


アルティメット
「みんないいか!」
会長の峰岸が言った。
何事かと、みんなが作業をやめて振り向く。
「今日はアレをやるぞ」
瞬間、全員に緊張が走る。
『アレ』だ。
この会で、その単語を出すのもはばかられるものはたった一つしかない。
アレだ。
しかし、さすがに会長をやっているだけはある。
峰岸は躊躇無く言った。
「モンコレアルティメットだ」
モンコレアルティメット〜
それはそう新しい物ではない。
モンコレでカードの能力を表すのは何か?
そう、テキストだ。
しかし版が進むにつれてそのテキストに変化が生じるのは仕方のないこと・・・
だが、古くなったテキストにはもう価値は無いのか?
否、断じて否だ。
だからこそ生まれたのが、このレギュレーションだ。
アルティメット・・・
それはカードに書かれたテキストをそのまま採用すると言うものだ。
ここではエラッタ集など必要ない。
テキストが命・・・
カードゲームの原点に返るこのレギュレーションこそ、まさにアルティメットの名にふさわしい。
「情報の格差を無くすために今日は俺はジャッジに専念する、総当たりでデックは対戦ごとに変更可能だ」
峰岸が宣言する、開始の合図だ。
一戦目だ・・・弱体化したユニコーンが寂しい聖デック・・・
1のカードなど使うものではないという事か・・・
!!
そんな時、隣の机からつぶやきが聞こえた・・・
「ベルダンディが1枚、ベルダンディが2枚、ベルダンディが3枚・・・ふふふ、手札が18枚・・・ふふふ」
逆の机も!!
セブン、フォーチュン、セブン、フォーチュン・・・
なんだか見てはならない物を見た気分だ。
いずれこれらのデックとも戦うのか・・・
いや、他なんてどうでもいい、自分の戦いに専念するんだ。
しかし・・・2戦目
「はっはっは先攻だ、ガーゴイル召還!!」
初版!!?
や、やられた・・・
先攻の初手に在りさえすれば勝てる・・・初版ガーゴイル。
迂闊だった。
いや、対処しようがない・・・
仕方ないんだ・・・
その時!!
隣の机の呟きも耳に入らぬ、圧倒的閃き!!
僕は慌ててバッグを漁る。
先を想像しながら震える手でカードケースを開けた。
あった、これだ。
もう手札なんか関係ない!
「・・・なんだ本陣の後ろにあるそれは」
「何かって??アレックスじゃないか、先輩っ!」
かくして、これ以降の戦いは全て先攻後攻のダイスだけで決まったという・・・
この戦いの記録は後日、何者かの手によって会誌から削除された。
第88話 完