P THE MEN WHO HAVE ENDED
P終わっている男達
P第4回
ジョー・ザ・シンドローマー



 マイケル、ニコラス、パウロ、ショーターの四人は一つづつのデックを手に持ち、高いビルの下に立っていた。

 「準備はいいか!」

 中心的人物であるマイケルは自らを鼓舞するように叫んだ。

 「オウ!!」

 3人の声が被さる。

 「野郎ども行くぞ!!」

 今、四人はモンコレ大会の会場の下に来ていた。





 会場はパウロが思っていたよりもずっと広かった。

 (200人は入れるか・・・)

 パウロは会場の下見に余念がない。

 (僕がしっかりしなきゃ他の3人はなにもできないんだからな。)

 トイレの位置を確認し、避難経路も頭に入れる。

 4人の後にも次々に人が現れる。

 既に100人は越える勢いだ。

 (これは200じゃきかないな、早く来て正解だった。)

 人は後から後から増えていく。

 (これだけのモンコレプレイヤーが隠れていたとは、大都会は恐ろしいな。)

 パウロの予測は次々に裏切られていく。

 しかしそれは逆に気持ちの良いほどだった。





 しばらくの後、会場にいるほぼ全員の登録が済み、主催者の挨拶と、諸注意などが行われた。

 そして、ついに始まった。

 「モンコレファイト!!」

 主催者が掛け声をあげた。

 会場の全員がそれに答える。

 「レディー ゴー!!」





 それぞれの対戦相手が発表され、席に着く。

 4人とも離れた席になってしまった。

 (どうせ試合中は話せないからいいか。)

 パウロは対戦相手を見た。

 14歳くらいの爽やかな印象のする少年だった。

 ここは互いに自己紹介するのがマナーだ。

 「ヨハネ・パウロ・ルカ・マタイです。」

 パウロが言うと向かいの少年も返した。

 「ジョー・マルクスです。」

 「じゃあジョー君・・・」

 パウロが語ろうとすると少年はさり気なく遮った。

 「カヲルでいいよ。」

 ??カヲル?今聞いた何処にカヲルと言う名前があっただろうか?

 何処をどう省略してもカヲルなんて愛称にはなりはしない。

 (この男はまさか・・・)

 パウロは必死でその考えを振り払った。

 (まだ決まったわけじゃない。)

 「モンコレはいいね」

 少年は続けた。

 「そう感じないか、碇シンジ君。」

 「どうして僕の名前を・・・」

 そんな風に呼ぶのか、と続けようとした瞬間を狙ってまた少年が遮る。

 「知らない者は無いさ、失礼だが君は自分の立場をもう少し知った方がいいと思うよ。」

 (僕の立場?この前の大会で3位だったことだろうか、しかしあの大会はこんなに規模がでかくなかったし、それに参加者は全員覚えているが、こんな少年はいなかった筈だ。)

 パウロは根本的な問題から無意識に遠ざかろうとしていた。




 
 なし崩し的にデュエルは始まってしまった。

 そして以外にあっさりと勝ちを掴めそうになった。

 するといきなり少年がカードを持っている手を掴んできた。

 あわてて手を引っ込める。

 「一時的接触を極端にさけるね君は、恐いのかい?」

 (当たり前だ、今手札を見られたら、手に入れ掛けた勝利が水泡と化してしまう。)

 「ガラスのように繊細だね、特に君の心は。好意に値するよ。」

 「好意?」

 パウロは思わず聞き返してしまった。それが滅びの言葉だと解っていたのに・・・

 「好きってことさ。」

 パウロは確信した。目の前にいる男は『フィフス・チルドレン症候群』にかかっている。

 しかも末期だ。

 こうなったらもう元には戻らない。

 できることは引導を渡してやることぐらいだ。

 しかし、少年には解っていたのだろう。

 パウロが考えている間も少年はしゃべり続けている。

 「僕が勝ちつづけることが、僕の運命だからだよ、結果、人が滅びてもね。だがこのまま負けることもできる、勝ちと負けは等価値なんだ僕にとってはね。みずからの敗北、それが唯一の絶対的自由なんだよ。」

 パウロはもう諦めていた。

 (つきあってやるしかない・・・)

 「なにを・・・カヲル君、君が何を言ってるのか解らないよ。カヲル君!」

 「投了だよ。」

 投了は自分のターンにしかできない事を忘れていた様だが、すぐに思い出したらしい。

 少年は続けた。

 「さあ、僕を倒してくれ、そうしなければ君が消えることになる。滅びのときをまぬがれ、勝利をあたえられる生命体はひとつしか選ばれないんだ。そして君は負けるべき存在ではない。」

 転がりだした石は誰にも止めることはできない。

 「ありがとう、君に会えて嬉しかったよ。」

 たっぷり一分間の沈黙の後、パウロの攻撃によってカヲルの本陣が落とされた。

 (終わった、何もかも。)

 パウロは、ジャッジに勝利を宣言して席を立った。

 そしてトイレに行こうとしたその時。

 「やあ。一緒に行ってもいいかい?」

 「えっ。」

 パウロは突然後ろから掛けられた声に不吉な予感を覚えた。

 「トイレだよ。」

 振り返ると、さっきの少年がにこやかに立っていた。

 「ダメなのかい?」

 パウロは・・・


第4回 完
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