。>

次に、VIMEXに登録し募集するにはどれだけの費用がかかるか見てみましょう。


VIMEX(ヴァイメックス)の登録・募集費用の概算
項 目 費 用 頻 度
プライマリーデューデリジェンス 60万円 初年度
VIMEX登録審査料 140万円 初年度
監査費用*1 300万円〜700万円程度 毎年
名義書換代理人手数料 20万円〜60万円 毎年
VIMEX登録支援コンサルティング費用*2 100万円〜500万円 オプション
VIMEX募集手数料 資金調達額の3% 増資時
VIMEX登録維持費用 10万円 毎月

注:*1 監査法人または公認会計士と要相談
  *2 ディスクロージャー関連書類の作成指導及びIR指導、事業計画書作成、資本政策作成等のコンサルティングを
    発行企業の実情に応じて実施
  *3 このほか株券および目論見書の印刷費がそれぞれ30万円程度、官報広告が10万円程度必要

                                          (P.175の表を掲載)



VIMEXの特徴がまとめられているページがありますので、以下に掲載します。


VIMEXの特徴
[1] 日本証券業協会の「店頭取扱有価証券(グリーンシート銘柄)」が集まって流通する市場
[2] 登録および登録後の公募増資を通じて、未公開ベンチャー企業の資金調達のインフラとして機能
[3] 規制がないため、どんな企業でもディスクロージャー要件を満たせば、早期に低コストで公開できる市場
[4] 投資家は会員組織(VIMEXクラブ)に入会して取引に参加。定款、規則を遵守して、投資の自己責任、投資の社会的意義を認識し、公正な取引を維持
                                    (P.175の表を掲載)


ここで、「ベンチャー支援実務研究会」について触れておきます。
「ベンチャー支援実務研究会」は、(株)ディー・ブレイン(ベンチャー企業の成長支援コンサルティングを主な業務としている会社)が組織したもので、全国の公認会計士・税理士・コンサルタント200名を擁しているそうです。この200名のうち、120名が公認会計士で、この中で地域の中核となる公認会計士が札幌、横浜、名古屋、大阪、福岡のディー・ブレインの地域会社の社長を務めているそうです。(要約)


重複する個所がありますが、上記2冊の書評を掲載しています。ぜひ、ご覧ください。

[図説]ベンチャー株投資の実践ノウハウ  出縄良人 PHP研究所 2000/08/31

[図説]ベンチャー株市場のすべて  出縄良人 PHP研究所 1999/12/29

なお、私が考える優良企業というコーナーがありますので、併せてご覧ください。

「ベンチャー株市場」については、新たなテーマとしてこれからも探っていきます。









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