この文章は1997年10月23日・30日に発行された「不定期仏友」33・34号で発表した「素晴らしき『あしたのジョー』の世界」を、文体を多少いじって紙数の都合で割愛した部分も収録してつまり増補最終版として発表するものです。冒頭の文章は堅苦しくて面白いのでそのままにしました。
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<僕にとってジョーは、ほかのマンガとは、ジャンルも格も違うんです。なんでこんなに、このマンガに引きつけられるのかは、今でも分かりません。明日を読みたい、そんな気持ちで本を広げてたような気がします。僕の家の本棚は、マンガでいっぱいだけど、ジョーはいつも一番前に置いてあります。>(角川書店『千原史』39頁) そういうわけで、見ていきましょう。長いけど。 |
| ジョー | 「ゴーゴーゴ〜風がないている/ゴゴゴ〜♪ 風が〜〜ルルルル…ルルル〜ルル」(1巻23ページ) |
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| キノコ | 「風来橋の下に小屋をおったてちまってよ」(1巻82ページ) |
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| 段平の手紙 | 「あしたのために(その1) |
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| ジョー | 「そーら、それが正体さ。おれは理屈なんてえのは苦手だが、もしかすると葉子おじょうさまよ…あんた、おれやここにいる憐れな連中のためじゃなく」 |
| 葉子 | 「…」 |
| ジョー | 「自分のためにこんな慈善事業をやる必要があるんじゃないのかね。え? 自分のためによ」(2巻222ページ) |
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| 葉子 | 「『あした』……と言っているわね、しきりに…。『すばらしいあした』は、きょうという日を、きれいごとだけ…お体裁だけ整えて過ごしていては、永久にやってこないわ。血にまみれ、汗や泥にまみれ、傷だらけになって……他人には気ちがいあつかいをされる、きょうという日があってこそ……あしたは……ほ…本当のあしたは……!」(3巻15ページ) |
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| 西 | 「さっきワイがくらった一発は……いつか、鑑別所でわたりあった時にくらった一発とは、まるで別のもんやった……なんや、ようわからんうちに気を失のうてしまったが…、お…思い出しても、そらおそろしいパンチや…。えらいもんを身につけたもんやでジョーは…。ただ…ただワイが気がかりなのは…ジョーが一つ一つ、おそろしいパンチを覚えていくたびに…ジョー自身も一つ一つ…ふ…不幸せに…のめりこんでいくような気がすることや…」(3巻31ページ) |
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| 白木幹之介 | 「ふむ。あの矢吹という少年は、相手の強さを知りながらなお威張っとるのかね。とすると…あながち虚勢とばかりは言えんようだのう」 |
| 葉子 | 「どうして? おじいさま、そんなのは空威張りと言うんじゃありませんか」 |
| 幹之介 | 「相手が強いことを知らずして…あるいは強さを見こして強がるのなら、そのへんのありふれたあほうじゃが、知っていてなお強がる、これは悲壮な決意の現れでもあるぞ。あそこまで強がった以上、もし負けでもしたら、えらい恥をかくことになる。恥をさらしたくなければ、死んでも勝たにゃあならん。つまり、その切羽詰まったところまで、自分を追いこんだのが、彼の目的ではないのかな……?」(4巻139ページ) |
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| 教官 | 「いりゃあいたで厄介だし…、いなくなると変にさびしくなるなんて……おかしな男だよ、矢吹って奴は」(5巻65ページ) |
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| 段平 | 「この橋はな…、人呼んでなみだ橋という。いわく…人生に敗れ、生活に疲れ果ててこのドヤ街に流れてきた人間たちが、涙でわたる悲しい橋だからよ」(5巻72ページ) |
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| ナレーション | 「その晩おこなわれた、矢吹丈の退院祝いと、丹下拳闘クラブの発会式は、それこそなみだ橋がこわれるのではないかと思われるほどのにぎやかさであった−−。うわさを聞いたドヤ街の住人たちも、それぞれに酒びんや肴、お菓子などをかかえて集まってきたからである。 |
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| ジョー | 「するとさ…つまり、おれたちには、あしたってやつが、、、永遠に来ねえって事なんだ」(5巻143ページ) |
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| 新聞記者 | 「この様子じゃ…稲垣のほうが一まいじょうずのようだな」 (6巻107頁) |
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| 段平 | 「なんだこの野郎…、紀子さんにトランクスをプレゼントされたのがそんなに嬉しいのか」 |
| ジョー | 「ばかやろう、そんなんじゃねえやいっ!」 |
| サチ | 「そうだそうだ! あっ、赤くなったぞ! ますますあやしー!」 |
| キノコ | 「せえの、いきなうわさをたてられた〜ん」 |
| ジョー | 「ち…違うってば…ちくしょう。ま…まあ、聞いてくれよ!」 |
| サチ | 「じゃあ言ってみろよ言ってみろよ」 |
| キノコ | 「なーんだよん、言ってみなーっ」 |
| ジョー | 「つ…つ、つまりその…おれは、その…いままで世の中をわたってきて…な、なにをやっても不合格の烙印を押されつづけてきた…。それが…け、拳闘だけが、おれを合格させてくれたんだ。そ…そいつがうれしかったんだ」(6巻147・148ページ) |
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| ジョー | 「こんなところを見たくなかったぜ、西…。無様だな…惨めだな…ええ、おい!おまえはもう、みそっかすになり下がったんだ…。おれや力石の生きる世界からな…。見たくなかったよ…。おまえを信じていたかったよ…。」 |
| 西 | 「お…おっちゃんが、いつか言うたとおりやった…。いちど飲んでしもうたら…、いちど食ってしもうたら…それまでの減量が苦しければ苦しいほど…、もう耐えられんようになる…と…。わ…わいはあかん…。だめな男や…」 |
| ジョー | 「そうさ、お前はだめな男さ、男のくずさ。恥を知るがいいぜ、恥を! おれは断じて負けんぞ! 力石もおそらく苦しみに耐えるだろう。耐えるってことそのものが、拳闘の世界なんだ。おれたちは、その世界で生きていくんだ」(7巻189・190頁) |
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| 記者A | 「よく、あそこまでやって気が狂わないもんだよ」 |
| 記者B | 「いや…、力石って男は、すでにもう、気が狂っているんじゃないのか……?」 |
| 記者A | 「力石だけじゃない…。あの医師も、葉子って女もだ!」 |
| 記者B | 「おれは、この近代設備の粋をほこる白木ジムが気ちがい病院に見えてきたよ」 |
| 記者A | 「同感だね…」(8巻39・40頁) |
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| ジョー | 「ふふ…まあいいさ。今さらじたばたあわてたってしょうがねえ。このまんま打ったりかわしたりしているうちに…、野性の本能とやらが解決してくれるだろう、そいつを待つしかないさ」(同107頁) |
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| 葉子 | 「はっきり言います。あなたはリングでウルフ金串のアゴを割り再起不能にし、そしてまた、力石徹をも死に追いやった罪深きプロ・ボクサーなのよ。こんなところで酒にひたり愚痴をこぼしおだをあげてる気楽な身分ではないはずだわ!このままでは男として義理がたたないでしょう。あなたは二人から借りが…神聖な負債があるはず!いま、この場ではっきり自覚なさい、ウルフ金串のためにも力石くんのためにも、自分はリング上で死ぬべき人間なのだと!」(9巻124頁) |
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| ジョー | 「いま、おれの体の中で……おれの気がつかないほど奥のほうでチロチロ火が燃えはじめてるのが見えるんだ…。導火線みたいに、ゆっくりチロチロってよ…。ふふふ、へたをすりゃ自爆するおそれも無きにしもあらずだがな。はっはっはっはっはっはっ…」(13巻129頁) |
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| 葉子 | 「わたしは、この試合の…首謀者」(13巻221ページ) |
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| 紀子 | 「…矢吹くん…。もう、ボクシングやめたら? 矢吹くんてば…」 |
| ジョー | 「なんだよ」 |
| 紀子 | 「もうボクシングやめたら?…って聞いているのに」 |
| ジョー | 「どうしてそんなことばかり聞くんだい…」 |
| 紀子 | 「だって…このごろ矢吹くんを見ているとつらそうで…、疲れているみたいよ。精神的にも肉体的にも」 |
| ジョー | 「そんなふうに見えるかね」 |
| 紀子 | 「それだけじゃなくて…。あたし最近なんだかとてもこわいの。このまま矢吹くんがボクシングを続けていったら、いつか悲しい目にあいそうで…」 |
| ジョー | 「拳闘はな、弱肉強食の世界さ…。かみつかなけりゃかみ殺される、だからこっちとしちゃ必死で…、それこそ死にものぐるいでかみつくんだ。だが相手の流した血に対して、ある負い目が残るのもたしかだ。こいつはおれだけの感じかたかもしれないがな」 |
| 紀子 | 「なんの話…?」 |
| ジョー | 「まあ…とにかく変なたとえかもしれないが…。人を殺したやつは死刑になるって掟が世間にあるように、まがりなりにも拳闘の世界で血を流しっこして生きてきたからには…、今さら中途半端なかたちで疲れただの拳闘をやめたいだのって贅沢は言えねえような気がするんだよ。死んだ力石に対しても…。あごの骨をくだいて再起不能にさせたウルフ金串に対しても−。それと今度の、廃人になっちまったというカーロス・リベラに対しても…さ」 |
| 紀子 | 「そんな…。矢吹くん考えすぎよ。第一ボクシングはスポーツなんでしょう。スポーツに負い目だの死刑だのって感覚がすでにおかしいわ!」 |
| ジョー | 「だから、さっきおれだけの感じかたかもしれねえって断ったろ。よそうぜ、もう、その話は」(14巻94〜99頁) |
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| 紀子 | 「矢吹くんは…さみしくないの? 同じ年ごろの青年が、海に山に恋人とつれだって青春を謳歌しているというのに…」 |
| ジョー | 「……」 |
| 紀子 | 「矢吹くんときたら、くる日もくる日も汗とワセリンと松ヤニの臭いがただよう薄暗いジムに閉じこもって縄とびをしたり柔軟体操をしたりシャドー・ボクシングをしたりサンドバッグをたたいたり…。たまに明るいところへ出るかと思えば、そこはまぶしいほどの照明にてらされたリングという檻の中−煙草の煙がたちこめた試合場で酔っ払ったお客にヤジられ座布団を投げつけられながら闘鶏や闘犬みたいに血だらけになって殴りあうだけの生活…しかも、体はまだどんどん大きく伸びようとしているのに、体重をおさえるために食べたいものも食べず、飲みたいものも飲まず…。みじめだわ悲惨だわ、青春と呼ぶにはあまりにも暗すぎるわ!」 |
| ジョー | 「ちょっと言葉が足らなかったかもしれないな…。おれ、負い目や義理だけで拳闘やってるわけじゃないぜ。拳闘が好きだからやってきたんだ。紀ちゃんのいう青春を謳歌するってこととちょっと違うかもしれないが、燃えているような充実感は今まで何度も味わってきたよ…血だらけのリング上でな…。そこいらの連中みたいにブスブスとくすぶりながら不完全燃焼しているんじゃない…。ほんの瞬間にせよ、まぶしいほどまっ赤に燃えあがるんだ。そしてあとにはまっ白な灰だけが残る…燃えかすなんか残りやしない…。まっ白な灰だけだ。そんな充実感は拳闘をやるまえにはなかったよ。わかるかい紀ちゃん。負い目や義理だけで拳闘をやってるわけじゃない、拳闘が好きなんだ。死にものぐるいでかみあいっこする充実感が、わりとおれ、好きなんだ」 |
| 紀子 | 「矢吹くんの言ってること…なんとなくわかるような気がするけど…わたし、ついていけそうにない…」(14巻102〜105頁) |
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| 段平 | 「お、おめえほどのパンチ力がありゃあ、身をけずってまでバンタムにこだわらんでもフェザーに転向して立派に通用する」 |
| ジョー | 「だめだって言ってるんだ。おれは転向しねえ、永久にバンタムで生きる」 |
| 段平 | 「なんだと…」 |
| ジョー | 「おっちゃんよ…この際はっきり断っておくが、バンタムというところはな、バンタムというところは、あの力石徹が命を捨ててまでおれとの男の勝負のためにフェザーからおりてきた場所なんだ。それでなくてもリミットぎりぎりだったっていうのに…。さらに一段おりてきてくれたんだぜ、今のおれの減量苦なんぞ比じゃねえ、それこそ地獄の底をのたうちまわる苦しみだったろう。ちょっとくらいつらいからってサヨナラできるかよ。生涯の敵−生涯の友との古戦場バンタムによ」 |
| 段平 | 「…」(15巻81〜82頁) |
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| 段平 | 「な…もうこれ以上無理なんぞするんじゃねえ…。だいいちこれほどの土壇場まで減量と戦ってきたんだ、力石だってもう納得してくれるさ」 |
| ジョー | 「ふふふ…なにも力石を、力石を納得させたくて…減量してるわけじゃねえ、勘違いするない…。バンタムにとどまるってことは…今やもう、おれが生きていくうえの必要条件なんだ。ボクシングをやっていくための不文律なんだっ…!」(15巻117〜119頁) |
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| 金 | 「わたしは、いくら知らなかったとはいえ、ほんのわずかな一握りの食料のために自分の父親を石でたたき殺した男さ。ふふふ、それからというものは、一度も満腹したことがないから、胃袋は小さく小さくちぢこまる一方−おそらく子ども並だろう。許容量が決まってしまい、なにを食ってもすぐに満腹してしまう。したがって血となり肉となる消化量も決まり、体重増加の心配などしたくともしようがない…。減量苦だと? はっ、そんなものわたしに言わせるなら、少なくとも過去に腹いっぱい食った時期がありだらしなく胃袋を拡げてしまったやつの贅沢さ」(15巻212頁) |
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| 千原浩史 | 読んでいても必ず止まってしまう箇所が、「ジョー」の中には何カ所かあって、もちろんその時の精神状態によってどこか、は違うんですが―。そのひとつが、さっき言った、のりちゃんのところであり、もうひとつは金龍飛の言葉。 |
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| ジョー | 「減量のへたくそな満腹ボクサーが…、あの偉大なる金竜飛に勝てるわけがねえ…、と、そうすっかり思いこんでしまったんだ。しかしなにか…なにかひとつこの金には屈伏しきれないものがあった…」 |
| 金 | 「う…、…う」 |
| ジョー | 「そ…そのなにか…とは、あの、死んだ力石徹も飢え渇いていたという事実だっ…!」 |
| レフェリー | 「ファイトッ」 |
| ジョー | 「一握りの食料のために親を殺した金は、まだしも水だけはガブ飲みできたろうが…、力石は「水さえ」も飲めなかった…! しかも、金は「食えなかった」んだが、力石の場合は自分の意思で「飲まなかった」「食わなかった」…! 飲まず食わず、、、それゆえの死とひきかえに…。力石徹は男の戦いを全うし、おれとの奇妙な友情に殉じたっ! なんのことはねえ…死の寸前の飢えがなにも絶対じゃねえ、自らすすんで地獄を克服した男がいたんだ! おなじ条件で! 人間の尊厳を! 男の紋章ってやつを! つらぬきとおして死んでいった男をおれは身近に知っていたんじゃねえかっ!」(16巻104〜107頁) |
| ジョー | 「金竜飛よ…おまえは力石に劣るんだ…」 |
| レフェリー | 「コーナーへ下がれと言うのが聞こえないのか、矢吹っ!」 |
| ジョー | 「おまえは…自分だけが大変な地獄をくぐってきたかのようにタテにとり…しかもそいつを自分の非情な強さとやらのより所にしているようでは…なあ。はっきり力石に劣るぜ!」 |
| レフェリー | 「フォー、ファーイブ、シーックス、セブーン」 |
| ジョー | 「今までは…、今までは、ついついご大層なものみてえに錯覚しちまっていたが…」 |
| レフェリー | 「さあファイトッ」 |
| ジョー | 「このさい、力石以下のおめえさんに負けたとあっちゃ、彼に対してなんとも申し訳がたたねえんだよーー〜〜っ!!」(16巻112〜115ページ) |
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| ジョー | 「出ていけえ〜っ! ここは女の来る場所じゃねえ! 出ていけえ〜っ! カーロスを見るんじゃねえ! 出ていかねえとぶっ殺すぞーっ!」(19巻129ページ) |
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| 葉子 | 「矢吹くん、リングへあがるのはおやめなさい! 手紙に書いた、あなたにとってショッキングな事実……というのを言います」 |
| ジョー | 「どうした…早くいえよ」 |
| 葉子 | 「矢吹くん…あなたの全身はパンチ・ドランカー症状に蝕まれています。しかも相当の重症の…! これは斯界の権威ドクター・キニスキーの診断であり厳然たる事実です!!」 |
| ジョー | 「…だからどうした…」 |
| 葉子 | 「…だから…どうした…? その体でリングに上がり、あのホセ・メンドーサの猛威にさらされれば、あなたは一生を廃人として送ることになるんですよ。あの可哀想なカーロス・リベラのように!!」 |
| ジョー | 「カーロスのことは口にするなよ! あんたがカーロスのことを口にしちゃいけねえ! あんたにはその資格がねえ」 |
| 葉子 | 「彼の…いえ…彼のことはともかく、今さら今夜の試合を中止するとなれば、当然莫大な違約金をチャンピオンや主催者たちに支払わなければならないでしょう。それは全額わたしが負担します。ですから…お願いだから今すぐ引退を発表して!! 聞いてるの矢吹くん!」 |
| ジョー | 「いろいろ言ってくれるが…無駄だ、よしな」 |
| 葉子 | 「…ま…まさか…まさか知っていて…廃人になる運命を覚悟のうえでリングにあがるというのではないでしょうね…!?」 |
| ジョー | 「ふふふ…あんたからご丁寧な忠告を聞かせてもらうまでもなく、以前からうすうす知っちゃいたさ、自分の体だよ。だからってどうってこともないさ。もうここまで来ちまってはな。すでに半分ポンコツで勝ち目がないとしたって、そういうことじゃないのさ」 |
| 葉子 | 「や…矢吹くん…!」 |
| ジョー | 「せっかくだが出てってくれ。いつかも言ったろう…ここは女の来る場所じゃねえ…。あんたが出ていかないのなら、おれが出ていくぜ」 |
| 葉子 | 「待ってよ矢吹くん!」 |
| ジョー | 「まだなんか話があるのかい」 |
| 葉子 | 「お…お願い待ってちょうだい」 |
| ジョー | 「ほう…あんたにも涙ってものがあるとは意外だったな」 |
| 葉子 | 「たのむから…リングへあがるのだけはやめて…一生のおねがい…」 |
| ジョー | 「……ま…、心配してくれてるらしい…。光栄だね、ありがとうよ」 |
| 葉子 | 「好きなのよ矢吹くん! あなたが!! 好きだったのよ…最近まで気がつかなかったけど…。お願い…わたしのために、わたしのためにリングへあがらないで!!」 |
| ジョー | 「こいつあ…おどろいたな。とんだ衝撃の告白だ。女性週刊誌にそのネタを売ってみな、大よろこびで飛びついてくるぜ」 |
| 葉子 | 「まじめに聞いて矢吹くん」 |
| ジョー | 「おれがふざけているように見えるかい…。よしてくれ、女が軽々しくそんなセリフを吐くもんじゃねえ。実に安っぽく見えるぜ」 |
| 葉子 | 「安っぽく見えようがどうだろうがそんなこと問題じゃない…この世でいちばん愛する人を…廃人となる運命の待つリングへあげることは、絶対にできない!!」 |
| ジョー | 「…」 |
| 段平 | 「ジョー…おいジョー! どうした開けろ! そろそろ出番だぞ、なにしとる開けんかジョーッ」 |
| ジョー | 「…リングには世界一の男、ホセ・メンドーサがおれを待っているんだ。だから…いかなくっちゃ」 |
| 葉子 | 「矢吹くん……」(19巻208〜216頁) |
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| 段平 | 「ジョー…、もうよそう…。あ…あの偉大なチャンピオンを相手に、ここまでしかも片目だけでこんなに立派に戦ったんだ。もうこの辺でおしまいにしよう。わしは…わしゃあもうこれ以上見ちゃいられねえ、もうたくさんだ!」 |
| ジョー | 「待ってくれよおっちゃん…。おれは…まだまっ白になりきっていねえんだぜ」 |
| 段平 | 「まっ白……?まっ白だあ…どういう意味だジョー」 |
| ジョー | 「いつだったかなあ…。たしかあれは…後楽園球場でカーロスと一戦をまじえたあとだったと思うが…なんとなく目標を失ってぼんやりしていた時期があったんだよ。そのときあの林屋の紀ちゃんにもうボクシングはやめたらどうか…といわれてね」 |
| (回想シーン。既に引用してあるのでそこを読むように) | |
| ジョー | 「わかるかい…。つまり…その燃えカスが、まだ残っているんだよ。ブスブス…とな」 |
| 段平 | 「まだやるってえのか、そんな体で…」 |
| ジョー | 「頼むやおっちゃん。頼むや…。まっ白な灰になるまでやらせてくれ、なんにも言わねえでよ…」 |
| 段平 | 「ジ…ジョー…」(20巻186〜191頁) |
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| ジョー | 「葉子は……いるかい」 |
| 葉子 | 「こ…ここにいるわ、矢吹くん…!」 |
| ジョー | 「このグローブ…もらってくれ。あんたに…もらってほしいんだ…」 |
| アナウンサー | 「レフェリーが判定を読みあげます、勝敗はどちらか…緊張する一瞬!!」 |
| 段平 | 「…ジ…ジョーに……」 |
| レフェリー | 「ホセ!!」 |
| 段平 | 「ああ…」 |
| アナウンサー | 「ざんね……残念です!!ぜ…善戦むなしく敗れました、日本の矢吹!!…」 |
| 少年院仲間 | 「ああ…っ…ホ、ホセの顔を見ろ…」 |
| 青山 | 「髪の毛も…あんなに…」 |
| 段平 | 「お……惜しかったなジョー……しかし…ようやったぜ、わしゃあもう…もうなんも言うこたあねえ。よう…やった…ジョー……」(20巻256〜259頁) |
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さてそのあと、ジョーはどうなったのか。色々な説はあるが、作者に聞くのが手っ取り早い。アフターケアも十分な佛友会はここにちばてつやの言葉を引用してこの稿を終えるよ。 | |
2002.6/14→2007.6/14(青山くんの話を訂正)