P THE MEN WHO HAVE ENDED
P終わっている男達
P第54回
恋愛の才能



 「嘘だったのね・・・」

 ・・・見られた!?

 俺は押入れの奥に放り込んであった段ボールを出していたのだ。

 誰にも見つからないはずだった。

 細心の注意を払ったはずだった。

 しかし誘惑には勝てなかった・・・

 「カードはもう辞めるって言ったじゃない。」

 彼女は俺にきつい視線を寄こす。

 「い、いや・・・そう、や、めたんだ。」

 俺はあわててロクな言い訳さえ出てこない。

 「じゃあそれは何?」

 そう、約束では俺はもうめたことになっていた。

 しかし、在る。

 ここには、カードの山が。

 「こ、これは・・・そう、捨てるんだよ。今からね。」

 嘘だった。

 捨てる気など無い。

 「嘘でしょう?どうせ捨てる気なんか無いくせに。」

 バレている・・・

 「だ、だから。捨てる訳じゃなくて・・・そう、友だちにあげるんだ。」

 「へー誰に?」

 彼女はしつこく食い下がってくる。

 「椎名だよ。ほらあいつオタクだから、前から欲しがってたんだ。」

 俺はとっさにある友人の名を出した。

 しかしこれはいい考えかも知れない。

 椎名は大学の友人だ。

 1年程前のちょっとしたトラブルで休学していたが、最近また大学に顔を出した。

 椎名ならば文句を言わず預かってくれるだろう。

 当然それなりの見返りは用意するが。

 もったいないが聖エルドの神官戦士を渡すしかないかも知れない。

 まぁ後で交渉するとしよう。

 彼女はため息を一つついた。

 「わかったわよ、明日まで待ってあげるから処分してきなさい。」

 助かった・・・机の中にはまだデックがある。

 これさえあれば暫くは保つ。

 そんな考えも彼女はお見通しのようだった。

 俺の視線がチラチラとそっちに向いているのが判ったらしい。

 机の引き出しを開ける。

 トランプのフリをしていたそれを取り出して言った。

 「このデッキも一緒にね。」

 !!

 デッキ!!

 今、確かに『デッキ』と言った。

 俺は当然、普段から『デック』と言っている。

 デッキ・・・そんな単語が彼女の口から・・・

 彼女は自分の失言にまだ気づいてない。

 これはチャンスだ。

 いや、破滅への罠かも知れないが。

 しかし、俺はあえて引っかかることにした。

 これを言わなければ前に進まない。

 「デッキ?君はまさかマジックを・・・」


第54回 完
P第55回

P1UPP TOP