P THE MEN WHO HAVE ENDED
P終わっている男達
P第5回
ショーター・ザ・コレクター



 「最近、また新しいモノを飼いだしたんだ。」

 ショーターはマイケルに向かって言った。

 マイケルは、またか・・・と言う顔で聞いた。

 「今度は何を買ったんだ?」

 そう、ショーターは気に入った物を見ると、名前を付けて持ち帰って来るという癖があった。

 店に売っていたらちゃんと金を出して買ってくるが、落ちている物は問答無用だ。

 「サボテンマンだよ。」

 ショーターは事も無げに言った。

 どうやらサボテンを買ったらしい。

 「前のモンスタープラントはどうしたんだ?」

 モンスタープラントは、鉢植えだった。

 決して大きくはないが、何故かショーターはそれを『モンスタープラント』と呼んで大切にしていた。

 「ああ、あれは・・・枯れたよ。」

 ショーターは寂しそうな表情で語った。

 「サボテンマンを買った次の日にね。」

 「そうか・・・残念だな。」

 マイケルはとりあえず慰めようとしたが、必要なかったらしい。

 「でもいいんだ、サボテンマンがいるからね。」

 ショーターの表情は突然明るくなった。

 「サボテンマンが来たからモンスタープラントを移そうと思ったんだ。だけどモンスタープラントだろ?あいつは根で動くはずだから鉢植えに植えたんじゃ動きがとれなくてストレスがたまりそうだと思ったからね。」

 ショーターの目は虚ろになっていく。

 「だから掘り返してそのまま見てたんだ。でも全然動かなくてさぁ・・・」

 マイケルは何かがおかしいと思い始めていた。

 ショーターはいろいろな物に名前を付けて飼ってはいたが、決してこんな風に植物を擬人化したりはしなかった・・・

 「おい、大丈夫か?」

 マイケルは不安になった。

 「なにが?ああ、モンスタープラントか、だから枯れたんだって。」

 その答えはマイケルの質問とは離れた答えだった。

 
 (キーンコーンカーンコーン)
 

 「あっ、授業が始まった。」

 ちょうど、チャイムに遮られた格好だ。

 ショーターはこれで終わりと言うように机に向かった。





 「じゃあ家に来るかい?」

 授業が終わった後、マイケルはショーターに問いつめた。

 しかしショーターはなにもなかったように答えた。

 「サボテンマンを見せてあげるよ。」

 そして二人はショーターの家に向かった。





 「今、誰もいないんだ。」

 ショーターは家の鍵を開けながらマイケルに言った。

 マイケルは黙って扉をくぐった。

 マイケルはもう確信していた。

 (ここには何かがある)



 そして、ショーターの部屋に通された。

 そこには鉢に植わった一つのサボテンがあった。

 西部劇に出てきそうなサボテンだった。

 大きさは20cmくらいだが、別に変わったところはない。

 「これがサボテンマンだよ。」

 ショーターはそう言うとそのサボテンをこっちに向けた。

 !!

 マイケルは叫び声をあげそうになった。

 そのサボテンが突然振り返ったのだ。

 そこには黒くて丸いクチと目が・・・

 「さあサボテンマン、マイケルに挨拶しなさい。」

 サボテンマンはニタ〜と笑った。




 マイケルは一目散に駆け出した。

 後ろも振り返らない。

 振り返ってあのサボテンがあったら・・・

 そう思うと目を開けているのも恐くなる。

 ショーターの家を出て大通りを過ぎ大急ぎで家に入った。

 そしてすぐに鍵を掛ける。

 そこでマイケルは初めて気が付いた。

 鞄がない。いや、手に持っていた物は全部なくなっていた。

 どうやらショーターの家に落としてきてしまったらしい。

 しかし取りに行く気にはなれない。

 (あれはいったい何だったのだろう)

 マイケルの思考回路はやっと回復してきた。

 (本物のサボテン・・・だったんだろうか?いや、そんなはずはない)

 マイケルは必死に現実に戻ろうとした。

 そこで一つの可能性に気が付いた

 (そう言えば聞いたことがある。サボテンには知力があると、そして不思議な魔力のような物があると。ショーターはその魔力に当てられたのだろうか?そして俺も?)

 (いや、あれは幻覚だ。)

 マイケルは考えるのを止めた。





 「マイケル、昨日の忘れ物だよ。」

 ショーターは鞄をマイケルに手渡した。

 「突然帰っちゃうんだもんなぁ。」

 「ああ悪い、突然気分が悪くなってな。」

 マイケルは思い切ってサボテンの話を切りだした。

 「そう言えば昨日のサボテンだけど・・・」

 「ああ、あれは・・・枯れたよ。」

 「そ、そうか。」

 マイケルは少し残念に思った。

 (謎は謎のままか・・・)

 「実はあの後、また新しいモノを手に入れたんだ。」

 ショーターはとっておきの秘密を話すように言った。

 「今度は何だ?」

 「ああ、花園の歌姫だよ。」

 ショーターの瞳にはもうなにも映っていなかった。

 「なかなかかわいいヤツだよ、良く気が付くしね。歌姫ってだけあってとっても歌がうまいんだ。今度君にも聞かせてあげるよ。ああ、他の人間には内緒だよ。そうだ、ついでに彼女の手料理も・・・」


 ああ、まだ何も終わっていなかったんだ・・・


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