


ジョルジュ・ザ・ハイソサエティ
のどかな日曜の午後、ジョルジュはアールグレイの入ったティーカップをもてあそびながら言った。
「なぁセバスチャン、今世間には『カレカノ』だか『アンドレ』だとか言うゲームが有るそうじゃないか。」
セバスチャンは眉をひそめながら答えた。
「モンコレ・・・の事でしょうか?おぼっちゃま。」
「そう、その『ボンゴレ』だよ。」
「『モンコレ』で御座います。」
すかさずセバスチャンが訂正する。
「名前なんかどうでもいいよ、要はそのゲームのことだ。」
「はぁ。」
「僕もやってみたくなったんだ、ちょっと用意してくれないか。」
「は、左様でございますか、それならばこのセバスチャンのコレクションが御座いますので直ちに御用意できます。」
「なんだセバスチャン、お前もやっていたのか僕に内緒で、この僕は除け者か?酷いな。」
「いえ、そう言うわけでは、・・・それからおぼっちゃま、実はこれからの事は旦那様にはご内密に願いますが・・・」
セバスチャンの言葉にはいつもの歯切れの良さが無くなっていた。
「なんだ、ここにはお前と僕の二人しか居ないぞ。」
「は、実は・・・旦那様からは『モンコレ』を禁止されておりまして・・・」
「ん?禁止?なんでだ?」
「それは、ここではお話しできない理由がありまして・・・どうかお察し下さい。」
「解った、秘密は守るぞ、さあ早く『ボンゴレ』を持ってこい」
「は。」
セバスチャンはそっとため息をついた。
「これがモンコレで御座います、おぼっちゃま。」
セバスチャンは一抱えでは持てない箱を台車に載せてきた。
「ん?この箱で遊ぶのか?難しそうだな。」
「ちゃんと中身が御座いますので安心を、これで御座います。」
セバスチャンは一つの箱からカードを取り出して見せた。
「ほう、なかなか美しいな。」
「左様で御座いますな。」
「それでどうやって遊ぶのだ?こうやって地面に打ち付けてひっくり返すのか?」
!!
その瞬間、普段では眉毛に隠れているセバスチャンの目が見開かれた。
ジョルジュも不意の殺気に動きを止める。
「おぼっちゃま、これはトランプのように手に持ち使うのです、メンコなどという野蛮な遊びとはくれぐれも混同せぬように願います。」
「・・・ああ、解った。」
普段と違うセバスチャンの厳しい様子に、ジョルジュは気圧された。
「では、これから説明をいたしますが、その前に手袋の着用を願います。」
「手袋?僕の手は綺麗だぞ。」
セバスチャンは無言で眼光を向けた。
「・・・ああ、解った。手袋をくれ。」
セバスチャンは手袋を差し出した。
「では、説明を始めます。まぁ何よりも一回やってみましょう。説明はやりながらの方が覚えます故。」
「あ、ああ、始めてくれ。」
セバスチャンの説明は分かり易かった。
時には飛躍を、時には冗談を交え、ルールを教えていく。
1時間程で、レクチャーは終わり、実戦に移る。
最初はセバスチャンの作ったデックで、その後はジョルジュが自分でデックを作る。
2時間程で何回かのデュエルが終わったときには二人ともすっかり息が上がっていた。
7回ほど戦った後、初めてジョルジュがセバスチャンから勝利をもぎ取った。
「やったぞセバスチャン!」
「完敗に御座います、たった2時間でこのセバスチャンにお勝ちになるとは、末恐ろしゅう御座います。」
?
その時、ジョルジュはカードの詰まった箱からは少し距離を置いたところにあるファイルに気がついた。
ジョルジュは何気なく近づき、ファイルを手に取る。
そしてそっと開こうとしたとき・・・
「おぼっちゃま!!何をしているのです!!!」
セバスチャンが叫び声をあげた。
「そのファイルから手を離しなさい!!」
その拍子に、ジョルジュの手からファイルが落ちる。
「あっ・・・」
一瞬だった。
ファイルは地面に落ち、そして禁断の表紙が開く。
そこには、世にも恐ろしい光景が広がっていた。
「レ、レミングス・・・」
ジョルジュは思わずつぶやく。
そう、その1000枚は入ろうかというファイルはすべて『レミングの大群』で埋まっていた。
「見てしまいましたね・・・」
セバスチャンが呟いた・・・
第8回 完

