P THE MEN WHO HAVE ENDED
P終わっている男達
P第55回
むし



 俺は頭の中に虫を飼っている。

 気づいたのは随分前だ。

 ガサゴソと言う音が頭から響いてきたのだ。

 最初はただの耳鳴りだと思っていた。

 しかし『それ』は日増しに大きくなっていった。

 そして鏡の中に見た。

 ムシだ・・・

 そう、俺はムシを飼っているのだ。

 最初は恐れたりもしたが、それも一週間も続くと慣れた。

 人の適応力は凄いと思った。

 いや、人の妄想力かもしれない。

 今となってはどうでもいいことだ。

 「アンタの頭の中にムシがいるぜ。」

 いきなりそう言ってきた男がいた。

 しかし・・・

 俺には見えた。

 その男の頭にもムシがいた。

 この男は鏡を見てないのだろうか?

 見ればすぐわかるはずなのに・・・

 それともこれこそが俺の能力なのか。

 「早く取ってやらないと・・・」

 男は続けた。

 早く取らないとどうなるのだ?

 急に不安になった。

 ハヤクシナイト・・・

 気づくと、男はいつの間にかいなくなっていた。

 そして二度と出会うことはなかった。

 『早く取ってやらないと』

 男のセリフが気になった。

 早く取らないと・・・大変なことになる。


 俺はカエルを一匹買ってきた。

 そう、ムシを退治するのだ。

 家に帰りカエルを虫かごからだした。

 カエルは俺の方を向き、長い舌を俺に向かって延ばした。

 フッと、何かが横切ったような気がした。

 気が付くとムシの足音は聞こえなくなっていた。

 ああ、助かった・・・


 その日以来、カエルは毎日生まれ続けるムシを長い舌で器用に喰っている。


第55回 完
P第56回

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