「ノジーフものがたり」ものがたり


 ものがたりのはじまり

 そもそものきっかけは、藤野在住の陶人形作家高橋安子さんの人形だ。はてなの劇にこの人形を登場させたいと考えたが、陶ではぶつかったら壊れてしまうし重い。

 ある時、和紙での製作を思いつく。人形劇では昔から和紙や張り子紙をよく使う。まず粘土で原型を作る。安子さんは粘土はもちろんお手の物。そこに石膏で型を取り、内側に和紙を糊で何重にも張り合わせ、乾かす。2つの面を張り合わせ、絵付け。こうして人形が出来上がった。

 ノジーフとは藤野に古くから住んでいたと言われる妖精たちで、地下に住み、染み込んでくる水を浄化している。地上に出るときは、花になったりきのこになったりムササビになったりして本当の姿は見せない、と言った物語になっていく。

 やがて我々プロの他に近くの学校の先生、保育園の保母さん、役場の職員、主婦、中学生、クラフト作家、陶芸家、造園設計士などの方々が次々に参加するようになっていった。


 さて稽古の成り行きは?

 今回の出演者は、13人。そこに作曲の遠藤芳晴氏を含め、3人の楽士が加わり、総勢16人がひしめく。我々にとっては大所帯だ。更に舞台美術担当の彫刻家・高橋政行氏と照明家の村上正雄氏が毎晩参加し、あーでもないこーでもないと全員参加で稽古が進んでいく。音楽家だろうが、美術家だろうが、役者だろうが関係なく、自由に物が言える雰囲気がこの上なく心地よい。

 ここには、まとめるとか、おさめるとか、決めるなどとかの発想そのものがない。際限のないイメージの広がりの中で、どんどん変化し、膨らんでいく。

 稽古は、毎日大体夜9時までなのだが、9時を過ぎても誰も帰らない。ちょっとお茶をということになり、紅茶かなんか入れると、誰かが、ウイスキーを入れると暖まるよねなどと言い出し、それがだんだん量が多くなり、やがて、お湯割り、オンザロック、ストレートとエスカレートし、いつしか、毎晩の宴会となる。全く懲りないノジーフたち!


 本番の魔力と魅力

 開演は、開場の1時間前。お店も開き、お客さんは、ゆっくりと時を過ごす。

 今年の舞台美術は、円筒形の布に突起物がポコポコと出た巨大な長芋のような不思議物体で、何カ所かに置かれる。舞台もいつもと逆、ステージの上も観客席だ。これは空間をゆがませる工夫である。舞台と客席の谷間に音楽コーナーがあり、役者・観客・楽士の3者が向かい合うように考えられている。

 開演になると、おもむろに楽士が登場し、ゆっくりと演奏が始まる。しばし、ダイジェストで、本日使われるすべての音楽が一通り演奏される。これは開演ベルのかわりでもあり、人々を異次元に誘う魔法でもある。

 この日は、それまでの作業の過程、途中を表現する。出来たところまでやると言う感覚だ。あとは、便宜上観客と名付けられた人たちから沢山のエネルギーをもらい、ともに一つの不思議空間を共有する。

 そして物語は静かに進行していった。


 




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