


死に至る病
あれは2年前だった。
・・・いや半年前だったかも知れない。(僕には過去は全て同一のカテゴリーで括られており、いつなのかはハッキリとは解らない)
とにかく過去だ、家の近所に大学生(当時)が住んでいた。
その大学生の名は名誉のためここでは伏せておく。
その男(仮に『K吾』としておこう)はいつものようにゲームに填っていた。
一日中だ。
学校に行ってる所は見たことが無い。(まあ僕が学校にいる間のことは知らないけれども)
僕はいつも放課後はK吾の部屋に入り浸っていた。
「セブンは3枚入れていいんだっけ?」
いつものようにK吾は僕に質問を浴びせてくる。
しかし今日のはいつもとは少し違っていた。
(モンコレ!?)
そう、K吾はあろう事かモンコレに手を出していたのだ!!
マジックだけでも手一杯だったのに・・・
それにK吾には筐体と言う甘い誘惑に耐えられるだけの精神力がなかった。(部屋はアーケードさながらである)
僕は平静を装いつつ解答した。
「K吾さん、僕が答えられるのはTRPGとそれからマジックまでですよ。」
今だから白状するが、僕はその頃ギャザル(マジックプレイヤー)でもあったのだ。
しかしK吾は何処吹く風だ。
「だからセブンは・・・」
しょうがないので答える。
「いいですよ入れても。『一枚制限』とはまだ発表されていませんからね。」
「ふーん、じゃあそのうちエラッタが?」
「そうでしょう、出ますよ必ず。」
・・・変だ、K吾の目が何となく虚ろだ。
しかしあまり気にならなかった。
何故だ?
キニナッテイルノニ・・・
「なぁ静寂。」
K吾がまた質問した。
「何ですかK吾さん?」
「そう言えば人間には真の名は無いんだっけ?」
・・・人の話を聞いていなかったのか。
「K吾さん、何度も言うようですが僕に答えられるのは・・・」
「だから無いんだろ?」
聞いてない・・・
「いえ、ありますよ。ただ知り得ないだけです。」
「じゃあ、真の名さえ解れば誰でも呼べるのか?」
「喚べますよ。」
「デルピエロとかも?」
・・・やはり時間の感覚が混ざっているらしい、合っていない。
しかし記憶は再生され続けている。
「喚べますよ。」
K吾は納得したようだ。
「ありがとう、助かったよ。」
助かった??
誰が人間を召喚できる事を知って『助かった』などと言うだろうか。
・・・ああ、そうかモンコレで同人を書くつもりか、だから・・・必要なんだ・・・きっと。
そう、K吾の本棚には一目でソレと解る本がいくつも並んでいた。
その時はそれで終わった・・・と思っていた。
今思えば、この時にもう惨劇の芽は出ていたのだ。
そして次の日にK吾の部屋に行ったときに彼の異常は限界に達していたのだ。
「よう静寂、もうチョイだ。」
何がもうチョイなのか・・・知りたいような知りたくないようなそんな感覚が背中を駆け上がる。
しかし聞いてしまった・・・好奇心には勝てない。
「ああ、もうチョイで解る感じがするんだ、もうココまで出かかっているんだ。」
そういってK吾はのどを自分の人差し指で指した。
英単語を思い出せない時のようだ。
しかし返答は想像を超えていた。
「もうちょっとで、ウェンディの真の名が解りそうなんだ。」
!!今なんと言った??
「もうちょっとで喚べるぞ・・・お前にも見せてやるからな静寂。」
何を言っているのか理解するのに時間がかかった。
いや理解したくなかったのかも知れない。
何も考えられない。
その時だ!!
「解った!!」
そう叫ぶとK吾は訳の分からない単語を羅列し始めた、そして・・・
「来た!!その扉を開ければいるはずだ、開けろ静寂!!!」
僕は堪えきれず玄関のドアを開いた。
そこには!!
警察が乗り込んできたのはその時だった。
その時のことはあまり詳しく覚えていないが、麻薬取り締まり何とかと聞こえたような気がする。
K吾はLSIだかLSDだかを隠し持っていたらしかった。
K吾はヤク中になりかけていたらしい、今は更正施設に送り込まれているはずだ。
僕は朦朧としていた記憶しかないが、ちゃんとした対応をとっていたらしい。
取り調べを受けてから、親に引き取られた。
・・・あれは幻覚だったのか。
今となっては調べる方法はない。
しかし見たのだ、僕も。
ウェンディを!!
召喚されてまた還っていったんじゃないのか・・・そんなことを夢想する。
いつの話だったか・・・
そう言えば今日は・・・
ふと振り返るとそこには・・・
「よう静寂、久しぶり。」
ウェンディを連れた・・・
第20回 完