自分がイヤにならねえか?(改)
written by 四文字



この小説は『魔術士オーフェン 無謀編』のパロディです。



「グロい翼の天使殿」

「…………」

 呼ばれて…というか正しくは呼ばれていないが、男は振り向いた。彼はあるカードへのこだわりから、デュエル仲間からそのカード名で呼ばれることもある。
 しかし……

「ぐろ?」

「はい。グロい翼の天使殿。略してグロ天殿」

 しごく真面目な面持ちで、呼びかけた男、カース(これもアダ名である)はうなずく。
 黒天は、さらに考え込む。問題点が多すぎて、すぐには考えがまとまらないが。
 まずは……

「誰がグロだ?」

「あなたです。グロ天殿」

 きっぱりと、カースの返答。そのまま続ける。

「実は風邪をひいておりまして。というわけで、鼻づまりのせいで聞き取りづらいかもしれませんが」

「とどのつまり、それでグロ天か」

「はい、グロい翼の天使殿」

「心なしかイントネーションがわざとらしいし、『黒い翼の天使』以外の単語はきちんと言えるってのは……」

「何をおっしゃっているのですか!?」

 ショックを受けたようにカースか叫ぶ。

「誤解ここに極まれりです!わたしが黒天殿のことを少しグロだの、かなりグロいだの、どぎつくグロいなどと思っているとでもいうのですか!?」

「黒天って、ちゃんと言えるじゃねえかっ!」

「まあ、それはそれとして……」

 しれっとした顔で、カースは話題を変えてきた。

「黒天殿、トレカは扱えますかな?」

「モンコレくらいなら」

 …………
 唐突に訪れた不自然な沈黙に、黒天はあたりを見回した。彼ら以外は誰もいない。 つまり黒天自身と、その眼前で猛烈に冷や汗をかき始めたカース以外には。
 カースはハンカチを取り出して、ゆっくりと顔をぬぐってから、いまだに震えている手をポンと打った。つぶやく声も震えている。

「ああ、なるほど。大型トラックで容赦なく踏みつけるわけですな」

「殺ってどうする。モンコレくらいなら、集めてるからやれるぞ」

 というより、だから『黒い翼の天使』などと呼ばれているのである。しかし、カースの頭はグラリと揺れて………

 ……そしてそのまま卒倒した。

「ちょっと待ていっ!」

 黒天は叫びながら、カースを無理やり引き起こすと、

「オレがモンコレをやるのが変だとでも言うのかコラ!」

「変……変というか……世界はもう終わりなのですね……」

「待たんかぁぁぁぁいっ!」

「ひょっとして!」

 いきなり立ち上がり、カースは拳を握った。

「もしやいずこか、性格の悪い黒い翼の天使ばかりが生まれ育つ性格悪い黒い翼の天使村とかいうそういった場所では、なにかとてつもなく口汚いスラングかなにかで殺人や暴行のことを『モンコレをやる』と言うのでは……」

「言わん」

「ではもしや、48の殺人モンコレを相手に修行した者だけが修められるという、幻の拳法、モンコレ拳のことでは!?」

「そんなものがあるなら確かに見てみたい気もするが……念のため、ごく普通の意味でモンコレが出来ると言ってるんだからな、オレは」

「またそんな恐ろしいことを」

「どっこも恐ろしくないっ!」

「まあとりあえず、いま耳に触れたかのような気がしないでもない忌まわしい事実は、わきに置いておきまして。」

「なにが忌まわしいんだ?」

「まあまあ。とりあえず黒天殿、モ……モ……いえその、なにかとにかく、なにかトレカが扱えないこともない、ということで?」

「モンコレだっちとろーが。モンスターコレクション・トレーディングカードゲーム」

「なるほど。モンスターメーカー」

「あれって……トレカか?」

 確かにカードを使った記憶はあるが……えらく懐かしい単語に首をひねる黒天に、カースは、

「では、モンスターコネクション」

 全然聞いたこともない。

「だから、モン……」

「ストップ!黒天殿!その単語を口にしてはなりません!魔王が復活したらどうするのですか」

「するかっ!……要するにお前、オレがモンコレやってることを認めたくねえんだろ」

「そんなことはございません」

カースは今までの言動とは、うって変わって真面目な顔になると、

「失礼をお詫びします。冗談が過ぎたようです。むしろ、身近にモンコレが出来る方がいらっしゃって、安心したほどなのです」

「ま……まあ、それならいいけどな」

 カースの神妙な態度にかえって戸惑ってしまう黒天。

「しかし、それは最後の手段にしていただかないと……」

「最後の手段?」

 いきなりな言葉に思わず聞き返す。一体、モンコレが何の『最後の手段』になるというのだろう?しかし、ふざけているような様子はカースにはなく、真剣な眼差しであった。

「はい」

 重々しくうなずく、カース。
 そして、覚悟を決めたように黒天に向き直り口を開いた。

「例えば、宇宙の彼方から未知の地球外生命体が侵略してきて、人類にもう残された手段がない時ならば、みなも納得してくれるのではないかと」

「オレのモンコレは最終兵器かぁぁぁぁぁっ!?」



結局、ただ単にモンコレがやりたかっただけらしい。

P1UPP TOP