Pスペルデック殺人事件
P前編



 とある学校から一人の男子生徒が転落死した。

 わざわざ「転落死」というのは自殺か他殺か解らないからだ。

 確かに突き落とされたり争ったりした痕跡はなかった。

 しかし、奇妙なものが残されていたのだ。

 ダイスと50枚のカード…モンコレのデックである。



 この事件(事故?)の担当を任された生徒会長、六門神士は四人の生徒を生徒会室に呼び出した。

 「とりあえずこれを見ていただきましょう。海野くんの本陣と手札です。あなたたちの意見を聞かせてもらいたい。」

 そういってカードを広げた。


本陣:「ポイズン・トード」「セイレーン」「ホムンクルス・レンディア」「プレイリー・ドッグの群れ」「スプライト」

手札:「ウィンド・カッター」「ポリモルフ」「タイダルウェイブ」「リザレクション」


 「なかなか、強力な布陣やな。先攻とったら三回はやられてまうわ」

 最初に口を開いたのは関西弁の大神一狼だった。

 「でも、スペルデックですから『鏡蟲』がいたら一撃ですわ。」

 天糸優子がいかにもお嬢様といった口調で意見を述べる。

 「『鏡蟲』なんて即時しちゃえば……無理か。『プレイリー・ドッグ』がいるわね。」

 一見、不良じみた格好の中庭園子が冷静に分析をする。

 「かといって普通に進軍してきたら警戒するでしょう。難しいですね。」

 最後に唯一の下級生、倉武遼がいった。

 六門はそれらの意見を聞き終えると一人の女生徒を部屋に入れた。

 「もう一つ情報があります。この女生徒が海野さんの教室から、こんな声を聞いたそうです。『本陣攻め!ダイ……と×××!』という声を。」

 「何よ?その『ダイ……』ていうのは。」中庭が質問する。

 六門に促された女生徒がたどたどしく質問に答える。

 「ユニット名のようでした。しかし壁越しなので完全には聞き取れなかったんです。

 男の声か女の声かも、はっきりしませんでした。」

 「それでは『×××』なんなのですか?」次に倉武が問い掛ける。

 「この声は、聞こえました。でも、聞いた事のないユニット名なんです。気になって図書室にあるカタログを調べましたが載ってませんでした。その後忙しくなってしまって今はちょっと思い出せないんですが…。確か四文字でした。これは間違いありません。」

 「ホンマかいな?えらく頼りない証言やな。」大神がチャチを入れた。

 しばらく黙っていた六門が何気なく呟いた。

 「あなたがたのデックは確認させていただきました。」

 その言葉に四人はギョっとしたように目を六門に向けた。

 「大神さん。あなたのは『ダイアー・ウルフ』を中心にした速攻ウルフデックだ。

 天色さん。あなたのデックは天使を全種類いれたファンデックですね。

 これにも『大地を愛でるもの』が入っています。

 中庭さんのデックは空中庭園の地形カードを駆使したもの。

 『ダイヤモンド・ビースト』が組み込まれている。

 倉武くんは大型ユニット&儀式デック。『大翼竜』があります。

 つまり!あなたがたのデックには全て『ダイ』のつくユニットが入っている。

 そして、全員のデックに『鏡蟲』が組まれているのです。」

 「んなアホなことあるかい!タダの偶然や。」大神がうめく。

 「そうですよ。それぐらいのことで疑られたら堪りませんよ。」倉武が声を震わせる。

 構わず言葉を続ける六門。

 「現場、つまり海野くんの教室にはデックが出しっぱなしになっていた。飛び降りた時、誰かと対戦していたと考えられる。他殺にしろ自殺にしろ対戦相手はその瞬間を目撃している可能性が高い。そして、死亡推定時刻にアリバイがないのは、あなたがた4人だけです。」

 「そんな…。ここにいる全員が怪しいということですの?」天糸が蒼ざめた。

 「あなたがたを選んだのには、もう一つ理由があります。それは四人とも以前に海野さんに負け……いや、惨敗して口汚なく罵られていた事だ。」

 「!…なんでそんなことまで知ってんのよ!」

 中庭が思わず叫んだ。

 「大層ひどい侮辱だったらしい。そして、雪辱戦に向かった海野さんの部屋で何かがあった。私はそう考えています。……参考までに何といわれたか聞かせてくれますか?」


CASE1:大神一狼

 「あんまり言いたないけどな……。こういわれたんや。」

『へっ一狼だから「ウルフデック」ってか?カッコイイね〜。自分で自分の事「ウルフ」とか呼んでるんじゃねーの?カッコよすぎて涙がでちゃうぜ。』

 「クソッ!思い出してもムカつくで!」


CASE2:天糸優子

『天使デックかい。便所のネズミのクソにも匹敵する素敵なデックだな。
どうせユニットに「タブリス」とか名前つけてんだろ?いや、これはカ・ヲ・ルかな?』


CASE3:中庭園子

『空中庭園の地形つかって「アタシってモンコレの達人」とか思ってんのか?
アンタは「モンコレの天才」だよ。いやいや「モンコレ・クィーン」かもな。
どうせだからパツキンにして髪立てて「スーパー・モンコレ人」になったらどうだ?』


CASE4:倉武遼

『どうだ、ボウヤ。大切なクラブユニットをことごとく殺られた気分は?ん〜聞こえんな〜。大きな声でいってみな恥ずかしがらなくて、いいんだぜ〜。』


 「……なるほど。海野くんは恨みを買うタイプっだったようですね。」

 「私……あんなにヒドイこといわれたのは初めてです。」天糸が涙声で呟く。

 「ここんとこ、連戦連勝だからって、イイ気になってたのよ!」中庭が吐き捨てる。

 「生徒会長、これで分かったでしょう!?アイツはこんな奴なんですよ!」倉武が叫ぶ。

 「しかし、これは困りましたね。」

 六門のその言葉に全員の頭上に「?マーク」が浮かんだ。

 「全員、動機は充分と。これは『参考人』から『容疑者』にレベルアップ確定ですね。」

 沈黙。

 さらに沈黙。

 まだまだ沈黙。

 もうちょっと沈黙。

 「しまっっったぁ〜〜〜!!!」

 生徒会室に四人の絶叫が響き渡った。


P中編


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