


むし
俺は頭の中に虫を飼っている。
気づいたのは随分前だ。
ガサゴソと言う音が頭から響いてきたのだ。
最初はただの耳鳴りだと思っていた。
しかし『それ』は日増しに大きくなっていった。
そして鏡の中に見た。
ムシだ・・・
そう、俺はムシを飼っているのだ。
最初は恐れたりもしたが、それも一週間も続くと慣れた。
人の適応力は凄いと思った。
いや、人の妄想力かもしれない。
今となってはどうでもいいことだ。
「アンタの頭の中にムシがいるぜ。」
いきなりそう言ってきた男がいた。
しかし・・・
俺には見えた。
その男の頭にもムシがいた。
この男は鏡を見てないのだろうか?
見ればすぐわかるはずなのに・・・
それともこれこそが俺の能力なのか。
「早く取ってやらないと・・・」
男は続けた。
早く取らないとどうなるのだ?
急に不安になった。
ハヤクシナイト・・・
気づくと、男はいつの間にかいなくなっていた。
そして二度と出会うことはなかった。
『早く取ってやらないと』
男のセリフが気になった。
早く取らないと・・・大変なことになる。
俺はカエルを一匹買ってきた。
そう、ムシを退治するのだ。
家に帰りカエルを虫かごからだした。
カエルは俺の方を向き、長い舌を俺に向かって延ばした。
フッと、何かが横切ったような気がした。
気が付くとムシの足音は聞こえなくなっていた。
ああ、助かった・・・