


絶望の城
「子供ができたの」
!!
いや、ビビることはなかった・・・僕たちは結婚したのだから。
「俺の子かい?、おめでとう・・・いや、ありがとうと言うべきかな」
内心の動揺を悟られないように、ちょっとおどけてみる。
「違うわ」
!!
ああ俺は・・・俺は・・・なにが・・・どうしたら・・・
しかし彼女はあっさりと続けた。
「『私たち』の子よ」
心臓がまだドクンドクンいっていた。
めぐみ、君といると退屈しないよ本当に
俺の思考をよそにめぐみは話を続けていた。
「・・・なの、だから私はカードで身を持ち崩すのは嫌なのよね、さあ、あなた出して」
!!
カード
・・・在りすぎて見当がつかない・・・が
「何のことを言っているのかわか・・・」
めぐみが遮る
「あなた、ほんとにそんなことが私に通用すると思ってるの?」
・・・この目は・・・
このめぐみの目は・・・
俺がたった一度だけ浮気をして、それがばれたときの目だ・・・
目だけが笑っていない。
ヤハいのか・・・
そんなに俺達の関係が危機に陥っていたなんて気がつかなかった。
幸せだと思っていたのは俺だけだったのか?
しかたない・・・でも、どの『カード』なのだろうか?
「まさか、ごまかそうなんて思って無いわよねぇぇぇ」
地響きがしそうだ。
そうだ、生活のためというのならこれだろう・・・
俺は郵便局のカードを出した
ああ・・・今この瞬間、俺の5年に及ぶJRA貯金も終わりを迎えたのだった・・・
・・・
めぐみはしかし、キャッシュカードを見ても怪訝な顔をしただけだった。
しまった・・・これじゃなかったのか・・・
俺は慌てて銀行のカードを出した。
ああ、俺は自分の給料もおろせないのか・・・
瞬間、めぐみの手が翻る、そして2アクションでそのカードが胸ポケットにしまわれた。
めぐみはマジックをやっているのだ、このくらいは朝飯前と言ったところか。
念のためだが手品の方だ。
しかしめぐみの視線はいっこうに衰えずに俺をとらえている。
これも違ったのか・・・
俺は・・・しょうがなくトランプを出して言った。
「もう、バカラはやってないよ・・・二年前からね」
ちょっと苦しかっただろうか・・・
「バカラ?」
・・・しまった・・・バカラはバラすべきではなかったのだ・・・
こいつは・・・ごまかすしかない。
どうする・・・・
そうだ、衝撃が必要だ。
そう判断して、大手ファイナンスのカードを出す。
50万までご融資しますというあれだ。
それも3枚。
そっと上目遣いでめぐみを見る・・・ああ、右の口元が引きつっている。
目も見開かれてきてる・・・
衝撃を与えることには成功したが、在る意味失敗したかも知れない。
も、もう止まれない、どれなんだ、一体・・・
古本屋のスタンプカード
ちょっとワケアリなビール券
はたまたタロットカード
ちょいと捻って風俗の割引券
2000度数のテレホンカード
架空会社名義のキャッシュカード
カード、かーど、Card
世の中カードがあふれてるなぁ・・・
「あ、あなた・・・」
第86回 完