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大いに惑う そのうち右側に空港が見えてくるはずなのだが、右側には山と線路しか見えない。奥様に線路は右側でいいんだよね?と改めて尋ねると、どうも様子がおかしい。線路は左側にあるべきなのだが、完璧な勘違いで、ローマ市街とは反対方向へ向かっていたのだ。8番の出口でも確かローマ市街方面の出口に出たような気がするのだが、どこをどうまちがったのかはもうわからない。まあ道はあっているわけだし、Uターンすればいいじゃん、といささかヘコみ気味の奥様をなぐさめつつ方向転換できそうな路肩を探して再びローマ市外を目指す。奥様のヘコみ具合は相当なもので、ゴメンねを連発するもいつもの口数の多さはどこへやら、車内にどんよりとした空気が漂う。
とにかくこの通りをまっすぐ行けば帰れる、と藁にもすがる思いで突き進むが、市街地にはいるとやっぱりどこで曲がったらいいか不安になってくる。奥様も必死で地図と首っ引きとなるが、通りの名前はおろか現在地までよくわからなくなってくる。交通量もしだいに増えてきて、いつのまにか渋滞の真っ只中にいた。どうやら前方の交差点で事故があったようで、パトカーや救急車のけたたましい音が聞こえてくる。これが帰れないという不安感をあおって、信号ぎりぎりで交差点に突っ込んで警官の制止をうけるもこれを振り切ってさらに進んでしまう。交差点を渡った先はさっきまでの喧騒がうそのような静かな通りで、路肩も空いていることから落ち着いて地図を見ようと車を止める。 通りの名前を確認して地図で探すが、とにかくみつからない。あとで落ち着いて考えれば、持っていた地図からはみだしたところだったので見つかるわけがないのだが、これでさらに輪をかけて焦りがつのる。 「ここまできてなんでこんなに苦労しなけりゃいかんのか」、「レンタカー返すのも間に合わなかったらどうすりゃいいんだ」、「だから明るいうちに帰ってきたかったのに」、と一気にフラストレーションが爆発し、ハンドルを叩いて八つ当たりしてしまう。こんな状況では助手席の奥様もさぞつらかったに違いない。地図を持って現在地を確認してくる、と車を降りてしまった。そんなことをしても見つかるはずもないのに、やはりすぐに車に戻ってきてくれた。 とりあえず前に進もう、としばらく行くと、遠くにライトアップされた大きな建物が見えてきた(多分フォロ・イタリコだったのだろう)。右側にガソリンスタンドがあって、人がいるのが見えた。この期に及んで道を聞こうかグズグズしている夫をよそに、奥様は果敢にも地図を持って道を聞きに行こうと車を降りる。こういうときの度胸のよさは相当なもので、つなぎを着た給油中のオジサンをつかまえて英語で話し掛ける。オジサンは残念ながら英語はわからないようで、Hertzのある”Villa
Borghese”を連呼すると、Hertzの斎藤洋介おじさんと同じように”Villa
Borghese, Villa Borghese, Villa Borghese”と3回繰り返し復唱するのだった。どうやらお客らしい人となにやら話をして、とにかくまっすぐ行って(“Diritto,diritto,diritto)、広場に出たらそれを左に行け(身振り手振り付で”A
sinistra”)、というようなことを教えてくれた。こういう親切のありがたさは身にしみる。少し気を取り直して進むことにする。
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