


セバスチャン Ring!Ring!Ring!
「見てしまいましたね。」
セバスチャンは呟いた。
そう、セバスチャンの目の前には一冊のファイルがあった。
禁断のファイルが。
それを、よりによってジョルジュに見られてしまった。
(不注意だった。完全に、このセバスチャンのミスだ。)
「セ、セバスチャン。このレミングスは一体・・・」
ジョルジュは明らかに動揺していた。
目がキョロキョロと落ち着かない、救いを求めるような目だ。
(無理もない。)
セバスチャン達の前にあるファイルにはレミングの大群が、文字通り大挙していたのだ。
ファイルはすべてレミングの大群で埋まっている、1000枚は在りそうな量だ。
「仕方がない・・・」
セバスチャンは独白するとジョルジュに向き直った。
「おぼっちゃま、これから言うことを良く聞くのです。」
「な、なんだセバスチャン。」
セバスチャンのいつにない厳しい顔を目の当たりにしたジョルジュは、僕は何かとんでもないことをしたのだ、という自覚をした。
「このファイルには呪いが掛けられているのです。」
「の、呪い?」
突然の言葉にジョルジュは聞き返すことしかできない。
「1枚目のページをご覧なさい。」
「・・・あっこれは!」
確かに、カードはレミングの大群だった。
しかしそのテキストは普通のレミングの大群とは違っていた。
1枚目にはこうあった。
『仕舞まで見よ』
2枚目の所は空白だった。
そして3枚目はこうだ。
『レミングに喰われるぞ』
2枚目の所は、『さもなくば』と言うような言葉が入っていたのだろう。
「!!これは・・・」
「最後まで見るのです、おぼっちゃま。」
「あ、ああ。」
4枚目
『このファイルを見た者は。』
5枚目
『一週間後のこの時間に死ぬ。』
6枚目
『死にたくなければ以下のようにせよ。』
7枚目
『一週間以内にレミングの大群を。』
!!
その後の2枚は真っ黒に塗られていてテキストの部分が読めなかった。
ジョルジュはあわてて次のページをめくる。
しかしそれ以降は普通のレミングの大群が在るだけだった。
「セバスチャンこれは!!」
「誰かの悪戯ではありません。」
「では、僕は・・・」
「そうです、一週間後に死が訪れるのです。」
ジョルジュはここに来て思い至った。
「お、お前はどうなんだセバスチャン!!」
「私は今日でちょうど一週間目になります。」
「それじゃあ・・・」
「このセバスチャン、ファイルと共に滅び去ろうと思っていましたが、それは叶わぬようになって仕舞いました。」
「セバスチャン!この8枚目と9枚目は。」
「・・・誰かが戯れに塗ったのでしょう。冗談だと思って。」
「しかし、冗談ではなかった?」
「そうです。」
「このセバスチャンもいろいろと試してみましたが、どれも違うようで御座いまして。」
「セバスチャン・・・」
「セバスチャンに任せて下され、私のタイムリミットまであと半日はあります、それまでに解読を。」
「・・・解った、待ってるよ。」
「さあ部屋にお戻り下さい、セバスチャンにはやることが御座いますから。」
「ああ。」
夜中になった。
(RRRRRR)
突然電話が鳴った。
ジョルジュはあわてて受話器を取った。
『おぼっちゃま。解けました、早くセバスチャンの部屋に来て下され。』
「あ、ああ今行く。」
ジョルジュがたどり着いたとき、セバスチャンはもう息をしていなかった。
「セバスチャン・・・」
(解ったっていったのに・・・)
セバスチャンの葬儀が終わり数日、ちょうど今日がジョルジュの期限の一週間目になった。
ジョルジュはふと思い、セバスチャンの部屋に行った。
(そうだ、確かに『解けた』そう言った。)
ここに答えが在るはずだ。ジョルジュはそう思い部屋をくまなく探そうとした。
?
ふと気配を感じてジョルジュは机の下を見る。
そこには一冊の辞書があった。
ジョルジュはそれを開いた。
何の苦もなくそのページが開く。
そして、一つの単語がジョルジュの目に飛び込んできた。
増殖 増殖 増殖 増殖
「うおおおおおおお!!」
ジョルジュは叫んだ。
答えが突然解った。
(今から間に合うのか?いや、間に合わせる。)
セバスチャンが残してくれたこの記憶、無駄にはしない。
そうだ『レミングの大群』を50枚集めファイルに加えて次の人間に渡す。
それだけだ。
そうすれば!!
第10回 完